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今夜の番組チェック




トウカのよくある日常


例のハクオロとの釣りの一件があって、少し経った頃。
トウカはまた、あの場所へ釣りに来ていた。
だが今日は、その顔にこの前のような笑みは浮かんでおらず。
何処か険しささえ感じさせる.

「今日は何が何でも絶対釣らねば・・・エルルゥ様の気持ちに応える為にも・・・」

トウカは水面を見つめ、自分に言い聞かせる様にそう呟いた。
  
この前は、結局、ハクオロが帰りに街で食料を買い、事なきを得た。しかし・・・

(カルラ殿はともかく・・・アルルゥ様にあんなお顔をさせてしまうとは・・・くっ!某としたことが!)

アルルゥはエルルゥから魚にしようと思っていると聞かされていたらしい。
帰った時、少し残念そうだったのだ。

無論、其の顔を見たトウカが、その場で切腹しようとしたのは言うまでもない。

(カルラは酒の酒菜にしようと思っていたようだ)
     

「本日はこの前のような事にはしませんので!是非、某に恥を注ぐ御機会を!」

そう言ってエルルゥに土下座してきたのは、つい先程のことだ。
実はもう、彼女は今日の献立を決めていたのだが。 
断ったら割腹しかねない勢いだったため、後頭部に汗を浮かべながら、
「いいですよ」と、そう言ったのだ。(というか言うしかなかった)


「――ん。・・・ふっ!!」

また、一匹。
本日すでに12匹目である。
どれも市場に持っていけば高値で売れるような代物だ。
普通に考えればもう充分だろう。

しかし、“超”がつくぐらい生真面目な彼女としては、自分の力の及ぶ限り、釣りたいと思う気持ちがあった。
 
―――だからこそ、悲劇は起きたのかもしれない。


「―――おかしい。」

しばらくして、引きがさっぱり来なくなった。

「一箇所で釣り過ぎたか。そろそろ移動―――あれ?」

魚篭(びく)へと伸ばした手が空を切る。

「・・・はぁぁぁぁぁっ!?」

ない。魚は全て、あの中だというのに。

「な、何故・・・い、一体、どこに・・・何処に・・・」

すっかりトウカは錯乱してしまっている。



「ウキキキキィ!」

そんな声が聞こえたのは、その直後、後ろからだった。

「え・・・?」

振り向けば、遥かむこう。
キママゥが魚篭から魚を出して喰っているではないか。

「あっ、それは・・・コラ、やめろー!」
「うキッ?」

追ってきたトウカを見て、キママゥは逃げる。
近くの森へと、向かって。

(少し遠いが・・・充分追いつける!)

キママゥとトウカの速さでは、天と地の差だ。
そのまま行けば、確かにそうなる・・・はずだった。


「なにっ!?」

突如、森からキママゥの群れ(5〜6匹程)が現れ、
先程のキママゥは、持っていた魚篭を彼等に投げ渡した。

「キ〜〜ッキッキッキィ!」

魚篭はあっさり彼等の手に渡り、森へと消えて行く。

どうやらよくやっているらしい。
彼等の荷物の扱い方は、実に手慣れたものだった。

みれば、一匹だけ森の入口でトウカをあざ笑うように見ている。

「キッキッキーィ」

・・・いや、絶対バカにしている。

「〜っ!面白い!相手にするには不足ではあるが・・・!
見事其の魚篭、取り戻してくれようぞ!」

そう叫ぶと、トウカは森へと入っていった・・・



だが。森は彼等にとって、家も同然である。
木の上での争いは、トウカといえど不利だった。
加えて、殺生を嫌い、魚篭のみを奪おうとした事が、
彼等の間でソレを受け渡しするのを許してしまい、一向に取り戻せない。
トウカも焦ってきた頃・・・

敵は、攻撃に出た。

「え・・・?う、うわっ!」

彼等得意の汚物攻撃。
トウカは何とか紙一重で避ける。
だが。

「うわ、うわっ、うわぁぁっ!」

連続投射。
これには、さしものトウカも、バランスを崩してしまった。


ゴイ―ン!


もろに顔から木にぶつかり、地面に落下する。

「キーッキッキッキッ!」

木の上でキママゥが、勝ち誇った声を上げていた。


・・・ぷつん


――『何か』が切れる音がした。


「・・・キ?」

突如辺りに立ち込めてきた瘴気に、キママゥが脅えだす。


「・・・・・」


無言でトウカが立ち上がる。そして・・・


「クケ―――――――――――――――――――――ッ!」


叫ぶと、キママゥ達に向かっていった。

「キィィィィィィィィッ!?」


悲鳴を上げ、逃げまどうキママゥ達。
彼等の不運は、調子に乗りすぎたことと。
この期に及んでも、まだ魚篭から手を引かず、持って逃げてしまった事だ・・・

              * * * * * *

「ハクオロさん、ハクオロさん!大変ですよ!」
「ん?どうした?」

仕事が終わり、寝室で酒を呑んでいたハクオロの元に、エルルゥが駆けて来る。

「私、今日・・・見ちゃったんですよ。天狗!」
「・・・ハァ!?天狗ってあの・・・伝説の禍日神?」
「そうです!」
「え・・・いや、まさか冗談だろう。あれはただの伝説のはずだ」
「ホントなんですってば!さっき、森に薬草取りに行った時、見たんですよ・・・
 髪を振り乱しながら、風のごとき速さで木の上を、キママゥ達と共に駆けているのを!」

エルルゥはそう興奮気味に語った。

「あまりの速さによくは見えなかったですけど・・・あんなみのこなし、人間じゃ考えられません」
「・・・そうか・・・でもまぁ、害は及ぼしていないようだし・・・」

ハクオロは少し考え、言った。

「しばらく様子をみよう。なるべく、森へは行かないようにしてくれ。」
「ハイ・・・」

こうして、また新たなる禍日神がトゥスクルに生まれ、森はしばらく、立ち入り禁止となる。

ちなみに、二人がこの話をしている時、トウカはまだ帰っていなかった…




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