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今夜の番組チェック




サクヤの大冒険・1− 起床 −



− サクヤ、サクヤはずーっとクーヤ様の為にお世話をしてさしあげるのだぞ。
− はい。サクヤはクーヤ様が大好きだから、なんでもしてあげられるよ。 
− そうか、いい子だなサクヤは・・・・(なでりなでり。)
− (ぽーーーーー・・・・・)
       ・
       ・
       ・

「・・・・ヤ・・・・・・じゃ。」
「・・・・・・・・?」
「・・サ・・・クヤ・・・・るのじゃ。」
「・・・?(今、幸せの真っ最中だからジャマしないで・・・・・)」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

ガバッ!! どたん!

その瞬間、天と地がひっくり返った。

はっ!あ・・・・あれ?・・・ここは・・・、あたしの部屋?

「やっと起きたかサクヤ。さっきから何回も呼んでいたのだが、なかなか起きないのでなー。」

振り返るとクーヤ様が立っていた。な、なんでクーヤ様があたしの部屋に?しかも外はまだ暗いみたい。見ると、まだ眠ってから1時間し
かたっていなかった。あっあれ?なんか幸せな夢を見ていたような気がするのに、思い出せない。あたたかい気持ちだけがなんとなく残っ
ている気がする。・・・んーー・・・やっばりだめ。思い出せない。

「どうした、まだ寝ぼけているのか? さっさと支度をするがよい。」

えっ?えっ?? クーヤ様がなにを言っているのかわからない。

まず落ちついて、落ち着いて・・・・・・よく見ると、あたしの布団がひっくり返っていて、あたしはそこから投げ出された格好になって
いた。クーヤ様は・・・、ひょっとして・・・・いや、ひょっとしなくても・・・、あたしごと布団をひっくり返した以外、考えようがない。

「・・・・クーヤ様ー、ひどいですー。」

あたしは、本当に泣きたくなった。せっかく幸せな夢を見ていたのに・・・、ずっとそこにいたかったはずなのに・・・・。あっ、なんか
本当に涙が出てきた。

「すまぬ、サクヤ、余が悪かった。ゆるせ。」

なでりなでり。
(ぽーーー)
・・・・・少し気持ちが落ち着いてきた。なんか、夢の中でもこんなことがあったような気がする。見るとクーヤ様はとてもやさしいお顔
をしている。とても安心する。

クーヤ様はときどきこうして頭をなでてくれることがある。あたしがこうしてもらうのが好きなことを、小さいころからよく知っているか
らだ。でも、今では、こうして頭をなでてくれるのは、クーヤ様と、おじいちゃんくらいになってしまった。

おにいちゃんも以前はよくなでなでしてくれたのだけど、最近仕事で遠くへ出かけてばかりで、たまに会っても挨拶くらいしかしてくれな
い。・・・特に最近は、思いつめた顔をしていて、大きな悩み事を抱えているみたい。−妹のあたしにはわかる。− あたしには、影で祈
ることしか出来ないけど、はやく以前の強くてやさしいおにいちゃんに戻ってほしい。


はっ・・・とあたしは、やっと現実世界に戻ってきた。クーヤ様はまだあたしの頭をなでなでしてくれている。
が、おかしなことに気がついた。 見るとこんな夜中なのにクーヤ様はいつもの正装をしている。

「あのークーヤ様、そのお姿はどうしたのですか?」

「おー、そうであった。早く支度をするがよい。出かけるぞ。」

えっ? あたしは一瞬、わが耳を疑った。


つづく。




サクヤの大冒険・2− 出発 −



「えっえっ? 出かけるってどこにですか? こんな夜中に・・・? 第一今はクーヤ様、外出禁止じゃないですかー。」

「ついてくればわかる。そもそもゲンジマルは頭が堅すぎていかん。余は出かけたくてたまらないのに余の気持ちが分からないのじゃ。
そこで一緒に行く代わりといえば、孫であるそなたしかおるまい。」

