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 雪原の激戦


何故か突然降り積もった雪。
この世界では異例のことらしい。
銀世界の上で走り回る子供たちを見て、ハクオロは言った。

「みんなで雪合戦をしよう!」

その一言がまさかあんな悲惨な結果になるなんて、誰も思わなかったことだろう。

・ハクオロ組

ハクオロ
エルルゥ
オボロ
クロウ
カミュ
クーヤ
サクヤ

・カルラ組

カルラ
ベナウィ
ウルトリィ
ドリィ
グラァ
アルルゥ
ユズハ
トウカ

・審判

ムント

・試合内容

何でもありの真剣勝負。
気絶した者、戦線離脱した者は失格。
相手の組を全滅させたら勝利。



「それでは、試合開始です」

ビュンッ!!
試合開始の合図の直後、ハクオロの顔のすぐ横を、何かが通過した。

「お、おい…。今のは」

「もちろん、私の投げた雪玉ですわ」

カルラが新たな雪玉を握りながら言った。

「今のは反則じゃないか…?」

「これは真剣勝負ですのよ…。ふふっ。さ、私の愛を受け取ってくださいな」

と、言いながら、次々と雪玉(剛速球)を投げる。

ハクオロはそれを必死で避ける。

「ぐおっ!」

突然その後ろで鈍い音がし、断末魔があがった。

振り返ると白目をむき、泡を吹きながら倒れているオボロ。

どうやらハクオロが避けた雪玉に当たったらしい。

(こ、これは当たるわけにはいかんですよ…)

「若様ッ!!」

ドリィとグラァが慌ててオボロの元へ駆けてくる。

「ちょっと貴方たち、どこへ行くんですの?」

カルラが制するが、オボロのことで頭がいっぱいな二人にその声は届くはずもない。

「た、大変だ!若様が冷たく…。早く暖めないと!」

(いや、そんなにすぐには冷たくならんだろう…)

「というわけで僕たちは若様を介抱しなくてはならないのでこれで!」

(…オボロ、すまん。お前の台詞は一言だったな)

【オボロ・ドリィ・グラァ 失格】


一方そのころ、他の場所でも激戦は繰り広げられていた。

「こればかりは負けませんぜ、大将」

クロウが人の頭ほどあろう雪玉を勢いよく投げつける。

「力押しの戦法では、いくらやっても私を倒すことなど無理ですよ」

それを軽々と避けながらベナウィは言った。

「それは…、どうですかねぇ」

雪玉の投げる速度をどんどん速めるクロウ。
1つ投げれば次はベナウィの移動先を予測して投げる。
なかなかいい感じだ。
しかしそれでもベナウィは確実に避ける。
そして、クロウの隙を見計らって雪玉を投げつける。

「痛っ!まだまだ!」

更に激しくなる攻防戦。
ちなみに、この動きっぱなしの二人が何故雪玉を作れるかというと…。


「はい、クーヤ様。もう少し大きいのを作りましょう」
「♪〜」

ごろごろ。
ごろごろ。


「これくらいですね。次はこれより少し大きいのを作って、今のを乗せれば雪だるまの完成です」
「ゆき〜〜」

雪合戦だということを忘れ、のどかに雪だるまを作っている二人の所にクロウが駆けてくる。

「おう!これ貰うぜ」
「あっ…」

本当にあっという間に雪だるまの部品が奪われた。

「あう〜」
「クーヤ様、そんな悲しそうな顔しないでください。また作りましょう」
「ん〜♪」
「今度は取られてもいいように、いっぱい作りましょうね」

ごろごろ。
ごろごろ。
ごろごろ。
ごろごろ。

「これくらい作れば平気ですね…、って、あれ?今作ってたのは何処に…」
クーヤが涙目でクロウを指さした。
「ああ、また…。仕方ないです。今度はもっと早く作りましょう」
「ん〜♪」

