|
サクヤの大冒険 Part2・1− また起床 −
・う・・うーん・・・うーん・・・・・
− 「止れ !! 止らねば斬るぞ !!」 「ひっ!」
− 「追えー、逃すな !!!」 「ひんっ!」
− 「探し引きずり出せ! 場合によっては殺しても構わん!!」 「ひいいっ!!」
− 「ヴォッ」 「あううううっ!!!」
− どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・(ぐるぐるぐる) ・・・・・視界が・・・世界が回っていく・・・・・・
ガバッ!! どたん!
はっ!だんだん意識が戻ってくる。・・・・・夢・・・?
はーっ はーっ 心臓がドキドキしている。怖かった・・・・・。本当に死ぬかと思った・・・・。
・・・? 気がつくと、床にうつ伏せで寝ていた。 あれ? あたしってこんなに寝相が悪かったっけ?
とりあえず、体を起こそうとする。 なんかけだるい感じ・・・。
「どうしたサクヤ。 うなされていたぞ。」
ビクーッ!!!
声のほうを振り向くと、クーヤ様が立っていた。
「あ、・・・あれ? クーヤ・・様?」
「うむ。いくら名前を呼んでも、体を揺すってもダメだったのでな。・・・ゆるせ。」
えっ・・・なにを言って・・・って・・ああっ!!!
またあたしの布団がひっくり返ってる。
「クーヤ様ーぁ。」
「そう恨みがましい目をするでない。悪い夢を覚ましてやったのではないか。感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはない。」
うう・・・まあ、それはそーなんですけど、わざわざまた布団をひっくり返さなくても・・・・。クーヤ様ひょっとしてわざと、
楽しんでやってるのでは・・・・・・。
「なにをブツブツ言っておる。 時間がなくなる。 行くぞ。」
「あ? えっ? どこに・・・? ああっ!!」
分かってしまった。 クーヤ様はすでに正装している。それで、夜中に起こしにくるということは・・・・。
「また、ハクオロ様に会いに?」
「うむ。もちろんじゃ。だから早く支度をするがよい。」
「えっ? でも、この前行ったばっかりじゃないですかー? あまり行きすぎると、大老さまにばれちゃいますよー。」
「だいじょうぶじゃ。この前もばれなかったではないか。安心するがよい。」
うう・・・クーヤ様の「だいじょうぶじゃ。」は全然アテにならないということを、前回身をもって味わったから・・・・・・・・
あまり思い出したくない。 やっぱり今日はやめておいたほうが・・・・。
「ほれ。サクヤ。もたもたしてると余が着替えさせてしまうぞ。」
あ、あわわわ・・・。 見るとクーヤ様は本気で着替えさせようとする素振りをしている。・・・なにやらわざといやらしい手つきを
しているように見えるのは、気のせいだろうか。
「わっ、わかりました。着替えますからちょっと待っててください。」
「そうか? 遠慮することはないぞー。」
「お、おことわりしますー。」
「なんじゃ。つまらんやつじゃ。」
ク、クーヤ様・・・ひょっとして・・冗談じゃなく本気だったの・・・・ですか・・・??
つづく。
サクヤの大冒険 Part2・2− また出発 −
クーヤ様とあたしは、お城の中を歩いて格納庫へ来た。そこには、またクーヤ様のアヴ・カムゥが立っていた。
あたしは、前回のことを思い出して、さらに憂鬱な気分になってきた。
「どうした。何を心配そうな顔をしておる。"アヴ・カムゥ酔い"は平気なのであろ。」
「は、はあ。でもクーヤ様、今度はちゃんと操縦してくださいね。」
「!!・・・・なっ!」 とたんにクーヤ様のお顔が真っ赤になる。この前のことを思い出したのだろう。
・
・
・
− 時は数日前、トゥスクルからの帰り道 −
ドイーンドイーンドイーン・・・・・
クーヤ様もあたしも上機嫌での帰り道だった。で、クンネカムンまで、あと一息というところで・・・。
「のうサクヤ、そういえば忘れていたのだが。」
「はい?なんですか。」
「"床上手"はどういう意味なのじゃ?」
!!!??? そ、そんなー。クーヤ様忘れていたと思ったのにー。どどど・・・どう答えたらいいんですかー?
