……初めて出会ったのは、森の中。
とても大きく地面が揺れて……
木の上にいたあの子が落ちて……
頭の中が真っ白で……
何でもいいからすがりたくて……
だから、その『声』に、応えました。
『想い』
〜エルルゥ〜
奇跡が、起こりました。
…とても助かりそうになかったあの子の傷が、
すごい早さで癒えていったんです。
…私は、もう嬉しいとか不思議だとか、
そんなことも考えられなくて…
……ただただ、呆然としていました。
消えていくアルルゥの傷に、唖然としていて…
穏やかに寝息をたてる、その子を見ていて…
……ふと気づくと、あなたが、いたんです。
体中に、ひどい怪我……
慌ててわたしは簡単な手当てをして……
…笑わないでくださいね?
そのときには、さっきした契約のことなんて、忘れていたんです。
とにかく『この人を助けなきゃ』ってだけ考えてて…
一通り手当てをしたら、村の人たちを呼びました。
……わたしじゃ運べなかったんです。
…………わたし、そんなに力、強くないです!
………………うーっ!!
…とにかくっ!
それが、あなたとの出会いでした。
……家に運んで、
おばぁちゃんに看てもらって、
布団を敷いて、
その上に寝かせて…
……そして、ようやく、思い出したんです。
あの、不思議な出来事を。
どこからか聞こえてきた、あの声を。
…それじゃあ、この人は何者なんだろう。
外れない仮面。
見たこともない耳。
……その、尻尾も、無いようでしたし…(赤)
この人は…ううん、人なんだろうかって。
……ちょっと、怖くなったんです。
でも……でも、じっとあなたの寝顔を見ていて…
…………仮面越しの、ですけど。
なんだかそんな怖い人には見えなくて……
それで、あなたが汗をかいていることに気づいて…
汗をぬぐっていて、気づいたんです。
…………あなたの、胸の音に。
とくん、とくん、って。
安心、しました。
この人も生きてるんだって…
わたしたちと同じなんだって…
もう、怖くなかったです。
怖くなくなったら……今度は嬉しくなりました。
『この人は、アルルゥを助けてくれたんだ。』
そう、思ったんです。
わたし…もう家族を失うのは…嫌でしたから…
助けてくれたあなたに、できるだけのことをしようって…
…契約なんか、関係なかったんです。
わたしはずっと、縛られてなんかなかったんです。
でも、その事を伝えようとしても、口に出すことができなくて…
あなたの事が好きなのに…それが契約のせいじゃないって言えなくて…
あなたが求めない限り…抱きしめることもできなくて……
わたしは…わたしはあなたが何者でも良かった…
そばにいれれば、それでよかったんです…
……わかりますか?
わかって、くれていますか?
ねぇ、ハクオロさん……
「……エルルゥ…」
いま、自分の腕の中に、かつて愛した人の面影を残す少女がいる。
なぜ、私がここに…懐かしいヤマユラの集落にいるのかはわからない。
封印の中で光が見えて……気がついたら、ここにいた。
あれは……
………いや、そんなことは今はいいだろう。
いまはただ、愛すべき人との、再会を喜ぼう……
「ハクオロさん……」
「…………」
エルルゥは…泣いていた。
私の胸に大粒の涙をしみこませ、泣きに泣いて…
嗚咽はいつしか昔語りに変わり…
今は穏やかに、私に身を預けている。
……そんなエルルゥに、私は黙って、髪をなでる。
「…ん…ハクオロさん……」
「エルルゥ……」
その声も…髪の匂いも…ぬくもりも…
すべてが、懐かしい……
「……………おかえりなさい…ハクオロさん…」
「…ああ……ただいま……」
睦言のような呟きとともに…
いつまでも、いつまでも…抱き合っていた…
そう、いつまでも…………
いつまでも…………
……………え〜っと…
「あ〜〜………エルルゥ。」
「……………はい?」
「……そろそろ離してくれないか?」
「…………」
「……いや、そんな目で見ないでも…ほら、もう日が傾いてきてるし」
「いやです。」
「……その、私もこうしていたいのはやまやまなのだが
…いつまでも、というわけにも……」
「いやです。」
「……ほら、アルルゥ達も帰ってくるだろうし」
「いやです。」
「……いや、しか」
「いやです。」
「…………」
「…………」
「…エ」
「いやですっ!!」
…………まいった。
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