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『三匹の子豚っぽいもの』
それは、ある日のことだった。
ハクオロが政務を終え、しばらく振りにユズハの部屋を訪れた時のこと…
「…何だ。ユズハは寝ているのか?」
部屋に入るが、そこの主である彼女は、すぅすぅと、穏やかな寝息を立てていた。
「…退屈そうだな。二人共」
見れば、アルルゥとカミュも来ていたようである。
部屋の中、ゴロゴロと転がっている二人に問い掛けた。
「うん…」「ん…」
大方、ハクオロと同じく彼女の所に遊びに来たが、
彼女は眠っていたから手持ち無沙汰なのだろう。
実際、今日は酒を呑む気分でも無かったので、
ハクオロも暇であることに変わりはない。
「いつも本などの話を聞かせてあげていただろう。あれはどうしたんだ?」
「…ゆずっち寝てるし、アルちゃんだけじゃ、つまらないんだもん」
「ん」
まぁ、それはそうだろう。
こういったものは、聞いてもらう人数が多ければ多いほど、楽しい物なのだから。
「ふむ…」
軽く頷くと、ハクオロは二人の傍に腰を下ろす。
「では、私が聞こう。何か物語を話してくれないか?」
「え、いいの、おじ様?」
「構わないさ。今日はもう政務はないからな」
其の言葉を聞くなり、二人は飛び上がって喜んだ。
「わーい。じゃ、早速何か本持って来るね」
そう言って、部屋を出て行くカミュ。
「きゃっほう」
アルルゥもひどく嬉しそうだった。
(…そういえば、この頃あまり構うこともできなかったな…)
少し反省するハクオロ。
それと同時に、ここに来てよかった、とも思った。
「お待たせ〜。どんなのがいいかな?おじ様」
少しして、何冊か本を抱えたカミュが戻ってくる。
そして其の本を、床に広げた。
「…色々あるな。『豆の木』、『かぐやの姫』、『鏡の国の少女』…」
「他にもあるよ。気に入ったのが無かったら、また持って来るけど。
いいのあるかな?」
「う〜む…」
「…これ」
不意に、悩むハクオロを尻目に、アルルゥが自分のすぐ近くにあった本を、
カミュに向かって差し出す。
「これ、読んだ事ない」
「ああ、これ。…いいかな?おじ様」
「私は構わないよ。どれ、どんな話かな」
「えっと、ね…」
ハクオロの了承を受けると、カミュはぱらぱらと本をめくる。
そして、最初の頁に行き着くと、床に広げ、皆で覗き込むようにして読み始めた…
〔頁、一〕
『昔々、ある所に、「はくおろ」なる人物が住んでいました。
彼は、奥さんの「○○○○」との間にできた、
三人の子供達と共に、それなりに幸せに暮らしておりました』
「…どっかで聞いた事あるような名前だね」
「ん」
「…そうだな…って、奥さんの名前が無いのは何故だ?」
「何か、好きな人の名前を入れて下さい、って話だよ」
〔頁、二〕
『ですが、子供達が大きくなったある日、
「はくおろ」お父さんは言いました。
「お前達もそろそろ、独り立ちするべき時だ。
此処を出て、自分達の力で生きていきなさい」、と。』
「いきなりだな」
「ん〜…」
「まぁ、それまでに色々あったんじゃないかなぁ…」
〔頁、三〕
『三人の息子達は、初めは驚きましたが、何度かお父さんと話をして、
家を出ることに決めました。
「俺は必ず大物になって帰って来るからな!兄者!」
「俺もッス、大将!」
「お体には気をつけて下さい。聖上」
子供達はそれぞれ、旅立ちの時、思い思いの言葉を残して、家を後にします』
「…『お父さん』の呼び方か?コレ全部」
「…そうなんじゃ…ないかな」
〔頁、四〕
『三人はそれぞれ、途中で別々の場所に住む事を話し合います。