ハクオロ様ーっ助けてくださいー。逃げるなんてずるいですー。
クーヤ様はあたしの頭にあいている手をおいて問い詰める。
「こらサクヤ、正直に答えるがよい。」
・・・あ、う・・・あうあうあう。
「こら、目をそらすでない。余の目が真っ直ぐに見れぬかー。」
クーヤ様はあたしの頬を両手ではさんで固定する。あたしは往生際悪く、キョロキョロと視線をそらしまくる。
「ハクオロとサクヤだけ分かっておって、余だけ仲間はずれみたいではないかー。」
視線をもどすと、クーヤ様は少し拗ねたようなお顔をしている。
・・・クーヤ様・・・そんな事を気にしておいでだったのですか・・・・? あたしは、クーヤ様を急に抱きしめたくなった。
と、そのとき、視界の隅にいやな感じのものが目に入った。
「ク・・・ククククク・・・クーヤ様っ!!!!!」
「なんじゃ急に、教える気に・・」
「クーヤ様早く!!! 前前、まえっっっ!!!!」
見ると、目の前に切り立った断崖がそびえたっていて、あたしたちは、今まさに正面から突っ込もうとしていた。
「ぬあっ!!」
クーヤ様が急ブレーキをかける。・・・・が、間に合うはずがない。
ドーンと思いっきりぶつかった。
・・・結局、さすが、アヴ・カムゥは頑丈で、キズ一つなかったみたい。そのかわり、岩肌にめり込んでしまって、脱出するのが大変だった。
クーヤ様もシートベルトをしていて、見事に無傷。あたしだけが、体のあちこちをぶつけて、アザだらけになってしまった。今でもまだ
体中痛い。
その後、クーヤ様はあたしに対して一生懸命謝ってくれた。あたしはもういいです。って言ってるのに、ひたすら謝り続けて。
あたしは、そんなクーヤ様がとても愛おしくなった。
戻ってから、あたしの部屋でクーヤ様が知りたがっていた「床上手」について、あたしの知ってる限りのことを教えてさしあげた。
そのあと2人で真っ赤な顔をして、押し黙ったまま、明るくなるまでじーっとたたずんでいたっけ。
・
・
・
はっと顔を上げるとクーヤ様はまだ頬を染めたまま立っていた。クーヤ様もこの前のことを思い出していたに違いない。
「あのー、クーヤ様?」 はっとクーヤ様も我に帰ったようだ。
「大丈夫じゃ。余の操縦を信じるがよい。」
「は、はあ。」
「なんじゃその気のない返事は、ではまいるぞ。」
「は、はいー。待ってくださいー。」
結局こうして、また2人は出発した。
つづく。
サクヤの大冒険 Part2・3− また到着 −
「う゜ーーーーーー」
「それサクヤ、到着じゃ。降りるがよい。」
「は、はひ・・・・・。」
あたしはまた"アヴ・カムゥ酔い"で半死半生の体になってしまい、何とか手ごろな岩に座って寄りかかる。体力の半分以上消耗したみたい。
前回もこのくらい消耗したはずなのだが、それであれだけの大立ちまわりをやってしまったということが、信じられない。
驚きの連続で感覚がマヒしていたのかもしれない。
「まったく、この前は"アヴ・カムゥ酔い"は治ったといっていたではないかー。」
「うー・・・そんなこと言われても・・・・。」
「大丈夫か? 行ってこれるか?」
「は、はひ・・・・・。行ってきます。」
あたしは、萎えた体を引き起こす。目の前に楽しみがあれば、なんとか体は動くものだ。・・・と思う。
・・・実はあたしも、ハクオロ様に会うのが楽しみだったりする。この前初めて会ったばかりなのだが、なぜかとても惹き付けられてしま
う。
前回はとてもみっともない姿を見られてしまったので(思い出す度顔が熱くなってしまう)、今回は、きちっとクーヤ様の使いを果たして
見直してもらいたい。という希望に燃えていた。
つづく。
サクヤの大冒険 Part2・4− また潜入 −
・・・あたしは、今お城に続く抜け道を歩いている・・・。
前回は、お城の警備にまともに引っかかって何回も死にそうな目に会ってしまった。・・もう思い出したくもないけど。
そのあと、ハクオロ様に、警備の抜け道を教えてもらったのだけど、それはなんと、おじいちゃんがハクオロ様に教えた抜け道だそうだ。
教えてもらってる最中、ハクオロ様は、複雑な表情を浮かべていたように見えた。
それはそうだろう。自分の城の抜け道を他の国の人に教えるなんて・・・。
でも、それだけクーヤ様(とあたし)が信用してもらってるからかなー。と考えると、胸の奥のほうが熱くなってきてしまう。
などと、考えていたとき、横に何かの気配を感じた。急いで振り返ると、「ヴォッ??」という声???