「えっ?あたし?・・・おじい・・大老さまの代わりなんてそんなだいそれたこと・・・・。それにまた、大老さまに怒られますよー。」

「だいじょうぶじゃ。たいしたことではない。人に会うのに付き添ってくれればいいだけじゃ。」

「そ、そうですか?それなら一応お供しますけど・・・・。でも怖いのはいやですよ。」

「だいじょうぶじゃ。余を信用するがよい。」

「・・・・・・・・・・」

あたしは、イヤな予感がふつふつと湧き上がってくるのを、おさえきれなかった。

クーヤ様は小さいころから、時々無鉄砲なことをするお方だ。あたしは、いつもその後ろを必死でついていって。それでいつもひどい目に
会うのはあたしだけだったような記憶がある。今となっては懐かしい記憶だ。 もっとも、最近はクーヤ様は”聖上”という立場の為に、
ハメをはずすことが出来ないでいるようなのだけれど。
    ・
    ・    
    ・
あたしが着替え終わるのを待って、クーヤ様はあたしを連れて歩いていく。夜中といえど、見張りの兵が各所に配置されているはずなのだ
が、クーヤ様は慣れた風で全く迷いなく歩いていく。

「あ、あのー、クーヤ様?」

「しっ!しゃべるでない。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

あたしたちは無言で歩き続け、城の敷地の一角で止まった。どうやら目的地についたらしい。・・・・ってここは・・・・!

「格納庫じゃないですかー。こんなところに人がいるんですか?」

よく見ると、でっかいのが一つ外に立っていた。あ・・・あれは、白いモビ○スーツ!!ではなくて、クーヤ様のアヴ・カムゥ・・・。

「さーサクヤも乗るがよい。」

「はっ?」

あたしはまっ白になった。今クーヤ様が何と言ったのか、理解できなかった。人に会うのと、何が関係あるんだろうか。

あのー・・・クーヤ様? と言葉にする前に、次のお言葉。

「もたもたするでない。時間がなくなるではないか。早く乗るがよい。」

あー、やっぱり聞き間違いじゃなかったみたい。あたしの悪い予感は臨界点まではねあがる。

「あ、あああ、あの、クーヤ様?・・・・・人に会うというお話だったのでは?」

「うむ。もちろんじゃ。だから早く乗るがよい。」

答えにはなっていないのだが、クーヤ様はあたしをムリヤリ乗り込ませると、さっさと出発した。

「わ、わ、わ!高ーい。こわいですー。」

「大丈夫じゃ。余を信用せい。」

「は、はひ・・・・。(ぶるぶる)」

・・・お、おじいちゃんの代わりって、こういうことなんですかー? あたしの、いやな予感が当たってしまった。



− しかし、この程度はまだこれからの道中の災難に比べるとまだまだ序の口だということをあたしはまだ知らなかった・・・−


つづく。




サクヤの大冒険・3− 到着 −



「うーーー・・・・・」

「サクヤ、しっかりせい。もうすぐじゃぞ。」

「は、はひ・・・すいません。クーヤ様。」

・・・あたしはすっかり具合悪くなってしまって、道中何回かおろしてもらい、吐いてしまった。これが噂の”アヴ・カムゥ酔い”なのだ
ろうか。クーヤ様は、「乗せられているから酔うのじゃ。サクヤも操縦してみよ。」なんておっしゃるのだけれど、とてもそんな気にはな
れない。このドイーンドイーンという独特のリズムで突き上げられると、もう気持ちが悪くてどうしようもない。

「よーし。サクヤ。着いたのじゃー。」

「ふえ?」

虫の息になっていたあたしは、やっとこの地獄の時間が終わったことを知った。
やっとのことでアヴ・カムゥから降りるが、まだ頭がぐるぐる回っている。

「では、サクヤ、行ってくるがよい。」

「・・・は、はひ?」

荒い息を着いて、岩壁にもたれかかっているあたしに、クーヤ様が何か言った。

「ハクオロを迎えに行ってくるのじゃ。」

・・・・・ハクオロ?。・・・・そういえば、この前クーヤ様が突然、「面白い男を見つけたのじゃ。」なんてことを言っていたような。
・・・確か・・・その名前が・・・ハクオロ・・・だったような気がする。

あたしは、自分が何の為に連れてこられたか、なんとなく納得しながら言った。

「わかりました。ハクオロ様を迎えに行ってきます。それでどこにいらっしゃるのですか?」

「あそこじゃ。」


下を見ると、ドーーーーーーーン!! と特大の擬音効果付きで、大きな城が視界にとびこんできた。

「は? お城が見えますが・・・。」

「うむ。あの城の禁裏におる。」

「は、はひ?・・・・あの城の禁裏?・・・ひ、ひひ、ひょっとして皇様ですかー??」

「うむ。ここら一帯のトゥスクル国の皇じゃ。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

あたしは、言葉を失った。


つづく。




サクヤの大冒険・4− 潜入 −



暗闇の中、お城の各所には、あかあかと松明がともしてある。その周りには見張りの兵がいて結構警戒は厳重なようだ。あたしはまず、
手薄なところを見つけるため、城の周りを大きく周回する。
歩いているうちに、さっきのクーヤ様の言葉が頭をよぎる。