結果、長男である「べなうぃ」は、丘の上。
次男の「くろう」は、森の中。
末っ子の「おぼろ」は、草原に。
それぞれ住む事になりました。』
「おい…この名前…」
「偶然…だよね」
「…そういうことにしておこう」
〔頁、五〕
『「にゃぷ、にゃぷ…お腹…お腹が空いた…にゃぷ…」
丁度其の頃、気持ちの悪い鳴き声を響かせながら、オオカミのような、
血走った目をした男が草原を歩いていました。
なお、体つきの方は、全身「肉」だけでできているのではないかと思える位の者です。
「にゃぷ…お腹が空きすぎて気持ち悪いにゃぷ…
こうなったら誰でもいいにゃぷ。喰らってやるにゃぷよ…にゃぷぷ…」
とてつもなく物騒な言葉を吐きながら、男…いや、「肉」は歩きつづけます。
其の方向には、不味い事に、家を建てている最中の末っ子「おぼろ」がいたのでした。』
「…『不味い』のはどちらにとってなんだろう…」
「このまま読んでれば解るんじゃないかな…」
〔頁、六〕
『末っ子「おぼろ」はそのころ、いかにも『適当に建てた』
と言わんばかりのこしらえ方で作った家を、得意げに眺めていました。
面白がりながら建てている様が目に浮かぶような家です。
某「親っさん」が建てたような家でした。
いびつな木々を更に出鱈目に組み合わせたその木の家は、
何かあればすぐ崩れてしまうのは目に見えていました。』
「…藁の家じゃないのか?」
「え?どうして?」
「いや、何となくそんな気がしたんだが…まぁ、いい。続けてくれ」
〔頁、七〕
『そこに、先程の「肉」が辿り着きました。
そして「おぼろ」を見るなり、偉そうに「肉」は言います。
「にゃぷ。そこのお前。丁度いいにゃぷ。
この変な家、よこすにゃぷよ。食物も全部、あるだけ出すにゃぷ」
そんな言葉に当然のことながら、「おぼろ」は怒ります。
「ふざけるな!いきなり何を言い出すかと思えば…
今此処で貴様を倒して、「とぅすくる」様の仇を討ってやる!!」
何故か「おぼろ」は死んだお祖母さんの名前を出し、武器を構えました。
どうやら「肉」には何かしらの恨みがあったようです。』
「…お祖母さん?誰?」
「いや…まぁ…実際の人物とは関係ないんだろう…多分」
「…ん〜?」
〔頁、八〕
『「にゃぷぷ…おみゃーなんかに倒されはしないにゃぷ。
おみゃーの弱点はちゃんと解ってるにゃぷよ」
「何ぃ!?」
「今見せてやるにゃぷ!……ちょっと待ってるにゃぷよ」
そう言うと、「肉」は傍の草叢で、なにやらごそごそと準備し始めます。
「おぼろ」はそのまま倒してしまおうかと考えましたが…
腕には自信があったので、「肉」の行動を一応見届ける事にしました。』
「…やめとけばいいのに」
「まぁ…やってしまったら話にならんだろうからな」
「ん」
〔頁、九〕
『「待たせたにゃぷね」
そう言って姿を現した「肉」の方を見て、「おぼろ」は、
頭の中どころか、全身真っ白になってしまうほどの衝撃を受けました。
某「明日の○○○」の主人公のように、燃え尽きてしまったかのようでした。
なお、○○○は拳闘士の名前は名前でも、雪之○ではありませんので
ご注意下さい。
なお、何故驚いたかというと―――――』
「ぅげっ!!?」
「な、何、この絵!?」
「ん〜!!」
〔頁、十〕
『長く美しい髪のかつらをかぶって…それ以上の描写は作者の都合により
行いませんが、どうやら「肉」は、
「おぼろ」の大切な人に化けている…つもりのようでした。
「…どうしたにゃぷ?」
髪まで真っ白になってしまった「おぼろ」を覗き込む「肉」。
「ははぁ…わしの美しさに骨抜きになってしまったにゃぷね?
