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「焦土」









――空が、光った日。

――全てが、消えた日。


目の前の光景が信じられず、町の中を走った。


焼け焦げた、土の臭い。

焼け落ちた、建物。



ヒト……だったもの。



…………気が狂う。


……気が、狂う。



わけがわからなくて
ここがどこなのか
わかってるはずなのに
かんがえられなくて
かんがえたくなくて
わかりたくなくて――



――何を見たかも……覚えていない。




――どれくらいの時が、経っただろう。


一日後、数日後、一月も後か……一瞬後だったか。


気がつくと……目の前に人がいた。


自分を見下ろす、人がいた。


そしてその時初めて、自分が蹲っている事に気付いた。


「……今……何を思う。」


そいつが、口を開く。

全身を覆う黒い外套。

肌の色さえ、わからない。

ただ、顔を覆う布の隙間に、深い深い緑色の瞳が見えた。


「……怒りか、悲しみか、憎しみか……」

「…………」

「……絶望か」


緑色の光が言う。

言葉ではなく、その輝きで……。


――お前の心は、わかっているぞ……と。


「……死を、求むるか……。
 全てが消えた今、汝に残るものはない。」

「…………」

「……ただ逝くのも空しかろう。
 ……我が場所を用意しよう。それまでは生きよ。」

そいつが、手を差し出す。

焼け爛れたような、ぼろぼろの腕だった。

俺はそれを、ぼんやりと見つめる。


それから、時間が止まって……


……やがて俺は、熱に浮かされたようにその手をとった。


「……契約は成った。」

そいつは言う。

「なれば牙を用意しよう。
 汝が力と、するがよい。」

手を、握り返された。

引かれて、立ち上がる。

「……っぁ……」

そこでようやく、意識が覚めた。

「あんた……誰だ……?」

問うた俺に、その緑色の瞳を向けながら、そいつは名乗る。

淡々とした、口調のままで。


「……我が名はミトゥ。御使いが一人……」







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