「ゲンジマルはここの城の警備は全然大したことはないといっていたぞ。そちもまがりなりにも、ゲンジマルの孫じゃ。自分を信じるがよ
い。」

はうー。クーヤ様ー、"まがりなりにも"は非道いですー。たしかにあたしは、エヴェンクルガじゃないですけど・・・・・。でも、クーヤ
様と同じシャクコポルです。クーヤ様とこうして一緒にいられるなんて、あたしは、シャクコポルに生まれてきて本当によかったと思って
るんですよー。

・・・・・と、考えごとをしていると、・・・・ドテッ!「あ、あう!」 石かなにかにつまずいて転んでしまった。

「おい、何か聞こえなかったか?」「ああ。何かいるかもしれん。」

向こうの方がザワザワし始めた。

ひいいーーっ 見つかったら大変なことにーっ。いそいで隠れなければ・・・・、どうしよう。どうしよう・・・・・。
見ると、城内から2人ほどこちらのほうにやってきて、探しはじめた。
あたしは、とっさに、一番暗いところにうずくまって、「な゛〜〜〜ご、な゛〜〜ご」と猫の鳴き声を真似てみた。

「なんだ。猫か・・・。脅かしやがって・・・・。」とか呟く声が聞こえ、ほっと胸をなでおろしたとき・・・・・、



「なんだおまえは。」


ビクーーーン!!  ドスの利いた低い声が真後ろからした。 体中の血が一気に下に下がるのがわかった。 おそるおそる、後ろを向い
てみる。 しまったー。外に出てきた見張りがもう一人いたとは。・・・・だめもとで声を出してみる。「な゛〜〜〜ご」。

「何の真似だコラ。あやしい奴め!」

ひーん。やっぱりだめみたいですー。相手はいきなり抜き身の刀を振り回して切りつけてきた。ひいいぃぃぃっ!!間一髪で一撃、ニ撃と
かわす。実際まぐれだろうけど、おじいちゃんが見ていたら褒めてくれただろうか。こう見えても、小さいときにおじいちゃんに剣の手ほ
どきをしてもらっているのだ。おにいちゃんと一緒に稽古した日々が走馬灯のように流れていく。人は死ぬ前に一生の出来事を全て見ると
いうけど・・・、ああ、あたしは今ここで死ぬのだろうか。

「止れ !! 止らねば斬るぞ !!」

「も、もう斬ってるじゃないですか !」

「ならば待て !!待たねば斬るぞ !!」

「待っても斬るじゃないですか!」
     ・
     ・
     ・
     ・
どれだけ走ってきただろうか。城内ではまだ騒いでいるようだが、とりあえず追っ手は撒いたと思う。安心したら腰が抜けたようだ。壁に
よりかかったままもう体に力が入らない。

ビクッ! なにか・・・なにかうなり声みたいなものが、暗闇の向こうから・・・聞こえた。

「ヴゥ゛ーーーー」

闇に光る一対の鋭い目が見えた。段々声が大きくなってじっと目をこらすと、なにか大きな動物のようだ。逆らえない圧倒的な雰囲気を
感じる。あたしはもう金縛りにかかったようで全く動けない。 ・・・それは動けないあたしのところにゆっくり近づいてくる。

「あ・・・あ・・・・」

もう声もでない。体の震えがとまらない。あたしは喰われてしまうのだろうか・・・。ああ、クーヤ様、おじいちゃん。おにいちゃん。
・・・その動物はあたしのところに来ると、「ヴォッ??」と一鳴きして顔をペロッと舐めた。
その瞬間あたしは、意識が遠くなっていくのを感じた。


つづく。




サクヤの大冒険・5− 城中で −



−あたしは雲の上にいた。雲に寝そべってると、ふわふわしてあったかくてとてもいい気持ち。なにもかも忘れてずーっとここでこうして
いたいと思う。・・・と、突然目の前に下界への穴が開いた。私は落ちたくなかったのだが、引力にはさからえず、落ちていく。どんどん
落ちていく・・・・・。