にゃぷぷ…全く、罪深いにゃぷね。美しい漢というものは」
ぶちっ
…その瞬間、どこかで何かが切れた音がします。
「……」
「にゃぷ?」
「クケ――――――――――――――――――――――――――!!」
「あべしっ!!」
何処かで聞いたような奇声を発すると、「オボロ」は思い切り「肉」を
殴り飛ばしました。
「肉」は、これまた何処かで聞いたような悲鳴を上げながら、
「おぼろ」の家に激突し、そこを破壊してゆきます。』
(この頁の前半部分を読んでいる時、何故かユズハが寝台でうなされていたりする。)
〔頁、十一〕
『「ま、まつにゃぷ…それは、他人のネタじゃないにゃぷか…にゃぷうぅぅ!?」
「ソノ罪、死スラ生温イ!!」
最早、「おぼろ」の耳には、何も届いておりませんでした。
某「神」のような台詞を吐きながら、
「肉」に、とてつもない威圧感で歩み寄って行きます。
この力の半分でも普段から出せていれば、長男にも負けないのでしょうが、
生憎それはムリなのでしょう。
「見セテミロ、貴様ノ命ノ灯ヲ!」
今度は、某「鬼」刑事のような台詞を吐くと、
「おぼろ」は野獣の如く「肉」に襲いかかりました。』
「うん。殺っちゃえ、兄様」
「うむ。許す」
「ん!」
〔頁、十二〕
『「…ふぅ…まいったな…」
「おぼろ」は溜息をつきます。
当たり前ですが、「肉」を抹殺したところで、家が直るわけではありません。
外はまだ寒い季節です。野宿などしたら、凍え死んでしまうかもしれません。
「…しょうがない。今晩だけ、「くろう」のトコにでも泊まらせてもらうか」
そう呟くと、彼は早速森へと出かけようとしました。
しかし…
「「あれ?若様。どうなさったのですか?」」
不意にかかった声に振り向けば、可愛い双子がいるではありませんか。
「あぁ、「どりぃ」に「ぐらぁ」か。いやな、家建てたはいいが、
壊れちまってな。どうしようかと思って」
「「あ…それなら、僕等の家に泊まっていきませんか?」
何故か頬を赤く染めながら、双子は言います。
ちなみに、双子は確かに可愛い子ですが、「男」であることを忘れてはいけません。
「そうか?じゃ、今晩は世話になるかな」
「「…今晩だけなんて仰らずに、ずっと居て下さってもいいんですよ」」
「ふーむ…じゃ、暫く世話になるか」
「「はい、喜んで!!」
…こうして、「おぼろ」は、双子と一緒に暮らす事になりました。
…というわけで、ある意味彼は、『喰われちゃった』わけなのかも知れません…』
「な…何があったの?この後?」
「…知らない方がいいということだろうか・・・」
「…ん〜?」
〔頁、十三〕
『一方、他の二人はどうしているかといいますと。
次男、「くろう」は、森の中。
自分の家を建てるための木を、再び切り倒しに行っていました。
何故か、先程切って運んでおいた木が、ちょっと場を離れた隙に
消えてしまったためです。
…なお、それは「おぼろ」が持って行ったことは内緒だったりします。』
「ひどいなぁ」
「だが、やりそうではあるな」
「ん」
〔頁、十四〕
『「くろう」は、なるべく持ってかれた木の事は気にしないようにと思い、
軽く鼻歌を歌いながら、森の奥へと向かいます。
『まっさかりかついだくろちゃんは〜 』
などと、何か違う作品の唄を歌ってますが、気にしないで下さい。
まぁ、しばらくはそんな調子で森の奥目指して進んでいましたが、
道の途中で竹やぶがあったので、思わず立ち止まってしまいました。
こういった状況でお姫様を見つけた例もあったそうですし。
実際、それはついこの前、「くろう」の住んでいる村の近くでのことらしいですし。
まぁ、男のサガというものでしょう。
「…竹で家作る、ってのもいいか…」
自分自身に言い聞かせるように呟くと、
「くろう」は竹やぶに入ってゆきました。』
「助平」
「やらしいなぁ…おじ様もそう思うよね?」
「え?あ、あぁ…」(汗)
〔頁、十五〕
『「くろう」はしばらく竹やぶの中を進みましたが、
途中から「竹で家を作る」ことの不合理さに気づきます。
「木より作るのは大変だし、量だってバカにならない…」と。
やはり、多少突っ走るところがあっても、
冷静さをある程度失わないのは次男らしいですね。』
「まぁ…確かに」
「でも、助平」
「…(汗)」
〔頁、十六〕
『 しかし…
「うっ、うっ、うっ…」
「…!?」
不意に聞こえてきた泣き声に、「くろう」は身を強張らせました。
…そして、少しためらった後、そちらの方へ早足で、しかし慎重に駆けてゆきます。
――辿り着いた果てに、居たもの。
泣き声の主は、何やら、草叢のなか、泣きじゃくっています。
姿はほとんど見えませんでしたが、長く黒い髪が、少し見えていました。
(女、かねぇ…もしかして捨てられたとかか?)
