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「…………っと、ここは…」
足をとめる。
いつの間にか私は、サクヤとクーヤの寝室に来ていた。
…と、いうのは直接自分の部屋に
帰ることがためらわれたからである。
あのまま真っ直ぐ帰ると…
またあの二人がきそうな気がしたから。
……さすがに三度目は遠慮したい。
そんなわけで。
暇をつぶして歩いているうちに
ここに辿り着いたのだ。
「寄っていくか……」
ここまで来たのだから、それもいい。
ひょっとしたら寝ているかもしれないが、
クーヤの寝顔を見るのも一興だろう。
よし。
「……サクヤ、クーヤ。邪魔する…ぞ…」
「え?…………」
驚いた顔のサクヤ。
私もその場に凍りつく。
「……………………」
「……………………」
部屋の中は充分明るい。
月明かりがその場を照らす。
「は、ハクオロ…さま?」
「……………」
クーヤの姿は部屋になく、サクヤが一人でそこにいる。
サクヤの“肌”は美しく…
ああ、いや。
サクヤは体を部分的に覆う布を身につけており…
ありていに……
そう、ありていに言うならば…
つまるところようするに…………
…………着替え中だった。
「み、みないでくださいーーーーっっ!!」
「す、すまんっ!!」
『夜話』
〜夜伽〜
「……ううっ…ぐすっ」
「ああ、いや、悪かったって。
そんな泣くほど恥ずかしがらなくても、な」
「…………ううっ」
「……いや、ほら、きれいな体だったじゃないか」
「……………………」
ぼっ!!
という擬音が聞こえてきそうなほどの勢いで赤くなる。
う……………
そういう反応されると、こっちも恥ずかしくなるな。
「……………………」
「……………………」
どこか、気まずい沈黙。
「……………………」
「あ…ああ!そういえば!!」
「?」
「クーヤはどうしたんだ?」
無理やり話を変えてみた。
……あれから少し時間が経っているが、
クーヤが戻ってくる様子はない。
クーヤが戻ってきてくれれば、現状も一気に変わってくれるんだが…
「あ…クーヤ様は、アルルゥちゃんと一緒に寝られるそうです。」
「そうか…アルルゥとか」
それを聞いて微笑む。
あの二人は最近良く一緒にいる。
……いや、その言い方は適切じゃないだろう。
私が“いなかった間”に、仲良くなっていたようだ。
……あの子達が幸せそうにしていると、
つらい思いをさせた分、余計に嬉しい。
「それは、いいな」
「はい」
サクヤも同じ思いのようだ。
笑顔を見れば、わかる。
さっきまでの空気は、いつの間にか、消えていた……
「あの…ところで、ハクオロ様」
「ん?」
「ハクオロ様は、何故、今時分に…?」
「ああ……いや、用というほどでもないんだが…」
と、現状を話す。
……誤解の無いよう言っておくが、
話したのはせいぜい、寝る前に散歩をしていた、程度だ。
…間違っても、あの二人のことにふれたり、
今どんな風になっているか想像したくない
弟分の部屋でのことなど、かけらも話してはいない。
「…それで、少し話でもしようと思ってな。」
「そうですか!…じゃあ、少しお話しましょう!!」
何がそんなに嬉しいのか、
いつもの明るい様子で、サクヤが言う。
それから…
私達はしばしの間、歓談して過ごした…
「……そんなことないですよぅ」
「そうか?それにしては全身泥だらけに……」
「お、おもいださないでくださいぃぃ〜!
ひどいですよ〜はくおろさまぁ〜」
「はっはは!すまん、すまん」
などと思い出話などに花を咲かせて数刻。
……そういえば、こんなに話し込むのは初めてじゃないか?
彼女とは。
大概、クーヤがともにいるため、
二人ともそっちに気を取られがちだったが…
改めてこうしてみると、サクヤって……
「…………」
「ハクオロ様?どうしたんです?」
サクヤって、とても……
こう…
なんというか……
「ハ、ハクオロ様?
