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 浮浪


飛び散る血しぶき、弾け飛ぶ身体。

生暖かい返り血を全身に浴びながらも、男は剣を振るう。

ひとり、ふたり――

次々と消えていく命の灯火。

瞬く間に十数人が発する喧噪は消え、元の静けさが戻る。

あとに残ったのは、血の臭いと抜け殻。

それらを見下ろして男は言った。

――あとは貴様だけだ。

少女は何をするでもなくその場に立ちつくしていた。

目の前で起こった出来事をつまらないものを見るかのように眺めている。

――どうした、怖いか。

また男が言った。

口元がにやりと歪み、弱者を見る目で少女を見る。

――まだガキだが、それなりの値は張るだろうな。

五月蠅い…。

少女は思った。

目の前の男など怖くもなんともない。

やはりこの男も他の男と同じ。

だったら…。

男が大股で近づき乱暴に少女の腕を掴んだのと、男の身体が飛んだのはほど同時だった。

上半身と下半身が切り離され、その上半身が近くの木にぶつかり地面に落ちた。

呆気ないですわ。

再び少女は思った。

奴隷ばかりを狙った賊がいることは知っていた。

男で殺しを楽しみ、女を売りさばく。

実につまらない連中である。

けれど、それも所詮はこの程度。

このまま奴隷として生きるのも飽きましたわ。でも…。

少女は呟いた。

そして、何処か遠くを見つめるように続ける。

さて、行く当てがなくなりましたわ。これからどうしましょう。

日の光が眩しかった。

風が木々を揺らし、血の臭いを流す。

少女の足がゆっくりと動き出す。

どこを目指してるのかは誰にもわからない。

恐らくはその目的もわからないだろう。

けれど、少しだけわかることがある。

彼女はいずれ、あるべき場所に辿り着くということ。

そこが彼女の居場所だということ。

そして、かけがえのないものを手に入れるということ。



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