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久しぶりにSSを書き込む夢幻夢想です。
大好評だった(大不評だったような…)「パロられるもの」の第2段です。
今回の講釈は、「O・ヘンリ短編集」から「最後の一葉」のパロディ、
「最後の一葉られるもの」です。
では、どうぞ。
パロられるもの2 最後の一葉られるもの
最後の一葉られるもの
配役
兄 … オボロ
妹 … ユズハ
隣に住む双子 … ドリィ&グラァ
医者 … エルルゥ
ナレーション … サクヤ
最後の一葉られるもの-1-
あるところに芸術家の村がありました。
その村の一角に、オボロとユズハという、とても仲の良い兄妹のアトリエがありました。
その仲の良さといったら、隣に住むドリィとグラァという双子もうらやむ程でした。
「ああ、若様、何てお優しい…。」
「そんな風に僕達にも優しくして下さい…。」
「「ああ、若様…。」」
…うらやましがり方が違うような気もしますが、気のせいということにしておいて下さい。
そんなある日のことでした。
この村に、肺炎という病魔があちらこちらの人達を撫でて歩いたのです。
この病魔は、とても騎士道的な紳士ではなく、
生まれつき病弱なユズハにもその牙が襲い掛かったのです。
ユズハは、ほとんど身動きもせずにベットに横たわり、小さな窓ガラスごしに、
隣のレンガ造りの家の、窓も何もない壁の方を見ているだけでした。
確かユズハは目が見えなかったんじゃないか、という突っ込みはいつものごとく却下します。
ある朝、ユズハ専属医師のエルルゥがオボロに目で合図しました。
(うっ、な、何だ?いきなりウインクなんかして。
はっ、ま、まさか、この俺にラブラブビームを?
そ、そんな、お、俺はどうすれば…ごばぁっ!)
などと勘違いするオボロを叩きのめし、エルルゥは廊下にオボロを連れ出しました。
「いいですか。このままだと助かる見込みは――まず10に1つといったところです。」
廊下に連れ出されてすぐに目が覚めた(覚めさせられた)オボロに、エルルゥは言います。
「その見込みも、ユズハちゃんが生きたいと思わないことには、どうにもなりません。
ユズハちゃんが気持ちの上で、何かこれと打ち込めるようなものは、ないのですか?」
「ユズハは――兄者の赤ちゃんが欲しいと…ぐぶっ!」
そう答えるオボロに、エルルゥは激しいまでのボディをくらわせました。
さながら、「ボディが甘いぜ!お留守だぜ!ガラ空きだぜ!」
と連続技を入れているかのようでした。
「まあ、それはともかく。」
白目をむき、泡を吹きながら痙攣するオボロを
冷ややかに見下ろしながらエルルゥは言います。
「わたしの力の及ぶ限り、あらゆる療法をほどこしてみせます。
ですが、患者さんが自分の葬式に来る人の数を数え始めたら、
薬の効能は5割がた落ちると思って下さい。
オボロさんが、ユズハちゃんに、
外を思いっきり走ってみたい、と思うようにさせることができれば、
見込みは10に1つではなく、5つに1つになると保障出来ます。
ですから…って、聞いてますか、オボロさん!」
エルルゥが帰ってからも、オボロはしばらくまともに動けませんでしたが、
エルルゥの言うことはしっかりと頭の中に叩き込まれていました。
いえ、エルルゥがオボロを起こす時に、実際にオボロの顔を変形させてしまいましたが、
物理的にも頭の中にも、エルルゥの伝えようとすることはしっかりと伝わっていました。
「辺境の女は強い」と…。
ではなくて、ユズハに生きる気力を与えなくてはいけないということを。
最後の一葉られるもの-2-
オボロは自分の部屋に戻り、ハンカチがぐしょぐしょになるまでユズハのために泣きました。
それから表面上は上機嫌になり、威勢良くユズハの部屋に入って行きました。
ユズハは、ほとんど掛け布団にしわ1つ寄せずに、窓の方を向いて寝ていました。
寝ているのかと思いましたが、ユズハが小さな声で何度も繰り返すのが聞こえました。
ユズハは窓の外を見ながら、数を逆に数えているのでした。
「12」と言って、少し経ってから「11」。それから「10」「9つ」。
その後、ほぼ同時に「8つ」「7つ」…。
オボロは気になって窓の外を見ました。
窓の外には殺風景な薄暗い中庭と、レンガ造りの隣の建物の窓も何もない壁、
そして、根っこが節くれだって朽ちかけている1本の古い古いツタのツルが
そのレンガの壁の中程まで這い登っているのが見えるだけでした。
つめたい秋の風がツルから葉をはたき落として、その枝はほとんど裸になって、
崩れかかったレンガにしがみついていました。
「どうしたんだ?ユズハ。」
「だんだんと落ちるのが早くなってきました。3日前には、まだ100くらいついていました。
数えていると頭が混乱してしまうくらいでした。でも、今は数えるのは楽です。
あ…。また2つ落ちました。後…5つしかありません。」
「な、何が5つなんだ?」
ユズハは窓の外を見たまま答えました。
「葉っぱです。ツタのツルについている葉っぱ…。
最後の一葉が落ちたら、ユズハもいかなくてはならないのですね。
エルルゥさまも、そう言いませんでしたか?」
「そんなバカげたことは聞いてない。
ツルの枯れ葉と、ユズハの病気がよくなることと、どんな関係がある?
