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『ハクオロの長い一日』

「カ、ルラ……?」
 裸体のカルラ。獲物を捕らえる狩人の様な瞳。そして。
 喉元に突きつけられた刀。
 何が起こったのか、ハクオロの思考は完全に停止してしまっていた。
 多分、すべてがあの一言から始まった気がする……。

「どうしたんだ?顔が青ざめているぞ」
「聖上、御心使い感謝いたします」
 とベナウィは言っているがいつもより覇気が無い。
「どうかしたのか?」
「いえ、昨日の晩……」

 中身を要約するとこうだ。昨晩、寝酒でも貰おうと食料庫の前を通ると、中からクロウとオボロがいつも通り争っていた。とりあえず、一刻ほど注意を促し、それぞれの部屋に帰って行ったと言う。

「その後、本来の目的である酒蔵に行ったのですが。そこにまたオボロがいたのです」
「は?」
 奇妙な事だ。ベナウィに注意され部屋に戻ったのならば、酒蔵とは反対方向に歩いて行くはず。なのにオボロがいるとは……。
「見間違えじゃないのか」
「そう、でしょうか」
 実を言うとベナウィもハクオロ同様に忙しい。
 単に文官の少なさが問題なのだが、文官の仕事をこなしつつ、騎兵隊隊長という職務もある。そのため、疲れから来る幻覚だろうと思った。
「ただ、酒蔵にいるオボロに話し掛けたら、ずっとここにいたと」
「まあ、疲れているんだろう。今日は早く休め。これは命令だ」
 少し仕事がきつくなるが、倒れられる方がよっぽどの大事だ。
 ハクオロの言葉に、ベナウィは一瞬瞳をふせ、そして。
「分かりました。それではお先に失礼させていただきます」
「ああ。今日一日ゆっくり疲れを癒せ」
 ハクオロの言葉を背に受け、ベナウィは書斎を退室した。
「さて……」
 いつもは机の上に乗っている仕事も今日は無い。ベナウィが運ぶ前に休んだからだ。
「とりあえず。どうするか……」
 少し考える。そして……。
「とりあえず、エルルゥにベナウィを診てもらうか」
 そう呟くと、ハクオロも書斎を後にした。