ひっひいぃぃぃぃぃ!!! またあなたですかーーーー????? あたしは慌てて後ずさったが、それが大きな間違いだったことに
気がついたときは、手遅れだった。
あっあああ!!ジャポーン あたしは派手な音をたてて落っこちてしまった。そうだ。横には堀があったのだ。 あたしは、背中から落ち
てしまってもう全身泥だらけ。 堀はそれほど深くないし、水もあまり入ってないのだけれど、妙に底の泥がぬかるんでいる。
・・・ズブッ。ズブッ。徐々に体が泥に沈んでいく。・・・ひょっとして、底なし沼??・・・よく考えればそんな訳ないのだが、気持ち
が動転している為に、焦りばかりが増していく。
あたしは、もう訳が分からず、沈むのが怖くてただただもがくだけだった。、
と、そのとき、
「ヴォッ??」
さっきの動物が堀の中に入ってあたしのほうに泳いで・・・というか、泥を漕いでくる。あたしのほうに申し訳なさそうな顔を向けると、
背中を差し出す。
つかまれ。と言っているのだろうか。なぜかあたしは分かったような気がした。
あたしが背中に捕まると、ガッシュガッシュ・・・・とすごい勢いで泥の中から這い出して、大ジャンプ!!
「わっわわわわわわーーーーーっ!!」
心臓が飛び上がるかと思ったけど、無事着地をした。あれ?ここは、元の場所?・・・すごい。あっという間に戻ってきちゃった。
背中から降りようとしたら、その前に突然その動物は走り出した。あたしは、落ちないように必死でしがみつく。
−−−速い速いーっ! 廊下だろうが階段だろうが、流れるように駆け抜ける。
気がつくと、見たことのある部屋の前で止まっていた・・・・『禁裏』の前で。
「あなた・・・ひょっとしてあたしがここに来るのを知っていたんですかー?」
「ヴォッ!!」
あたしは、思わずその動物の首を抱きしめた。ありがとう。ありがとう。お互い泥だらけで冷たかったけど、この動物が愛らしくてしょう
がなかった。
少しして、その動物はこの場を離れていった。あたしたちが走ってきた廊下をみると、泥だらけになっていたが、知らないふりをして
おこう。
つづく。
サクヤの大冒険 Part2・5− また城中 −
こうしてあたしは、お城の禁裏前になんとかたどり着いたのだけれども、部屋に入る前に、落ち着いて改めて自分の身なりを見てみた。
・・・泥、泥、泥・・・客観的に見て、今のあたしはどう見えるのだろうか。よくよく考えてみると、情けない気持ちでいっぱいになった。
そもそも今日こそは、ハクオロ様にきちっと用件を果たして、認めてもらうつもりだったのだ。それでハクオロ様にやさしく、ねぎらいの
お言葉をかけていただければ、もう何もいらない・・・・はずだった。
それが、これでは、汚名返上どころか、恥の上塗りではないか・・・・。もう情けないやら、悔しいやらで、涙が止まらなくなってきた。
こんな姿をハクオロ様に見られたくない。・・・部屋に入りたくない。・・・どうしよう。・・・うっ、うっ・・・・。
・・・・・もう帰りたいですー。クーヤ様ーー。
でも泣いていてもしようがないのだ。しかたなく覚悟を決めて部屋にはいった。
「あの・・・」
ハクオロ様は何か書類を眺めていらっしゃるようだ。
「あのぉ・・・」
「ん?」
ハクオロ様がこちらに気づいた。あたしは自分の姿にひどく劣等感を感じて、また悲しみが溢れてくる。
「う・・・ぅぅぅ〜・・・・」
「 ぬわ!? おのれ泥田坊!!」
そ、そんな〜〜。泥田坊って何ですか〜〜。ひどいですー。ハクオロ様ー。あたしは、ショックで涙が止まらない。
「ヒック…ひどいでずよぉ・・・。なんだかしらないですけど・・・えぐっ・・・すごく屈辱的でず・・・・。」
