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今夜の番組チェック




「〜〜〜っ。ようやく終わった…」

と、私は伸びをする。


時刻は宵の口。
煌々と灯りの炎に照らされた書斎で、
ようやく山と積まれていた書簡を処理し終えたところだった。









『夜話』
〜誘惑〜









「…しかし毎日毎日、ちっとも仕事が減らんな……。
 ……働けど働けど、我が暮らし楽にならず」

じっと手を見る、だったか?

意味は微妙に違った気もするが、雰囲気はあっている。


…そんな大昔の言葉を思い出しつつ、なんとなく手のひらを眺めた。

…………筆の握りすぎでたこができてる。

「……真剣に文官の育成を急いだ方がよさそうだ」


「……どうぞ」

そんな事を考えていると、横から茶が差し出された。


「っ、おお、すまんな」

と、何の気なしに手に取り、すする。


ずずっ…


ぶッッっ!!


「……ぐっ!げほっ……
 …この茶は……カルラ!!」

「ええ、例のお茶ですわ」


見れば、いつの間にか、横にはカルラがいた。


……てっきりエルルゥだと思ったのが敗因か……


カルラは最近、この手のいたずらを良く仕掛けてくる。

どうも、長い事待たされた報復らしい。

……そういわれるとこちらも強く言えないが…

こう何度もやられては文句の一つも言いたくなる。


それになにより、
ただ楽しんでるだけの気もするしな。


「…………お前、またこんな……」

「あら?疲れがとれるのは本当でしてよ?
 良薬口に苦し、といいますもの。」


……苦いどころじゃないが、それはさておき。


「ひどい味だってのは認めるんだな」


「……………………」

「視線をそらすなっ!」

「…あら、自分をずっと見つめていろ、
 なんてだいたんですわね」

「違うっっ!!」

「そんなに慌てなくとも、
 夜はまだまだこれからですわ。」


……頭痛くなってきた……



「それよりも」


「?」

「それ、飲んでくださいませんの?」


と、私の手にあるものを指す。


「…………」


一度ガツンッと言った方がいいのか、これは?


この後に及んでまだこれを勧めるか。


「……あるじ様……」


う……

い、いや駄目だ。

そんな目をしてもこれを飲むのは……


「……あるじ様……」


ぐ……

…なんでこういう時だけしおらしいんだ……


「……………………」


だ、だから、その、な?


……………………………


……………………………




………ずずずずずずっ。ごくり。

「…………結構な、お手前で……」

「ありがとうございますわ、あるじ様。」



……我ながら、何と言うか……
…………弱いな。



「それで…どうですの?」


「?……なにがだ?」


カルラがすり寄ってくる。


「お茶の効果、ですわ。」


効果?
ああ、疲れがとれるとかいう。


「……とりあえず、舌がえらい状態になってる」

「もう、まじめに答えてくださいな」


いや、事実だ。


「そうは言ってもな、そんなにすぐに効くわ…け……」


なんだ…体の…芯が熱い……


「あるじ様……」


と、顔を覗き込んでくる。


カルラ?
なんだかその身体の曲線がなんとも……じゃなくてっ!


「くっ……カルラ…何を入れた……」

「別になにも」


うそつけっ!!
それなら何でこんなに…こんなに…

ぐぁ………どこぞに血が集まってきた……


「しょ、正直に言え」

「いいえ、前と材料は同じですわよ?
 ただ……」


ただ…?


「ただホッコモッコにヘラペッタのを使いましたの」


……どこかで聞いた様な?
確かあれは……随分前に……


!!まさかっ!!
あの強力無比な精力剤っ!!?


「ふふ、あの商人、良いものを持ってきますのね。」


ち、チキナローーっっ!!

なんてやつになんて物をっ!!


「……だ、だが、それだけでこんな…」


あれはただの精力剤……のはず…
今の私の状態はむしろあの時の…


「……味を調えるのに少々、紅皇バチの蜜も使いましたけれど。」

いれるなっっ!!そんなものっっ!!


「うふふ……あ・る・じ・さ・ま。」

「ま、まて…カルラ…」


今よられると何するかわからん!


いや、だから、そんな
ああっっ!!
腕に身体を絡めるなっ!
むねがっっむねがっっ!


「カ…カルラ…」


「……あるじ様が、悪いんですのよ?」

「?」

「最近、仕事仕事でちっともお相手してくださらないんですもの……」


それでか……


くぅっ!!
だ、だめだ。
そんなに顔を近づけるな…
目をつむるんじゃない……

ああ……もう…堕ちる……


「…………カルラ………」

「あるじ様…………」


二人の唇が近づいて……

そして…………


「ハクオロ様」


びっくぅぅぅぅぅっっ!!

突然呼びかけられて、私は思わず身を離した。


「ああ、こちらにおられたのですね。」

「ウルト………」


……危なかった…

もう少しで、場所もわきまえず色んな事を
してしまうところだった…


いきなり登場したウルトに驚いたせいか、
あるいは、カルラから離れたせいか、
とりあえずは薬の効果がおさまった。


……まだ体の一部分は燃えたぎっているが。


「あら、ウルト……あるじ様に何の御用ですの?」


不機嫌そうにカルラが言う。


「ええ…ここのところなかなかお時間も
 とれないようでしたので、お話でも、と探していました。」

「そうでしたの…でもあるじ様はこれから
 私の部屋にこられる事になってますのよ」


こら、勝手に決めるな。


「そういう風には、見えませんでしたが?」


…………ウルト?


「……あら、ずっと覗いてらしたんですの?」

「いいえ。偶然通りがかっただけです。
 ……なにやら“困っているよう”に見えましたので」


おい…なんでこんなに空気が冷たいんだ……?


「……偶然通りかかったにしては、間が良すぎませんこと?」

「そうですか?気のせいでしょう」


「…………」

「…………」


「フフフ…」

「ウフフ…」


「「ウフフフフフフフフフフフフフフ……」」


こ、こわい!!
目が、目が笑ってない!!


これはいかんっっ!!

ここは地獄の入り口だっ!!

た、退却せねばっっ!!


「……………………」(にこぉっ!)

「……………………」(にっこり)



………………



この間の『宴』以来、何かにつけては奇妙に微笑みあうことの
多くなった二人を背に、私は書斎を後にした…………







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