ここは「うばすてやま」なるあだ名がつくほど、
子供や年寄りなどを捨てていく者達が多い山です。
彼女もそうなのかもしれないと、「くろう」は不憫に思い、声をかけました。
「…おい」
口調は乱暴でしたが、脅えさせないように、出来るだけ優しい声で。
「…何があったかは解らねぇが…出てきて、俺にでも話してみねぇか?
少しは楽になるかも知れねぇぜ」
下心など全く無しに、「くろう」は語りかけます。』
「…お〜」
「優しいねぇ」
「あぁ、そうだな」
〔頁、十七〕
『ですが、いい感じの話なのはここまででした。』
「は?」
「え?」
「ん?」
〔頁、十八〕
『「にゃぷー―――――――――――っ!」
「…おぁ!?」
飛び込んできたのは、「肉」でした。
(必殺で)丸焼けにされた後、さらに、遠くへと殴り飛ばされていたのですが…
どうやら、この辺に落ちていたようです。
何故か予備に用意していたらしい、服とかつらを再びかぶっていました。
…よく生きていたものです。顔や体はズタボロでしたが。
「怖かったにゃぷ…殺されるかと思ったにゃぷよ…」
「くろう」にしがみつき、そんなコトをわめいていますが、
彼はその頃、先程の弟のように真っ白になっていたので、聞こえてませんでした。
「にゃぷ…なんでもするから、助けて欲しいにゃぷよ」
そんな事を言い出され、「くろう」はやっと我にかえります。
「な…何でもだぁ?」
「そうにゃぷ。…これからはご主人様とでも呼ばせてもらうにゃぷか」
「…………」
『ご主人様。』
それは、漢でも憧れる者が多いであろう呼ばれ方。
…だが、それは女性からのみの敬称であって…
こ ん な 奴 に 許 し て い い も の で は
断 じ て 無 い!!!!!』
「その通りだ!」
「…おじ様…そんな力説しなくても…」
「ん」
〔頁、十九〕
『「どうしたにゃぷ?…ご主人様(ぽっ)」
ぶっつん!!!
…その瞬間、「くろう」の血管が何本か切れました。
「ガー――――――――ッ!!」
「にゃぷ!?」
「 テ メ ェ ノ カ ヲ モ ミ ア キ タ ゼ!!!」
「にゃぷ――――――――――――――――!!」
何処かで聞きなれたような、それでいてとても似合っているような台詞を吐きながら、
「くろう」は「肉」に襲いかかります。
なお、台詞が片仮名なのは、それだけ怒っているから、ということで。
「最終的爆裂破!!」
なにやらいつもとは違う必殺技を出し、「肉」をぶっ飛ばしました。
ちなみに、技名はこの國の言葉にしてますが、外国語だったりします。
「肉」を青空の彼方に飛ばした後、「くろう」は力無く倒れこみました。
(なお、空に封ぜられた少女の元・ある方のHPには行ってないと思われます。)
…哀れなことに、彼もまた…ある意味大切なモノを『喰われてしまった』ようでした。
「めいど」という属性に、彼が萌えれることはもう…無いのでしょう…
あんなものをみせられてしまったのですから。
『萌え尽きたゼ…おっちゃんよ…』
そんな感じの某有名拳闘士のような格好で、「くろう」は力尽きました。』
「…「くろう」…お前のことは忘れない」
「…おじ様、死んじゃったわけじゃないよ。気絶してるだけだって」
「ん」
〔頁、二十〕
『「…にゃぷ…?ここは何処にゃぷか?」
いくばくかの時が経った後、何も見えない暗闇の中、「肉」は目を覚ましました。
実際は、「くろう」の一撃で上空に吹っ飛ばされ、
それから地面に落下した衝撃で、地面に生き埋めになってしまっているだけですが。
「…あぁ…もう駄目にゃぷ…お腹が空き過ぎて、力、出ないにゃぷよ…」
光が何処からも入らないことから、もうすでに夜になっているようです。
よって、空腹だけでなく、寒さも「肉」を襲っていました。
なお、「腹減ってるなら自分の腹の肉でも喰えよ…」というツッコミは遠慮させて下さい。
「にゃ…ぷ?」
そのとき、生を諦めかけていた「肉」は、何処からか
美味そうな匂いが漂ってくるのに気がつきます。
「にゃぷ!にゃぷ!」
必死になって上の砂、岩をかき分け、顔を出して見れば。