「はい。あ、ハクオロさん。少し待ってもらえますか?」
 ハクオロの来訪を少し嬉しそうにエルルゥは迎え入れた。部屋には先客のオボロがいた。
「おお、兄者」
「どうした?」
 そう言いながら、部屋に入り腰をかける。
「薬を貰いに来たんだ。そう言う兄者はどうして?」
「いや、ベナウィが過労みたいだから。エルルゥに見てもらおうとな」
「あいつが?」
 少し信じられないと言った感じでオボロが呟く。エルルゥの方も少し驚いた感じでこちらの話に耳を傾けていた。薬材をすりつぶしながら。
「ああ、昨日オボロを二人見たとかな」
「あいつもか?」
 オボロの言葉が引っかかる。『も』というのはどういうことだろう。
「どういう事だ」
「いや、おれが会ったのはグラァだったんだ。昨日部屋を出るまでは二人一緒に寝ていたのに。外でたらグラァだけが歩いてたんだ。クロウも一緒だったから聞いてみるといいぜ」
 心の中で、3人で寝ているのかと聞きたくなる気持ちを抑えて、考える。
(こうも、目撃されているとなると、見間違えじゃないな。だとしたら一体……?)
「オボロさん、どうして部屋を出たんですか」
 調合する手を止め、エルルゥが尋ねる。
「そりゃ、腹が減ったからつまみ食いに……」
(あ、まずい)
 考えるより先に口がでるオボロの自爆。ハクオロは巻き込まれる前にソロソロと抜けだした。
「また、食料漁ってたんですか?」
「いや、ちょっと待て。話せば……」 
 遠くから聞こえるオボロの声を無視して、ハクオロは聞き込みを開始した。
 聞いてみると出て来る出て来る同じような話。ただ、共通して言えるのは、他の人間を二人見て、誰も、自分自身には会っていないという事だった。
 共通して言える時刻は夕方から夜と言うことらしい。
「なら、夜少し見回って見るか……」
 そう言う事を考えていると……。
「あら?あるじ様」
 後ろから首に手を回し、カルラが抱きついてくる。そして、背中に胸を押し当てた。
「頼むから、止めてくれ。誰かに見られると困る」
 体重をかけられ、足を止めてハクオロは呟いた。
「最近あるじ様が構って下さらないから寂しいですわ」
 ガタン!
 恐る恐る、ハクオロは後ろを振り返った。そこには予想通りの人物。
「エ、ルルゥ」
「ハクオロさん」
 呆然とエルルゥが呟く。
「エルルゥ、誤解だ」
 と言って近づこうにも、カルラがぶら下がり、動きが取りづらい。 
「ハクオロさんのばか!」
 そうのたまうと、脱兎のように駆け出していった。
「カルラ」
「はい?」
 どこか嬉しそうにカルラは答える。そんなカルラの声に、ハクオロの背中に悲壮感が漂う。
「わざとか?」
「だって、からかうと面白いんですもの」
 本当に面白そうにカルラが答える。
「それで、私の晩御飯が全て嫌いな物に変わるのは分かっているのか?」
「あるじ様が私に構ってくだされば、この様な事をせずに済みますわ」
 そう言うと、カルラがスッと離れる。
「それでは、私あるじ様のためにお茶を煎れて参りますわ」
「いえ、できれば遠慮の方向で……」
 そう言うと、カルラは寂しげで残念そうな表情を浮べて言った。
「卑しい剣奴の煎れたお茶など飲むに……」
「いえ、いただかせて頂きます」
 カルラの言葉の途中でハクオロは手を上げ、言った。その体から諦めムードが出ているのは、気のせいじゃないだろう……。
「では、煎れて参りますわ」
 嬉しそうにカルラは言うと、外へ出て行った。カルラがいなくなって、小さく、ハクオロはため息をつく。
 違う事で疲れた気がして、ハクオロは禁裏に足を向けた。夜に備え、仮眠を取るために。
 ……。ハクオロの頭の中で何かが真っ白になって行く。
「ナゼ、カルラガハダカデイルンダ?」
 あまりの出来事に声が上ずる。
 敷かれた布団。そして、布団の中には服を纏っていないカルラがいた。さっきまで普通に会話をしていたカルラが。
「あら、あるじ様」
 微笑。まるで誘っているような微笑み。
「なんでお前がここに」
「少し人肌恋しくなりましたの。ですからこうして温もりを戴きに参りましたわ」
「さっきまで一緒にいたはずだ。それに何で、裸?」
 頭がまとまらない。全ての思考が混乱していた。今会話しているカルラ、さっきまで一緒にいたカルラ。どちらも同じカルラだ。違いなど無い。
「あら、こうした方がよりあるじ様の温もりが得られますでしょう?それに……」
 妖艶な笑みを浮べ、言葉を止める。と、次の瞬間姿が消えた。
「な……?」
 一瞬の事だった。次の瞬間には自分の横に立ち、そして喉元に突きつけられた携帯用の小さな小刀。何が起こったのかハクオロには全く訳がわからない。
「カ、ルラ……?」
 裸体のカルラ。獲物を捕らえる狩人の様な瞳。そして。
 喉元に突きつけられた刀。
 何が起こったのか、ハクオロの思考は完全に停止してしまっていた。
「こちらの方が油断なさいますもの。さあ、あるじ様こちらへいらして下さいな」
 逆らえず、カルラの歩調に合わせるように歩かされる。そこに……。