そんな、じっと見つめられるとあたし……」
すごく、その……
“イヂメたい”。
……………………
……………………
………………はっ!!
い、いかんいかんっ!!
そんな事を考えてはっ!!
「……あ、あの…ハクオロ様……あたし……」
これ以上ここにいると、
おかしな思考にとらわれそうだな。
よし、もういい時間だし、
そろそろもどることにしよう!
「サクヤ」
「は、はいっ!!」
「私は、そろそろ戻ることにするよ。」
「ハ――え?あ、あの…?」
「それじゃ、おやすみ」
「あ、はい。おやすみなさいませ……じゃなくて、あれ?」
こうして、私はサクヤの部屋を後にした。
「そ、そぉんなぁ〜〜ハクオロさまぁ……
今夜こそそのつもりだって思ったのにぃ……」
「…………」
寝室に戻り、床につく。
今夜は何かいろいろあったが…
どうにか穏やかに眠れそうだ…
……………………
……………………
………………ん?
「…………誰、だ?」
誰か、いる。
部屋の入り口から…忍び寄って……
「……………おじさま…………」
カミュ……?
………そうか、例の“あれ”か。
そういえば前回は結局、
血を飲ませることができなかったからな。
ま、そういうことなら。
「……おいで、カミュ」
「うん……」
と、私の布団にもぐりこんでくる。
……余談だが。
最近は私の部屋に来るのに、私に金縛りをかけなくなった。
ムツミを自分として受け入れていることと、
周りの皆に認められ、
金縛りをかけて逃げられないようにする必要がなくなった、
と心のどこかで理解できたからだろう。
無意識下での暗示がでなくなった、ということは
心の底から私たちを信頼しているということだ。
とても、嬉しい。
「……おじさま…………」
私の上に乗り、首筋に歯をあてがってくる。
……う、やっぱりこの時のカミュは妙に艶かしいな…
が、我慢我慢…………
私はそれを紛らわすように、
カミュの腰を抱き、頭をなでた。
「ん……ぅ」
気持ちよさそうに声をあげるカミュ。
と、その時。
「聖上!夜分に失礼いたしま……す……」
……………………
……………………トウカ?
「……カ、カミュ殿?……聖上?
…………し、失礼しましたぁっ!!」
ばたばたと慌てて出て行く。
………い、いかん!!
実は、カミュのこれは他の皆には言ってなかったりする。
いや、私の血を飲んでいることはすでにばれているのだが、
それ以上のことは何かと問題があり……
その、いろいろと問題あるだろう、“関係持ってる”なんて。
……外交的にも、それ以外でも。
…特に“彼女”に知られた日には……
「…………お、追いかけないとっ!!」
口止めをしておかねばっ!!
と、カミュをどけようとして……
「どこいくの……?おじさま…」
「あ、ああ。ちょっとトウカを追いかけないと……」
そう言うと、カミュは不機嫌そうな顔になり……
「……だめ。まだ足りないの……おじさまぁ…」
いや、そういわれても、な?
ここで追いかけないと明日が命日に……
「………………だめ」
ぐっ!……身体がっ!!?
しまった!久しぶりの金縛りかっ!!
「んふふ……お・じ・さ・まぁ……」
……………………
……………………
……ああ、もういい。
たぶんもう遅かろう。
そろそろカルラあたりが
トウカから情報を聞き出している頃だ。
あいつのことだから間違いなく面白がって話すんだろうな……
「ん……あ……」
「………明日のことは、考えないことにしよう。」
そして、夜は更けていった…………
…次の日、ハクオロがかつてない怪我を負った。
……誰のしわざかはあえて言うまい。
だが、一つ。
その怪我を看病するのも“彼女”だっ!!
……死ぬなよ、ハクオロ。
おまけ。
「…カミュち〜、寝不足?」
「アルちゃん?」
「め。青いのに赤い。」
「ん、そ、そうかな」
「ん」
「だって……」
「?」
「……おじさま、寝かせてくれないんだもん♪」
……ヘラペッタの“あれ”は、よぉく効いたらしい。(笑)
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