以下、繰り返し。


ベナウィ側は…。

「ユズっち、もっと固く握る」
「はい」

アルルゥとユスハが、ムックルを盾に雪玉を大量生産していた。

「ヴォ〜〜」

敵の雪玉が当たる度に、ムックルが声をあげる。

「ムックルうるさい」
「きゅうん…」

不憫なムティカバだ…。

「ユズっち、これも入れる」
「これは…、石ですか?」
「ん」
「こんなの当たったら、きっと痛いでしょうね」

と、いいながらも迷うことなく石を雪で包むユズハ。

「あ、オボロやられた」
「お兄さまが?」
「ドリとグラに運ばれていった」
「まぁ…」

ユズハは、ポッと頬を紅く染めた。

「ユズっち、顔紅い?」
「い、いえ。何でもないです」
「変なの」

と、そこへベナウィがやって来る。

「すいません。これ、お借りします」

雪玉を何個か持って、ベナウィは去っていった。
その時、ムックルが大きな雪玉を喰らって叫び声をあげたが、誰も気にする者はいなかった。

「大将、ずるいっすよ。ムティカバ盾にするなんて」
「利用できるものはとことん利用するのが賢い戦い方です」

再び、二人の攻防は続く。


ベナウィたちとは別の場所で、恐るべき姉妹対決が繰り広げられていた。


「お姉様行くよ〜」
「いいですよ〜」
「えいっ!」

ひゅるるるるる…。ぽてっ。

「こちらも行きますよ〜」
「うん!」
「それっ!」

ひゅるるるるる…。ぽてっ。

「次行くよ〜」
「いつでもいいわよ〜」
「えいっ!」

ひゅるるるるる…。ぽてっ。

「では、お返しにもう一つ」
「うん!どんどん来て」
「それっ!」

ひゅるるるるる…。ぽてっ。

「お姉様ぁ〜」
「なぁに?」
「届かないね」
「そうですねぇ…」



場面は変わって、ハクオロ対カルラ。

「ぐあっ!」

カルラの雪玉をまともに喰らってその場にしゃがみ込むハクオロ。
すかさずエルルゥが薬を取り出し治療する。

「さぁ、ハクオロさん。頑張って下さい」
「ああ…。すまない」

(いい加減、拷問に近いんだがな…、これは)

よろよろと立ち上がり、再び雪玉を握りしめる。

「これでは当てても当ててもキリがありませんわ」

カルラは既に数十発は当てているものの、エルルゥの予想以上の処置の早さに手を焼いているのである。

「カルラ殿。微力ながら、助太刀いたす」

トウカが何故か刀を構えながら現れた。

「あら?貴方、あるじ様に雪玉を投げれて?」

「無論、これは真剣勝負だ」

「そう。なら手伝ってくださいな」

「それで、某は何を?」

「エルルゥを始末してくださらない?邪魔ですの」

「承知した」

そして試合は再開される。

「エルルゥ殿!このようなことはしたくはないが、真剣勝負とあっては致し方ない」

「トウカさん…」

両手に雪玉を握りしめたトウカを見て、エルルゥが不安げな表情を見せる。

「いざ!参らん!」

と、勢いよく腕を振りかぶった瞬間、トウカは信じられないものを見た。

「♪〜〜〜」

エルルゥが鼻歌を歌いながらトウカの人形を握りしめていた。

「そそそそそそそそれを何処で?」

「はい?トウカさん何ですか?」

そう言いながら人形を指先でぶんぶんと振り回す。

「あがががががががが…」

「えいっ」

ぴゅーーーーーーーーーー、キラン。

エルルゥによって投げられた人形は、遥か空の彼方に飛んでいき、星になった。

「クククク、クケーーーーーーーーーー!!」

脅威の速さでトウカはその人形を追っていった。
後に、新たな妖怪が生まれたのは言うまでもない。

(おやっさん…。もう辺境の女越えましたよ…。後、それだけ投げれるなら雪玉を投げてくれ…)

【トウカ 失格】


再びベナウィ対クロウ。


「いい加減…、やめましょうや…、大将っ!」
「あなたが…、負けを認めるなら…、やめて構いませんよっ!」
「意外と…、頑固っすねっ!」
「勝負事は…、負けたくないだけですよっ!」

あれから随分と長い間動き続けている二人は、既に体力の限界が近づいてきていた。
予想以上に防御力の高いクロウ、素早いベナウィ。
実に良い試合である。

「しかし…、大将も卑怯っすねっ!」
「何がですっ!」
「雪に石混ぜるってのは…、ちょいと大人げないんじゃないですかっ!」
「知りませんよ…、作ったのは…、私じゃないですからねっ!」

