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「……なんでだ」
「なにがです」
「なんで、俺を…殺さなかった……」
こんな……こんな奴を!!
何も……何も考えちゃいなかった!!
なにも……ッ!!
「……貴方にとっては、死は誇りなのでしょう?」
「……………………………」
「だから、生かしました」
…………………
「生きて、生きて、生き恥をさらしなさい。
そして…もし」
…………………
「貴方にあの家族を想う心があるのなら……
償いなさい。貴方の命の、全てをもって」
何を……したらいい。
俺は…………何をしたらいい。
「……この国を。守ってください。
あの家族が暮らす、穏やかな日々を……」
…………まだだぜ。
まだ、この話は終わらねぇ。
『妖刀』
〜遠景〜
そして、結構時間が経ってから。
俺は『妖刀』……いや、ベナウィの口添えもあって、
あいつの下で働くことになった。
……まぁ、いろいろ言う奴らもいたけどな。
ベナウィの推薦だって事と俺の実力の前に、
とりあえず表立って何かっていうのはなかった。
それで、な。
一応これから勤めますってんでな。
“あれの”前に連れて来られたのさ。
「あら〜聖上様。今日も麗しい御髪ですこと」
「そうにゃもそうにゃも」
おい……
なんだ……
なんだ、“これ”は。
「ん〜?なんにゃも。ベナウィにゃもか」
「はい、聖上。
本日付で私の配下になりましたこの者をご紹介に……」
…………まてよ。
こいつが。
こんな奴が皇だってのか?
こいつの……
こんな奴のために、親父やお袋は………!!
こんな奴のために、あの連中の両親は………!!
よっぽど……よっぽど、
この場で斬り伏せてやろうか、と思った。
けどな……
……できなかった。
だって、そうだろう?
隣で必死に殺気を押し殺して、
澄ました顔で報告続けてる奴の姿を見ちゃあ、な……
「なんでだ?」
「……最近そういう質問ばかりですね。
主題を言わなければ伝わりませんよ。」
あの玉座の間での…ある意味拷問に耐えた後。
俺はベナウィに連れられて、
国境近くまで、これから守る土地を見に来た。
……地形を詳しく知ることが目的だったんだが、
今思えば、別の目的だったんじゃねぇかな。
「なんで、耐えた?
……いや、なんで、耐えている?
あの場で斬りかかりたかったのは、俺だけじゃねえだろ?」
「……何のことでしょうか」
「茶化すなっ!!」
「……………………………」
「あんたなら、できるだろうが!!
あの焦げ付き頭をあの場でぶった切ることが!!
……そうすりゃ、この国は潰せる。
重税で、泣く人間もいなくなる!!」
……あの家族のことを忘れたわけじゃあない。
でもな、その時にはその事しか考えられなかった。
俺がいた集落のこと…
俺のふた親の事…
いろいろ、思い出しちまってな。
けどよ…
叫んでから、気づいた。
……この漢の、悲しい目に。
「……簡単に、言ってくれますね……」
「……………………」
「……クロウ、あの村が、見えますか?」
と、国境近くにある集落を指す。
「……ああ」
「じゃあ、どんな人が住んでると思いますか?」
「あ?そんなもん―――
子供がいりゃあ、大人もいるだろうぜ。
年寄りに…男も女もいるけどよ……」
「国境の先は、見えますか?」
「おい、一体―――」
何を聞いているのか……
その言葉は、言えなかった。
目の前の漢の目が、真剣だったからだ。
「……ああ、平原が、見える。」
と、答えたら、ゆっくり首を横に振りやがった。
「……クロウ。
この先には、国があります」
「あ?」
「イーリア、アルデンテ、サンギェル、シケリペチム――――」
いくつも、いくつもの国の名を唇にのせ…
俺はそれを、黙って聞いていた。
「私が……皇を斬れば、どうなります」
「?どうって……」
「貴方が言う、国の潰れたその後は?
その後のことは、考えていますか?」
「…………………」
「……私が皇を斬れば、あの村は滅びます」
「!!」
「次の国を建てる準備もなく、皇を斬ればこの国は乱れるでしょう。
この先にあるいくつかの国が押し寄せ…
貴方の言う子供も、大人も、お年寄も、男も女も、
全てが踏みにじられる事でしょう」
「………………」
「クロウ。
あなたの言う事はわかります。
けれど……今はいけません。
今は……この国を、守ることです。」
…………次を担う皇が、育つまで。
…そんな、呟きとともに、話は終わった。
俺は…その時、
かなわねえ、と思った。
完全に、負けちまった、と思った。
目の前にいる漢は、先の、ずっと先の方まで見据えてやがった。
自分の感情を殺して、他人の暮らしを、守ろうとしてやがった。
俺は…だから。
「………わかった…いや、わかりやした」
「?……クロウ?」
「この国を、いくつもの家族を守るためなら、この命、
いくらでも使ってやってくだせえ!大将!!」
「クロウ……」
さすがに、びっくりしてたっけかな。
でもよ、大将なら、命を預けられる。
本気で、そう思ったのさ。
「……フ…フフ」
「へ…へへ…」
「「ハ…ハハハハハッ!!」」
「……さあ!!
いきますよクロウ!!」
「ういっす!!大将!!」
……………………
「…こうしてな、大将にゃあ完全に負けたまんま。
いまだに、勝てる気はしやしねえなぁ」
「……………………」
「ん、どしたい?」
「いや、いい話ではあったんだが……」
「が?」
「俺はただ、腕っ節の勝負の話をしてたはずなんだがな」
「……………」
「……………」
「ま、まぁいいじゃねえか。」
「……………
…お前、ひょっとして、今赤面してるのか?」
「お、いい加減大将の部屋にいかねぇと…」
「こら、ごまかすな!
おい、まてよ。もうちょっとからかわさせろ!おい―――」
…………
…………
ああ、そうそう。
あん時、もう一つ、思ったことがあったんだ。
やっぱり大将は『妖刀』だ、ってな。
…妖刀ってのには、名刀が多いもんさ。
そして、何かを犠牲にして輝くから、妖刀っつうんだ。
……………………
大将は…
総大将に会えて、真に名刀になった。
俺は―――
「…………俺は何かに、なれたのかねえ…………」
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