ドドンッ。ん? はっと我に帰る。背中が痛い。あたしはどこかから落ちたようだ。横にはさっきの大きい動物がいた。じっ・・とあたし
を見ている。でもなんかさっきのような恐怖は感じない。むしろ親しみを持った目を向けてくれている気がする。 キョロキョロ・・・・
周りを見るとここは・・・お城の中?・・・。

「ひょっとして、あなたが運んでくれたの?」 

「ヴォ」 

それでもやっぱり怖かったけど、今は敵地の只中であたしの唯一の味方かもしれない。
「あ、ありがとう・・・」お礼を言って恐る恐る手を伸ばそうとしたとき、

「いたぞー、曲者だ!」

突然静寂が破られる。今の物音で見つかってしまったのだろう。周りが騒がしくなった。早く隠れないと危険だ。
あ、あれ?視線を戻すと、さっきの動物はもういなくなっていた。
・・・夢?? それとも、オンヴィタイカヤンの使いだったのだろうか。

とりあえず早く逃げないと・・・・体が・・・動く!  さっきまでは動けなかったのに。

「追えー、逃すな !!!」

しばらく逃げ回ったんだけど、逃げている先の方からも人の声が聞こえてきた。建物の中だから、もうさっきのようには逃げられない。
ひいぃぃぃぃっ。もう絶体絶命ですかぁー?ふぇーん。
仕方なく手近な部屋に転がり込む。「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ‥‥」とりあえず、あたりの様子をうかがう。物音はない。どうやら誰もい
ないようだ。

「禁裏の方へ向かったぞ!」  「探し引きずり出せ! 場合によっては殺しても構わん!!」

「ヒッ、  どうしよう…どうしよう…どうしよう‥‥」

見つかれば、今度こそもう逃げ道はない。隠れていても、あとは見つかるのを待つばかりなのだ。もう涙が止まらなかった。
クーヤ様・・・ずーっとあたしを待ち続けているんでしょうけど、ここでお別れなんでしょうか・・・。

「クーヤ様ぁ、やっぱりあたしには、こんなことは無理ですよ!」

「クーヤがどうした?」

「ひゃ――― ン!!」

誰もいないはずの暗闇から、突然声がかかった。
・・・・・見つかってしまった・・・・もう終わりだ・・・・。あたしは、絶望に目の前が真っ暗になる。もともと真っ暗なんだからなん
て突っ込む余裕なんかない。

「あ…あ…あわ…あわわ‥‥」

また腰がぬけてしまったみたい。体が萎えきってしまって、カクカクいっている。 懸命に逃げようとするけど、目の前の人から目が話せ
ない。仮面をつけていて、何を考えているのか読み取れない。

ズルッ‥‥ゴン!うしろに下がり続けていたら、何かに頭をぶつけた。痛くて痛くて死にそう。

『 聖上 、夜分お休みの所、誠に申し訳ありませぬ』

「・・・!!」 まさか、この人が・・・?

「どうした、騒々しいが」

『ハッ! 賊が侵入し、この禁裏にまで逃込んだとのこと』

「ほぅ、賊がな…」

「ぁ‥‥‥ぁ‥‥‥」

そんな・・・やっと会えたのに・・・やっと会えたのに・・・・・・。


つづく。




サクヤの大冒険・6− 出会い −



『して、何か異変は御座りませぬか!』

「そうだな。そう言えば先程、何かが向こうへ逃げていったが‥‥そうか、あれは賊だったか」

「ぇ?」・・・・・何を言っているんだろうこの人は・・・・?

「まだそう遠くへは行ってない筈だ。追え」

『ハッ!』

・・・今来た兵はまた部屋から出ていってしまった。あたしのことは、気がつかなかったのだろうか。あたしは、これからどうなるのだろ
うか?もう混乱して、なにも考えられない。

「さて‥‥」

ビクッ!いよいよ、殺されるのだろうか。

「ハハ、怖がらなくていい。クーヤの使いなのだろう」

!! クーヤ様を知っている? ひょっとして・・・ひょっとして・・・。

「ハ‥‥ハイ、ハイッ! もしかして ハクオロ様‥‥でありますか?  あたし‥‥じゃなくて、自分の名はサクヤであります!
 アムルリネウルカ・クーヤ様の命により、お迎えに参上仕り・・むぐッ!?」