何故か会話の最後で雪玉を投げる二人をよそに、雪玉制作娘たちは…。


「クーヤ様、疲れましたね」
「す〜」
「クーヤ様?」
「す〜」

クーヤは、少し大きめの雪玉を背に、穏やかな寝息を立てている。

「か、かわいい〜〜〜」
「す〜す〜」
「ハッ、いけない。このままでは風邪をひいてしまいます」
「ん〜、さく〜」

むにゃむにゃと寝言を言うクーヤを背負い、サクヤはゆっくりと歩き出した。

「暖かいお布団で眠りましょうね。クーヤ様」
「ん〜」

【クーヤ・サクヤ 失格】


アルルゥたちはというと…。

「あの…」
「ん?」
「先程から思っていたのですが…」
「何?」
「私たちは一体何をやってるのでしょう?」

見ると、二人の周りには無数の雪玉が転がっていた。
確実に相手を狙うベナウィは、雪玉補給の回数が少ないからだ。

「需要より供給が多い」
「はい?」
「ベナが言ってた」
「よくわかりませんが、この辺にして帰りませんか?」
「わかった。ムックル」

「…ヴォ」

辛うじて声をあげるムックル。
体中雪まみれで、既に虫の息だ。

「おねーちゃん呼んでくる。ユズっち待ってて」
「はい」

しばらくしてアルルゥが戻ってくる。

「大変っ。すぐに手当てしないと…。アルルゥ、運ぶの手伝って」
「わかった」

エルルゥたちは、ムックルを引きずりながら城内へと姿を消した。

【エルルゥ・アルルゥ・ユズハ 失格】



「ちっ、玉切れかよ…」
「そこっ!」

一瞬の隙をついて、ベナウィが雪玉を投げつける。

「痛っ!また石入ってやがる」
「どうしました?クロウ。玉がなければ何も出来ないのですか?」

そう言いながらも次々と雪玉を投げる。

「そう言われましても…、ねぇ」
「ふふふっ、この勝負私の勝ちです!」
「ところで大将。俺たちゃこんな所で遊んでていいんですかい?」

ベナウィが勝ち誇った顔で大きく振りかぶった時、クロウが言った。
それを聞いたベナウィは、その格好を維持したまま表情が真剣になる。

「……」
「その格好…、お世辞にも格好いいとは言えねぇっすよ」
「ーーーーーーーーー!!」

ゴスッ!

台詞を言い終わった直後、雪玉がクロウの顔面にめり込んだ。

「クロウ…。遊んでる暇はありません。この異常現象について調査しなければ…」
「…か、勝ち逃げですかい?」
「急いで調査に戻ります」
「…わかりやした」
「私としたことが…。周りの雰囲気にのみこまれてこんな遊びを…」

ぶつぶつと呟きながらベナウィたちは去っていった。

【ベナウィ・クロウ 失格】


「ねぇねぇ、お姉様」
「なぁに?」
「雪山でも山彦っあるかなぁ?」
「たぶん、あると思いますよ」
「その場合は、雪山彦になるのかなあ?」
「さぁ?そこまでは…」
「そっか…。だったら試してみるね」
「そうね。何事も最初は自分でやらなくてはいけませんね」
「よーし!」

カミュは山に向かって大きく息を吸い込んだ。
その様子を微笑ましそうに見つめるウルトリィ。

そして…。

「やっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

(やっほぉぉぉ)
   (やっほぉぉぉ)
       (やっほぉぉぉ)


「すごい!お姉様、雪山でも山彦ってあるよ!」
「そうですね。あるのですね」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。

一瞬、雪山に某ジョ○ョ風の文字が浮かんだ様な気がした。


「お姉様、何の音かな?」
「さぁ?何かしら?」


「あら、何の音ですの?」

雪玉を投げる手を休め、カルラは音に耳を傾けた。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

ぼろぼろになりながらも、辛うじて立っているハクオロもその音を耳にする。

(む…。これは…)

「マズイッ!雪崩が来るぞ!!」

「雪崩?」

「いいから、早く逃げるんだ!」

「そんなことを仰って、不意打ちをしようとでも?」

「ち、違う!山から雪が流れ…、ごぶわっ!」

ハクオロの鳩尾にカルラの剛速球が直撃する。
そのまま躯をくの字に折って、ハクオロは力尽きた。

「やっと終わりましたわ。後は…」

カルラは周りを見渡す。

「あの法術小娘を倒すだけですわ。ウルトったら、何ちんたらやってるのかしら…」

などとぼやきながら、カミュたちのいる方へと足を進めた。



「見て、お姉様!山の頂上から雪が流れてくるよ!」
「綺麗ですね。この音はきっとその雪の音ですね」
「でも、このままだとここまで流れてこないかな?」
「危ないですね。早く中に戻りましょうか」
「うん」

【ハクオロ・カミュ・ウルトリィ 失格】



「あら?あの二人、城の方へ戻っていきますわ」

ゆっくりと城へ戻るカミュたちを遠目に見ながら、カルラは言った。

「と、言うことは私の組の勝利ですわ」

嬉しそうに手をパンと合わせる。

「さて、私もそろそろ戻って酒でも頂こうかしら。運動した後の酒は格別ですし」

そう言ってカルラはハクオロを担ぎ、城の方へと戻っていった。


勿論、この後雪崩によって城が大破したのは言うまでもない。


後日、雪の中から冷たくなったムントが掘り返された。

「流れ玉にでも当たって意識を失ったのだろう。暖めてやれ」

と、ハクオロ。

実際は、アルルゥが面白半分で石入りの雪玉を投げつけ気絶させたのだが、本人にその記憶は既にないという…。



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