「あるじ様、今お茶を……」
 カラン。ガシャン。バシャ。お盆から湯のみが落ち、割れ、そしてお茶がこぼれる。入って来たのはカルラだった。まるで何が起こったのか分からないという感じで見ている。当然だろう。
 自分の慕っているあるじに刃を向けている自分自身等と、見ることが不可能な物をみているのだから。と、そこに入ってくる影。ベナウィやオボロ、クロウにトウカ、アルルゥやカミュ、ウルトリィも集まり、心配そうに見つめている。そしてその人垣を書き分け、入って来た人間、セッカだった。
「聖上」
 ベナウィが一歩進もうとする。が、セッカがそれを制した。
「御冗談が過ぎるぞ。カスミ殿」
 鋭い氷のように鋭角で冷たい視線。その全てが、ハクオロの横にいるカルラに向けられていた。横にいるカスミと呼ばれたカルラは面白くないような顔をする。
「セッカ……」
 ハクオロが呟く。セッカにしては珍しく汗をかき、息を切らしている。
「まったく、急に主がクンネカムンまで行って皇紅蜂の巣を取って来いと言ったから何か裏があると思って急いで仕事を終わらせたら、こういう事だったとはな」
「で、仕事はこなしたの?」
 カルラとは違う高い声。睨みつけるようにセッカをみていた。
「当たり前だ」
 そう言って、セッカは蜂の巣を取り出した。
「おお〜、はちみつ」
 後ろでアルルゥが欲しがる声が聞こえる。が、セッカは構わずに正面を見据えていた。そして、諦めるようにハクオロの横にいたカルラがため息をついた。
「は〜。せっかくセッちゃんをクンネカムンまで遣ったのに失敗か」
「では、諦めついでにその刀を捨ててもらいたい物だがな」
「い・や・だって、言ったら」
 その言葉と同時にカスミの後ろに人が飛び降りてくる、鋭い目つき、細い顔立ち。チキナロだ。杖に仕込んである刀を抜き放ち、カスミに対して構えている。
「命を頂戴するまでです。ハイ」
 背後に刀を放ち構えるチキナロ。そして、前にはトゥスクル精鋭の面々。どう見ても逃げ出すのは不可能な状況。にも関わらず、嬉しそうにカスミは笑っていた。
「出来るならね」
 そう言うと、手に持っていた刀を持ち替え、後ろを見ずにチキナロ目掛けて放つ。チキナロは少し距離を取ると、仕込み刀で弾き飛ばした。
 その間に、二人いたカルラは消えていた。その代わりにいたのは、アルルゥと同じくらいの小さな女の子。短く濃い茶色の髪、物を楽しむように見つめる目。そんな可憐な少女が黒い衣装を身に纏い、双腕には刀と鞘を装備していた。
 特殊な衣装でカルラに化けていたようだ。
「まっさかセッちゃんを囮にしてチキを天井裏に向かわせるなんてね。こりゃ完全に失敗だわ」
 腕を組、楽しそうに言う。この状況でさえ彼女にとっては楽しみにしかならないようだ。
「では、こちらに来ていただけますか」
 静かなベナウィの言葉。だが、カスミは。
「い・や・だって、言ったらどうする?」
 楽しみながらカスミがいう。その言葉に前に出る人間がいた。オボロだ。
「無理にでも来て貰うぜ」
「じゃ、無理に連れてってもらいましょうか」
「後悔するなよ」
 そう言って、捕らえるようにオボロが駆け出す。が、手が届く直前、カスミの姿が消える。次の瞬間には、ハクオロ、観客、カスミと、オボロを囲む三角形になるようにカスミは動いていた。
「なんだ。せっかく遊べると思ったのに、弱いんだ」
 そのひと言で、オボロの周囲の空気が変わる。ユラリ立ち上がる陽炎。その目はカスミを捉えていた。
「殺してやる」
「よせ、オボロ」
 ハクオロの言葉も頭に血が上ったオボロには届かない。そして、さらに追い討ちをかけるようにカスミが呟いた。見下すようにオボロを見ながら。
「自分が弄ばれ吹っ飛ばされるのを『殺す』っていうんだ。へぇ〜」
 そのひと言でオボロの闘気が高まる。そして。
「殺ーッ!!」
 ひと言で駆ける。一瞬にして距離をゼロにすると、双剣でカスミを切り裂いていたはずだった。また、姿が消えていなければ……。
「じゃあね。ボク」
 いつの間にか抜き放たれた刀。そして。
「零式陽炎」
 感情も抑揚も無い平坦な物の言い方。次の瞬間に皆の目に映った物は。
 鮮血を上げながら部屋の壁に叩きつけられたオボロの姿……。
「「若様!!」」
 ドリィとグラァが駆け寄ろうとする。が、先に動いたのはカスミだった。
手を目線まで上げ、そして。
 大きく手を叩いた。
 今まで見えていたオボロの血、傷全てが消えていた。手に持っていた刀すら……。
「……」
 言葉が奪われる。誰もがあっけに取られていた。今まで見ていた全てが幻?
「どう?このカスミ様の演技力は?」
 そう言うと、カスミは嬉しそうに笑った。全てカスミの芝居だった……。