「ん? その声・・・もしかしてサクヤか?」
「ヒック・・・もしかしなくてもそうでずよぅ・・・。」
「どうしたんだ一体、そんな泥まみれになって。」
「えぐっ・・・クーヤ様の使いで・・・ヒック・・・今日は見つからないようにって・・・グシュ・・・・。」
「そしたら・・・そしたら堀の中に落ちて・・・・うぅぅぅ・・・。」
「あ・・・・ぁ、それは・・・大変だったな。」
「えうぅぅぅぅぅ・・・・。」
ハクオロ様にやさしい言葉をかけられると、ますます悲しくなってくる。哀れみの目を向けられると、どんどんみじめに感じてくる。
・・・・・・・・・・もう今にも悲しみで胸がつぶれそう。
・・・本当はこんなはずじゃなかったのに・・・。立派に勤めを果たして、認めてもらうはずだったのに・・・・。
「ヒック・・うぅぅぅぅぅ・・・・。」
あたしは、しばらく泣き止まなくて、ハクオロ様をかえって困らせてたみたい。
つづく。
サクヤの大冒険 Part2・6− 山路にて −
あたしは、ハクオロ様のご好意でお風呂場を貸してもらい、着替えも借りた。脱いだものは、洗っておくからこの次に来たとき持って帰れ
ばいい。ということで、本当に何から何までお世話になりっぱなしだった。
本当は、あたしはハクオロ様に会えて嬉しかったはずなのに・・・、気持ちはずっと沈みっぱなしだった。・・もう消えてしまいたかった。
・
・
・
「久しいな、 ハクオロ 。嬉しく思うぞ」
「ああ、私もだ」
クーヤ様とハクオロ様のお話が始まった。・・・・・・・あたしは、後ろに控えていよう。
と、気がつくと、なにか、言い争いをしている。
「それとも、やはり嬉しくないのか」
「そんなことはないが・・・」
「では・・・こ、こうか?」
「わざとらしいな。嬉しそうというより、引きつっているようにしか見えん」
「む、むぅ…それでは」
「そなた、それは余を馬鹿にしているのか侮辱しているのかどちらだ?」
なぜかハクオロ様の表情をめぐってケンカしている。
大変っ!なんとかしなきゃ。
「あ、あの、クーヤ様、いきなりそんなことを言われても、それに、クーヤ様の方からは暗くてよく見えなかったみたいですけど、
ハクオロ 様は嬉しそうに微笑んでおりましたよ。」
「そ、そうなのか。」
「ハイ」
「そうか。うむ…ならば良い」
・・・ほっ。なんとか一段落。ハクオロ様を見ると、やさしく微笑んでくれた。沈んでいたはずのあたしの心が、急激に跳ね上がる。
また、心臓がドキドキしてきた。とりあえず、ここは去ったほうがいいだろう。
「それではクーヤ様、サクヤはあちらで控えておりますので、ご用があればお呼び下さい。
あたしは、少し離れた岩影に腰をおろす。
ふぅー。さっきまで心が沈みっぱなしだったのに、ハクオロ様が微笑んでくれただけで、まだ胸のドキドキが止まらない。
・・・・なぜだろう。
・・・そうだ。ハクオロ様の目だ。あたしが、あれだけの醜態をさらしてのに、ハクオロ様は、一度も怒ったり、蔑んだりしなかった。
ずーっと優しい目で見ていてくれた。
・・・・あたしは、どんどんハクオロ様のことが好きになってきているのを感じた。もうどうしようもなく・・・。
まして、この前"室"にするなんてお話があったものだから、どうしても意識せざるをえない。
・・・でもさっきのクーヤ様の表情が脳裏に浮かぶ。ハクオロ様に会うと、まるで花が開いたように、笑顔が輝いていた。
そうか、クーヤ様もハクオロ様のことが好き・・・・なんですね・・・・。
あたしは、心がずーんと重くなるを感じた。もちろんあたしはクーヤ様が一番好きだ。・・・でも、でも・・・・。
「サクヤ・・・。」
えっ?・・・・・奥のほうからあたしを呼ぶ声がした気がするけど、気のせい?
