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……………………


「剣術には、さ。
 一刀流と二刀流があって……」

「一本より二本の方が強いに決まってるじゃないか」

「違うよ。実はそうでもなくってさ……」

「……ふぅん……
 でもやっぱり、一本より二本の方がいいな」

「そうかい?」

「そうだよ!!」

「…………」

「…………」


……………………









『崖の花』
〜再会〜









そして。


数年後。

私の両親は流行り病で亡くなり。


さらに数年が経って、

私は侍大将になりました。






日に日に腐りを増していく国を見。

貧困に喘ぐ民達の悲鳴を聞き。

それでも、仮初めの平和を守ることに身を削っていたある日の事……







「…糞ッ、俺としたことがなんてドジを―――」


来たようですね。


皇宮に忍び込むとは……

それほどに民の生活は逼迫されているのでしょうか?



「…どちらへ行くつもりですか?」

「ッ!?」


「残念ですが、ここから先は行き止まりです」

「クッ・・・・」


夜の闇の中、賊と対峙する……

一人で忍び込むとは…度胸があるというより、無謀な男です。


「賊が忍び込んだとのことでしたが、
 皇城の倉に手を出すとは大胆なことを」


ですが、この国の現状を考えれば、
それがどれほどの事か…


「手荒な真似はしたくありません。
 大人しく投降してください」


とりあえずの勧告。

……聞きはしないでしょう。


「ハッ、随分と舐めてくれたものだな。
 まさか、たった一人で、この俺を
 取り押さえられるとでも思っているのか?」

「ええ。
 あなた程度でしたら私一人で十分です」


さて、貴方はどの程度の器ですか?


「何ッ!?」

「抵抗するだけ無駄です。
 貴方では私に勝てません。
 もっとも、さすがにその逃げ足には
 追いつけそうにありませんね。
 ですから捕まりたくないのなら逃げることです。
 背を向け、尾を巻いて、全力で、相応の哀れな悲鳴をあげながら」


「…………言ってくれたな
 ならば試してみるか!?」

「………………………」


……安い挑発に乗りすぎです。

…………国をひっくり返す英傑には、ほど遠いようです。



…残念ですね。



「無駄な贅肉のない均衡のとれた肉体……
 速さを重点においた戦術を得意としますか」

「なに?」


「感覚が鋭く、武人としての資質も悪くない。
 おそらく、ほとんど負けるということを
 経験していないのでしょう。
 ……自惚れ、驕り高ぶるには、この上ないですね。
 そして、その驕りは冷静な判断力を鈍らせる。
 相手との力量の差も計れないくらいに」

「弱い獣はよく吠えると言うが、
 貴様も同じようだな」


……敵を目の前にして、
ここまで言える胆力は認めましょう。


「ふふっ…その吠えるだけの獣に、
 何を尻込みしているのです?」

「―――!!」

「まさか、怖じ気づいたのですか?」

ギリッッ!


「言わせておけば!!」

「…………」

賊が構えを取る……


ほう、二刀流ですか……


「…………」

きますね……


「ハァァァァァァァッッ!!」

ひゅっ!!


予想通り!!

鉾先をあわせられる!!

「っ!クッ!!」


かわしましたかっ!

しかし!!


クンッ


ズドォォッッ!!

「ッ!カハッ!!」


「…………よい太刀筋です。
 とても素直で先が読める程の」

「………グ…」



ほう…

「あれを喰らって、まだ意識がありますか」

「……グ…ゥ…」


目が死んでいない……いい目です。


とても、純粋で。



……あの子を、思いおこさせます……


「名前を聞かせてもらえますか?」


「ひ、人に…名を尋ねるなら…
 自分から…名乗るんだな」


ふふっ。

少し評価を改めましょうか。

なかなか面白い男です。



「……そうでしたね。
 私の名は『ベナウィ』です」

「ベナウィ……
 なるほど……な、お前が……あの……」


私も有名になったものですね……


「さあ、貴方の名前を教えてもらえますか」



「………………………
 …………………オボロ」


………オボロ……?



そう………



そう、ですか。


貴方は…あの時の…


「オボロ…………そうですか」


「殺せ………」


……………………

…………いま、なんと?


「晒し者になる気はない……殺せ……」

「……………………」


…………ふざけないでください。

貴方という人はっ!!



「どうした…殺せ!」

「………………」


私は無言できびすを返しました。


「待て……何処へ行く気だ!!」

「……致命傷ではありません。
 運が良ければ逃げきることも出来るでしょう」


「な………
 何の……何のつもりだ!!
 情けをかけるか!!」

「…………………」


本当に、この男は!!


あなたには守るものがあるのでしょう!!?

あの時、妹を守りたいから、と剣術の教えをこうたのは嘘ですか!!


「何とか言え!」

「弱い獣ほど吠える……ですか。
 貴方の言う通りのようです」

「な……何だ…と?」


「私が手をかける価値もありません。
 そんなに死にたければ勝手にすることです。
 そこで地に這いつくばっていれば、
 他の者が先を争って
 その首をあげてくれることでしょう」

「待て……」



まだ…わからないのですか。貴方は……



「それで、貴方の気が済むのであれば……ですが」

「待て!!」


本当に、あの頃と変わらない。


危うすぎます。



…いつか……鍛えなおしてあげますよ。オボロ……


「それでは……いずれまた」


































フゥ、とベナウィが息をつく。


「………と、まぁこんな再会を果たしたんです。」

「また、それは奇妙な縁だったんだな……」


今も昔も、ユズハのために動いているのがオボロらしい、というか……


「兄者!兄者はいるか!!」



ん……噂をすれば、だな。

「オボロ、どうした?」


「兄者、やっぱりここか。
 白い姫さんを見なかったか?
 あの子を連れたまま姿が見えなくてな。」

「いや、見てないが……と、オボロ」

「ん?なんだ、兄者」


ちょっと、聞いてみるかな?


「お前、子供の頃の事って覚えてるか?」


「?なんだ、突然。」

「いや、なに。ベナウィと小さい頃の話になってな。
 お前にも聞いてみようか、と」


……ん。嘘は言ってない。

ベナウィも、興味なさそうな振りしてしっかり聞いてるな。


「小さい頃か……
 色んな事がありすぎて、あんまり覚えてないんだが…」

「たとえば、誰と遊んだ、とかないのか?」


「誰って……大抵ユズハの世話して、
 ドリィやグラァの話に付き合ったり…ああ!そういえば」

と、思い出した、という表情をする。


「崖から落ちたとき助けてくれた、
 やたら説教くさい奴がいたなぁ…」


「…ほう、説教くさい、ですか」


「……………」



…私は何も言わん。



「そうそう、普段遊んでるときはそうでもないのに、
 何か訊ねたりすると必要以上に説明始めてなぁ。
 あれは参ったぞ。
 実は外見子供のじじいだったんじゃないかってくらい……」

「………………………」



あ〜〜。オボロ。

私にはもう祈ることしかできんが、がんばれ。



「オボロ」

「なんだベナウィ……いきなり肩つかんで。」

「最近、稽古つけてなかったですね。
 いい機会ですから今からやりましょう。」

「は?俺は人を探し…」

「いいからいきますよ!!」

「へ?あ、お、おいっ!!」



……………………………

……………………………






「口は災いの元、か。
 大昔にそんな言葉があったかな……」



ぐはっ!!がっ!!グ…………
ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!



「………はぁ、茶がうまい……」




遠くで聞こえる断末魔を聞きながら。


なんでもない日の時間が、過ぎていく……








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