「まあ、この風の様に捉えられない回避力と天下一品の演技力の前じゃあ、ボク程度じゃ相手にもならないわね〜」
「く、まだだ」
 ドリィとグラァの肩に捕まりながらオボロは辛そうに言う。その言葉にカスミの目が笑うのを止めた。凍りつくような刺す視線でオボロを見る。
「あっそう。だったら、次は本気で常世にいかせてあげる。演技ではなくね」
 年不相応の冷酷な言い方。そして、ゆっくりと双剣に手をかける。
「これ以上すると言うなら、わしが相手になろう」
 一歩、セッカが前に出た。刀に手を掛け、いつでも斬れる体勢だ。
「ま、そこのボクがこれ以上しないなら、こっちも殺しあう必要はないけどね。どっちにしろ今日は負けたんだから大人しく引っ込んであげるわよ。その前に……」
 どこから取り出したのか、小さな気の箱と紙。そして、その中には……。
 一匹の鳩がいた。
「これ、あげるわ」
 そう言って腕でハクオロをさすと、鳩はまっすぐハクオロの元へ飛んでいった。
「これは?」
「伝書鳩。そいつさえいればいつでも何処でも取引できるわ。結構便利でしょ?」
「そうじゃなくて。何故これを」
 そう言うと、カスミはハクオロに笑みを浮かべた。雪の中から花が咲くような明るい笑みを。
「認めてあげる。このコーハの顧客としてね」
「コーハ?」
「まあ、些か不満って言えば不満だけどね。ここにいる人間って、あたしと対等に戦えるのって、封印を解いたセッカぐらいだし」
「なんだと!!」
 オボロの言葉に些か面倒くさそうに応対する。と言うより、『はいはい、負けたあんたは黙った黙った』と完全に格下にあつかわれている。
「もう少し強くなってもらわないと。人を救うなんて出来ないよ。ハクオロ皇?」
 顔は笑ったまま。なのに、その笑みとは違うなにか必死な感情がカスミの目から伺い知れた。
(ひょっとして、何か大事な物を戦争で失ったのかもしれない……)
 ハクオロが心の中でそう判断する。と、カスミはスッと、目を細めて言った。
「んじゃ、目的も果たしたし、帰らせてもらうとしますか。んじゃ、二人とも、事後処理よろしく」
 そう言うと、一目さんに窓の駆け込む。
「待て」
 急いでオボロとクロウが向かうがカスミの方が数段早い。一気に窓の縁に捕まると飛び降りた。
「な?!」
 急いでみるが下には誰もいない。怪我人だろうと死人だろうと誰もいない。
「説明していただけますか?チキナロ、セッカさん」
 ベナウィがセッカに近寄る。そしてセッカが静かに答えた。
「あれは、われら商人の同盟コーハの主。かすみ殿だ。わしや、チキナロをまとめる立場にある」



 事の起こりは5日ほど前。右腕の骨折(『友』シリーズ参照)から何とか仕事復帰を
果たした時の話。
「ま、ともかくあんたがいないと大変だったんだから」
「すまぬな。ここしばらく忙しかったとチキナロ殿から聞いている」
「ま、あたしがあんたに変わって色々しといたから事後処理よろしく〜。で、あんたの第一印象はどうだった?」
「事後処理はいいが。第一印象というのは?」
 思い切り興味深々に聞いてくるカスミに勢いでセッカが押される。
「第一印象は第一印象よ。会ったんでしょ?あの噂のハクオロ皇に」
「ん?ああ」
 噂のというのがどれを指すのかはセッカには分からなかったが、何となくカスミの聞きたい事は分かる。
「まあ、有体にいえばお人よしだな。だが、不思議と人を引き寄せる」
「ふ〜ん。チキに続いてセッちゃんも認めるか〜」
 目を細め、楽しそうに笑う。何か嫌な予感が漂う。
「何を企んでいる、主?」
「ん?何って、そこまでの人間ならちょっと興味あるかな〜って。コーハの顧客に相応しいかどうか」