思いっきり舌をかんでしまった。痛くて死にそう。今日は何回死にそうになったんだろう。どこまでもついてないあたし。

「そうか、クーヤが呼んでるか・・・。 しかし、ゲンジマルならともかく、そんな華奢な躰で、よくここまで潜り抜けれたな」

その言葉で今までの経緯が全て脳裏に浮かんでくる。あまりにも・・・あまりにも長い時間だったように感じた。

「はひ…本当に殺ざれるがと思ったでずよ‥‥」

「ぅあ‥‥そ、そうか、ご苦労だったな」

緊張の糸がきれて、安心したら、また涙が止まらなくなった。

「うぅ‥‥ヒック‥‥えぐっ‥‥」

「ほら、これで涙を拭くといい」

「はひ‥‥ぐしゅっ‥‥‥うぅぅ‥‥‥‥‥プヒーン!」

・・・・・もう恥も外聞もない・・・・・・・・・と後から思った。

    ・
    ・
    ・

お話をしてみると、ハクオロ様は、とても大きくてあたたかみを感じる人だった。皇なのに、あたしのことをちゃんと見てお話してくれる。
なんとなく惹きつけられて、やさしくつつんでくれるような気がした。

そうか・・・、クーヤ様はこの人のところに会いにきてるのか。なんとなく理由がわかるような気がした。


つづく。




サクヤの大冒険・7− 帰路にて −



トゥスクルからの帰り道。ドイーンドイーン・・・・・アヴ・カムゥの走行音がひびく。"行き"で慣れたからか、何度も死ぬ目に会って
体がマヒしてるせいだからなのか、とにかく”アヴ・カムゥ酔い”にはならないようだ。

クーヤ様は上機嫌でアヴ・カムゥを操縦している。"行き"のときとは、全然別人格のよう。まるでハクオロ様はクーヤ様に新たなエネルギ
ーを分け与えてくれているような気がする。今までも何度か、クーヤ様が異様に機嫌のいい朝があったのだが、これで理由が判明したような気がする。

「どうした。横からずっと見つめられると気持ち悪いではないか。」

「あ、すみません。なんでもありません。」

「”アヴ・カムゥ酔い”は平気なのか。」

「はい。あたしもクーヤ様のように、ハクオロ様に元気をもらったのかもしれません。」

「・・・・な!」 

途端にクーヤ様の頬に血色が上っていく。

「変なことを言うでない。」

「あたしは、すごく嬉しくて・・・幸せなんです。クーヤ様に"友"って言ってもらえて。"必要だ"って言ってもらえて。」

「う・・うむ。」  

クーヤ様が照れたようなしぐさをする。かわいくてしょうがない。 

「でもハクオロ様の室になれなくて残念ですー。」

「・・・こらサクヤ、余をからかうでない。・・・まったく突然元気になりおって・・・。」

「ごめんなさい、クーヤ様。あたしは、クーヤ様が許してくれる限りずーっと、クーヤ様と一緒にいます。ずっとずっと一緒です。」

「そ、そうか。余も嬉しいぞ。余とサクヤはこれからもずーっと一緒じゃ。」

なでりなでり・・・・  (ぽーーー)  
クーヤ様は空いている手でなでなでしてくれた。

今、またクーヤ様はとてもやさしいお顔をしている。これが本当のクーヤ様なのだろう。

クーヤ様は、皇になってから、相手に対して威厳を示そうと、肩肘張ってかなり無理をしている。 昔から一緒にいるあたしから見ると、
今にも壊れてしまいそうなほど。 あたしは心配で心配で仕方がない。

・・・もし、あたしがお側にいることで、少しでもクーヤ様の助けになるなら・・・、ずっとお側にいよう。そしてクーヤ様の為にできる
ことは、なんでもしてあげたい。・・・"友"と言ってくれたクーヤ様の為に・・・。


おわり




サクヤの大冒険・8− 後日 − (エピローグ)



− 数日後 −


ドイーンドイーンドイーン・・・・・・

「う・・・えぷっ・・・クーヤ様、早く下ろしてくださいー。 お願いですー。」

「なんじゃ、またかー? ”アヴ・カムゥ酔い”はもう平気なのではないのか。」

「ふえ、クーヤ様ー、意地悪しないでくださいー。」

「わかったわかった。  そらっ行ってくるがよい。」

「はっはひ。」

あのあと、おじいちゃんには見つからなかったので、結局またクーヤ様とこうやって抜け出してきている。クーヤ様の為なら、何でもする
と誓ったあたしなのだが、それまでにこの体がもつのだろうか・・・・・(最近とても心配・・・)。


サクヤの大冒険  完




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