すぐ傍に、レンガの小屋が建っているではありませんか。
そこから漏れる、暖かそうな光と、味噌汁の香りに、
誘われるまま、「肉」は家に近づき、扉に手を掛けます。
一応、ドアを軽く叩きましたが、返事が無かったので、
「肉」はそのまま家の中に入りました。』
「うわ〜。ひどい」
「ん」
「まるで空き巣だな」
〔頁、二十一〕
『「く、食い物にゃぷ!」
家の中では、ちゃぶ台があり、そこに幾つかの菓子が乗っている皿があります。
台所には、食事の入った鍋やら釜やら、色々置いてありました。
「し、辛抱堪らん!にゃぷ――――――――――!」
叫ぶと、「肉」は、それらの料理にかぶりついて行きました。
* * * * * *
―――四半刻前(約30分)―――
「…さて、そろそろモロロが煮えますね。…どれ」
台所には、食事の支度をする長男の姿がありました。
白い割烹着を着て、料理の味見をする彼の姿は、
漢ではなく、充分女性に見えます。
萌える人もいるかもですね。』
「まぁ、確かに…」
「ん」
「というより…萌えって、何?」
[頁、二十二]
『(…まぁ、いいでしょう。そろそろ椀に盛って…)
そんないかにも主婦、的なことを考えながら、「べなうぃ」は、
ちゃぶ台の方へ目を向けます。
(おや…?)
見れば、今晩、囲炉裏に使用するための薪が出ていません。
今はともかく、寝るための暖を取れないと困ります。
食事の後は、武器の手入れ。
愛用の槍はもう終わりましたが、剣の方もやらなければいけません。
なので、食事前に軽く薪を割ってくる事にしました。
(…仕方ありませんね。まぁ、楽しみを後に取っておくのも、
たまにはいいでしょう)
初めて作った食事の味を想像しながら「べなうぃ」は、
家から少し離れた薪割り場まで行きました。
* * * * * * 』
「…哀れな…」
「可哀想…」
「ん…」
〔頁、二十三〕
『 カーン カーン カーン…
薪を割る音が、鐘の音のように響いてきます。
…そう、もしかしたらそれは、警鐘だったのかもしれません。
カーン カーン カーン…
ですが、食事に夢中になっていた「肉」は、そんなことにも気づきませんでした。
* * * * * *
「…さて。いよいよですか……ふふっ…」
どことなく嬉しそうに薪を抱え、戻ってきた「べなうぃ」は、
扉を開き…そして、硬直しました。
それは、何者かによって、食い荒らされ、空になった鍋や釜を見てのことです。
「…………………」
ガララン…
薪が、彼の手から零れ落ちます。
それは、あたかも本編終了後、薬師さんが籠を落とすであろう場面のようでした。
ただ、違ったのは、やはり先程の兄弟のように、
「べなうぃ」も真っ白になってしまっていたことです。
「…ただいま(にゃぷ)」
喰い散らかした鍋を脇に倒したまま…
帰ってきたであろう誰かさんのマネでしょうか。
「肉」は、格好つけて言います。
「……………………」
皆さん、想像して下さい。
一人暮らしを始めた貴方が、苦心して作った初めての自信作の料理を…
こんな(某「皇」風にいうなら)「糞蟲」に『喰われた』としたら。
あまつさえ、「心の名場面」になるであろう、期待の場面を汚されたとしたら…
許 せ ま す か ! ?』
「許せんわ!」
「うん!」
「ん!」
〔頁、二十四〕
『「……………………」
ですが、長男なだけあって、「べなうぃ」は、すぐにはキレたりはしませんでした。
…もっともその寸前までは、いっていましたけど。
一縷の望みを託して、ちゃぶ台を振り返ります。
彼の好物である、「あれ」だけでも残っていれば、と思ったのですが…
「…チマク、は…?」
「あぁ、あれなら真っ先にいただかせてもらったにゃぷ。
にゃぷぷ。なかなか美味だったにゃぷよ」
しーしー、と、何処からか取り出した楊枝で歯の間をほじくっている「肉」に、
とうとう「べなうぃ」の理性も限界を迎えました。
「………………………」
「…にゃぷ?」
無言で奥の部屋に引っ込む「べなうぃ」に、訝しげな視線を送る「肉」。
しかし…
ガチャッ! ガチャッ!