「で、今回の事件が起こったと」
「まあ、そう言う事だ。で、今日になって、いきなり『クンネカムンまで行って皇紅蜂の巣を取ってきて』など仰ったからな。何かあると思って久々に本気で走らせてもらったよ」
(あの距離をどう全力を出したら半日も経たずに往復できるのですか)
 全員、頭の中にその言葉が浮かぶ。
「では、コーハと言うのは」
「簡単に言えば一部の商人たちで結成された同盟だ。値段の均一化、自分たちの商品の交換、と言うのが表向きだ」
「では、他に目的があるのですね」
 手元のおかずを一口食べ、ベナウィが尋ねる。その言葉にセッカは頷いた。
「もう一つの顔は情報屋としての側面だ。わしや、チキナロ殿、それにカスミ殿と言った面々は様々な戦場に顔を出す機会が多いのでな」
「それで、その情報を、んぐ。売っているわけか?」
「せめて、口の中を空にしてしゃべりなさい。オボロ」
 ベナウィの忠告に素直に従い、もう一度同じ事を尋ねた。セッカの方は、難しい顔をして言う。
「売ることはあまり無い。と言うよりも、この情報屋としての側面はある意味危険なのでな。絶対条件としてカスミ殿が認めた人間というのがある。今までそれをクリアーできた人間は……いなかったよ」
「で、あるじ様は認められたと」
 オボロとクロウのおかずを奪い取りながらカルラが尋ねる
「「てめぇ。それはオレのだ」」
 珍しく二人のハモリ。それを無視しつつセッカは答えた。
「だろうな。遊んでいたとは言えカスミ殿は負けてハクオロ殿を認めたのだから。それにその証拠に愛鳥のメイを渡したのだから」
「あれで遊んでいたのですか?」
 トウカの問いにセッカは頷いた。
「本気ならこの国を滅ぼすほどの事を楽しみながら平気でやる御方だよ。例えば、ベナウィ殿に化けて、皆の前でオボロ殿を殺害。自分はうまく逃げて。ベナウィ殿は捕まる。そうなればこの国の兵力は一気に落ちるからな。まあ、あの人はそう言う事をする人間ではないがな」
「その根拠は?」
「あの人は自らの信念を貫いておる。だから、そういう信念に反する事はしまいよ。ただ、もし、この国が民を苦しめるような政治を行うような事があるならば、カスミ殿は本気でこの国を潰すだろうがな」
 ベナウィの言葉に、セッカはハクオロの目を見て答えた。それは、忠告と言うよりも警告に近い。その言葉にハクオロは『肝に銘じておくよ』と真顔で答えた。
 と、セッカが不思議そうな顔をする。
「あまりこういうのを尋ねる物ではないと思うが。ハクオロ殿は具合が悪いのか?先ほどからあまり食が進んでいないように思うが……」
 はははと、ハクオロは乾いた声で返事をした。今日のメニュー。全てハクオロの嫌いな物ばかりだった。



「どうしてお認めになったんです?ハイ」
 カスミに追いついたチキナロが尋ねる。どうしてチキナロが追ったのかと言うと、チキナロはまだこれから回る所があるからだ。ある程度暇なセッカに皇宮での説明を任せ、自分はカスミを追ったという事だ。
「ん?しりたい?」
 背に荷物。両手を背中で組みながらカスミがチキナロの顔を覗き込む。
「貴方様がお認めになることなど今までありませんでしたからね〜、ハイ」
「簡単な理由さ」
 そう言うと、今まで笑顔だったカスミの表情が真剣になる。
「あたしはね。誰であろうと化ける自信がある。例え、クンネカムンのクーヤ皇であろうとね。それが『演舞姫カスミ』なんだ。けど、ハクオロ皇だけは本気で化けられないような気がする。それが、あたしがハクオロ皇を認めた理由だよ」


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