「サクヤ・・・。」・・・・・気のせいじゃない。
辺りを見ると、近くの岩陰に誰か立っている。よく見ると・・・見たことがあるような・・・人影?
・・・・・っ!!!・・・おじいちゃんだ。
「お・・・おじぃぅ・・・もごもごもご。」
おじいちゃんが、あたしの口を抑える。あたしは、その瞬間、おじいちゃんに黙って出てきていることを思い出した。
しかられる!!・・・と思って身を竦めたのだが、その瞬間、あたしは頭にやさしく置かれた手の平を感じていた。
目をあげると、おじいちゃんは、優しい顔であたしの頭を撫でながら、
「サクヤ、クーヤ様の付き添いご苦労だったな。」(なでりなでり)
「あっ・・・あっ・・・。」あたしの目からボロボロと涙がこぼれる。どうしたんだろう・・・。止まらない。ハクオロ様への使いの仕事
も無様な結果に終わったあたしに、思ってもなかった人からねぎらいの言葉が聞けるなんて・・・・。 やっぱりあたしは、誰かにこの言
葉を言ってもらいたかったのかもしれない。 ・・・涙が後から後から出てくる。 おじいちゃんの手は大きくて暖かかかった。
あたしが泣き止むのを待っておじいちゃんはこ言った。
「ところで、サクヤは"床上手"だそうだな。」
っ!! この前のあたしの部屋での話を全部聞かれていた??
じ、じゃあ、おじいちゃんは、全部知っていて・・・・!?あたしは顔が紅潮していくのを感じた。
恥ずかしくてしかたがない。
「サクヤ、あの2人のところに行くぞ。案内しなさい。」
「はっはい。わかりました。」
・
・
・
そのあと、3人で正座させられて、おじいちゃんのお説教を聞かせられた。
ハクオロ様も、おじいちゃんの前では、形無しでとても皇らしく見えない。
あたしは、ハクオロ様のあたらしい一面を見つけられたのがうれしくてうれしくて、仕方なかった。
「こらっサクヤ! なにをニヤニヤしておるっ!!」
「はっはひっ、ご、ごめんなさい。」
・
・
・
おじいちゃんのお説教を受けながら、あたしはいろいろなことを考えた。
もう、自分の姿にこだわるのは、やめよう。ハクオロ様は、本当のあたしを見てくれて、正面から向き合ってくれる人だ。
あたしは、クーヤ様が好き。でもハクオロ様も好き。・・・・・それでいいではないか、と思った。
時間がくれば、今日もまたクンネカムンへ帰らねばならない。また、ハクオロ様ともお別れ。
でも、あたしとクーヤ様の間に太い絆があるように、ハクオロ様との間にも、絆があると信じたい。
・・・また会いにくればいいだけなのだから・・・・。
だからあたしは、以前の誓いの通り、クーヤ様の為にできることをする。そうすれば、またハクオロ様にも会えます・・・よね。
・
・
・
「むぅ、もうこんな時間か。まだ話すことは山のようにありますが、仕方ありますまい」
長かったおじいちゃんのお説教がやっと終わりを迎えた。3人でこうやってお説教を受けていると、まるで同じ仲間になったような気持ち
になる。・・・2人とも『皇』なんですよね。あたしが、2人の『皇』と一緒にお説教を受けるなんて、普通じゃ絶対考えられないこと。
多分、誰に話しても信じてもらえないだろうな。あたしは、心の中が暖かいもので満たされていくのを感じた。
さっきまで、落ち込んでいたのが信じられないくらいだった。
「く‥‥ぅぅ、足が‥‥痺れて‥‥」
ハクオロ様の声。ふふふ、皇でも足が痺れるのですね。少し可笑しかった。・・・あたしも立ち上がろうとする。
「あぅ…うぅぅぅぅぅ‥‥」
今まで足の感覚がなくて、なんともなかったようなのだが、あたしも足が痺れていたようだ。人のことを笑えない。
「二人とも、だらしがないぞ。あれしきの正座で根を上げるとは。」
!!・・・クーヤ様は平気のようだ。さすがクーヤ様は一味違う。
「あつつ…クーヤは平気なのか。」
「あたりまえであろ。あれしきのことで根を上げる余ではない。」