「にゃ、にゃぷ!?」
何やら聞こえてくる金属質な響き。
そして、それとともに小屋に瘴気が満ち始めます。
ガチャッ、ガチャン!!
その瘴気は、近くの森まで届き、そこにいたキママゥ達まで脅え出しました。』
「い、一体何が!?」
「わからんが…これは、期待が持てそうだ…」
「早く、やる」
〔頁、二十五〕
『 ギィィィィィィィッ…
重苦しい音をたて、開く扉。
そして、出てきた「べなうぃ」は…
いつもより若干ゴツイ鎧をその身にまとい、
先程研いだ愛用の槍を手にし…
…怒りを隠すためでしょうか。
それともソレを具現化したのでしょうか。
「はくおろ」お父さんの仮面も真っ青な、「般若の面」を顔に付けていました。
そして、何故か家の中だというのに、何時の間にか…
愛馬「ししぇ」にまたがっています。
「にゃ、にゃぷー――――――――――!!!」
「……………………………」
慌てて、後ずさりしながら逃げようとした「肉」に、
「べなうぃ」は、無言でちゃぶ台返しを喰らわせました。
「にゃぶっ!」
そして、動きの止まった「肉」に、「ししぇ」の踏みつけ攻撃の後、
連打、連打、連打、連打、連打。
そして、いつのまにか上空に満ちていた雷雲から電撃を呼び込み、
「必殺」に繋げます。
ですが、何故か雷は一度で鳴り止むことなく…
その晩、ずっと鳴りっぱなしでした。
数十、数百回に渡るその雷に、近隣の人々や獣たちは、
「神の怒りだ」と、恐れおののいていたそうです。』
「殺るのは別に構わんが…どうやって「気力」溜めたんだ?」
「怒り」
「二人共…「気力」って、ナニ!?」
〔頁、二十六〕
『あくる日の朝、「べなうぃ」は街に下り、知り合いの商人を尋ねました。
ガラの悪いその男は、彼を見ても、あまり良い顔はしません。
「…「ぬわんぎ」。買い取っていただきたいものがあるのですが」
そう語りかけると、彼は面倒くさげに振り返りました。
ちなみに、彼は本編中、街の商人に化けているとの噂がありますが…
これとは関係ないので、あしからず。
「…なんだよ?変なモンだったら断るぜ」
「…「これ」です」
そういって、簀巻きにした「これ」を「ぬわんぎ」に突き出す「べなうぃ」。
「……「豚」かよ。しかも、質が悪ィな……けど、どっかで見たことあるような…?」
「値は問いません。買い取ってくれさえすればよいのです」
「…しゃーねぇな…ホラよ。こんぐらいな」
そう言って、「ぬわんぎ」は「べなうぃ」に小銭を幾つか渡し、商談は成立します。
…結局「肉」は、意識の無いまま売られ、街には平和が戻ったのでした。
めでたし めでたし。』
「………」
「………」
「………」
「凄い話だね…」
「ん…」
「…………」
ハクオロは無言で、読んでいたその本を裏返す。
題名を確認すれば、そこには…
『三匹【と】豚』
と、書かれていたのだった…
(完)
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