「だってクーヤ様は、よくこうして・・・」
「サ、サクヤ、話すでない!」
「‥‥‥‥ぷっ」
「そなたも何が可笑しいのだ!!」
「いや、クーヤもやはり女の子なのだなと思ってな。」
「何だそれは。余を馬鹿にしておるのか!?」
「馬鹿になどしていない。ただ愛おしく感じているだけだ。」
っ!!!・・・・一瞬どきっとする。・・・・それはクーヤ様に対する言葉だけど。
「・・・・・・・・・」 クーヤ様のお顔が真っ赤になってく。多分あたしの顔も真っ赤になっているに違いない。
「え、ええい・・・ゲンジマル、余は先に行っておるぞ。」
クーヤ様は照れた様子を見せたくないのだろう。そんな様子がすごく可愛いと感じた。
「クスッ‥‥それでは ハクオロ 様、失礼しますです。」
あたしは、ハクオロ様のお顔を見つめながら、心を込めて挨拶をした。
「ああ」
ハクオロ様は相変わらず、穏やかな、優しい目で返事をしてくれた。
・・・ハクオロ様、また会うときまで、お元気で・・・・。あたしは、心から祈りながらこの場所を後にした。
PS−クンネカムンに帰ってから、クーヤ様とあたしは、おじいちゃんにこってりしぼられ、厳重に外出禁止を言い渡された。
クーヤ様は、今度こそ、観念したようだった。
サクヤの大冒険 Part2・7− エピローグ −
− 何日かたってから −
・・・う、・・・うん。・・・はっ。
また目が覚めた。どうも眠れない。・・・というか、うとうとするのだが、すぐ目が覚めてさめてしまう。
・・・いや、原因は分かっている。・・・あのクーヤ様の思いつめたお顔が目にうかぶ。
思えば、この前、トゥスクルから帰ってきてから、ここクンネカムンではいろいろなことが起こっている。クーヤ様も毎日忙しくて心の
休まる暇がない。それで日ごとに元気がなくなってきていたのだけれど・・・・、今日は特に朝からおかしかった。
「クーヤ様、お髪のお手入れですよー。」
「・・・・・・・・・・ああ。」
「あれ、クーヤ様、元気がありませんねー。」
「・・・・・・・・・・ああ。」
「・・・クーヤ様はいつもお美しいですねー。」
「・・・・・・・・・・ああ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・ああ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
という感じで一日中、心ここにあらずという感じだった。
あたしは、どうするか迷ったけど、とりあえず一日そっとしておいて、様子をみることにした。
明日になったら理由を聞いてみよう。しつこく食い下がれば悩みの訳を教えてくれるかもしれない。
「友」と呼んでくれたクーヤ様だもの。
・・・・と、部屋の外に誰かの気配が立つ。すーっと障子が開いて誰か入ってくる。暗闇で目を開けて考えごとをしていたので、目は暗さ
に慣れている。・・・その人影を見ると・・・・クーヤ様・・・?
「クーヤ様?どうしたんですか?」
「・・・サ、サクヤ・・・起きておったのか。」
とりあえず起きて明かりをつける。
クーヤ様を見て驚いた。外出の正装をしている。・・・ひょっとして・・・トゥスクルに・・・?
クーヤ様は下を向いたままお顔を上げてくれない。 あたしは、できるだけやさしい声で言った。
「クーヤ様、どうしたんですか。」
クーヤ様がお顔を上げる。・・・・・・・っ!!! そこには、真っ赤な目をして泣き腫らしたようなお顔があった。
「・・・・ク、クーヤ様?」
「サクヤ・・・サクヤー!サクヤー!・・う゛うあ゛ーーーーーーーーーーー」
クーヤ様はあたしの胸に飛び込んでくると、せきを切ったように泣き出した。
あたしは、どうしたらいいか、訳が分からず、ただクーヤ様の頭をなでてあげることしかできなかった。
・・・・いつも、クーヤ様がしてくれるように・・・・。
サクヤの大冒険 Part2 完
|