そういえば、ユズハはあのツルがとても好きだったな。
でも、あまりそんなことを言うもんじゃないぞ。
エルルゥも今朝、言ってたぞ。ユズハはどんどん良くなっているって…。」
「オボロ兄様。ユズハはわかっているんです。
スタッフロールの後、お花に囲まれた眺めのいい場所で…。」
「わーわーわーっ!」
オボロは慌ててユズハの言葉を遮りました。
ですが、どこかにイッてしまったユズハは窓の外を見たまま、
いえ、更に遠くを見ているような眼差しのまま、
声が聞こえなくなるのも構わず言葉を続けていました。
「…と、なるのでしょう?
それにしても、エルルゥさまが振り返った後、どうなったのでしょうね?」
「ユ、ユズハ。頼むから、戻って来てくれ。と、言うか、俺の話を聞いて下さい。」
顔面蒼白になりながらユズハに懇願するオボロ。
その願いを聞き届けたのか、ユズハはオボロの方を向きました。
「な、なあ、ユズハ。そろそろ寝ないか?お、俺、明日はちょっと早いんだ。」
「そうですか…。では、シェードを下ろしますね。」
そう言うと、ユズハは窓のシェードを下ろしました。
「お休みなさい、オボロ兄様。」
「あ、ああ。お休み。」
暗くなった室内で、オボロはユズハの顔を見ます。
ユズハはすぐに寝てしまったらしく、寝息をたてていました。
「ユズハ…お前を、死なせるもんか…お前を…。」
ユズハの寝顔を見ていたオボロですが、やがて、うつらうつら、としてきました。
いろいろ疲れていたのでしょう。ええ。いろいろと。
ユズハの側で眠るオボロ。
「「………。」」
そんな2人の様子を、窓の外で一部始終聞いている存在がいたことに
誰も気付いていませんでした。
最後の一葉られるもの-3-
翌朝、オボロが目を覚ますと、ユズハは生気のない目を大きく見開いて、
下ろされている窓のシェードを、じっと見つめていました。
「オボロ兄様、シェードを上げてくれませんか?ユズハは見たいんです。」
オボロはしぶしぶ言われた通りにしました。
ところが、どうでしょう!
たたきつけるような雨と、吹きすさぶ風が良く似合う9人の…ではなく、
まあ、早い話が窓の外は台風のような天気になっていたのです。
どうやら昨晩からその天気は続いていたらしく、
川は 戦闘19 ハンサナの攻防 のように鉄砲水が起こっていました。
(ここで何度も流されて経験値を稼ぐことが出来るんだよな〜)
などと現実逃避しかけたオボロでしたが、慌てて我にかえり、ツタのツルを見ました。
すると、何とレンガの壁の上には、
まだツタの葉が1枚、はっきりと残っているではないですか!
それは、ツルにしがみついている最後の一葉でした。
葉柄の近くはまだ濃い緑色でしたが、のこぎりの刃のような縁は黄色く朽ちて、
健気にも枝にぶら下がっていました。
「最後の一葉だ…。」
オボロが呟き、その後、ユズハが言いました。
「夜のうちに、きっと落ちてしまうと思っていたのに…。
ですけど、今日、きっと落ちます。そうすると、ユズハも一緒に死ぬのですね。」
「ユズハ…。」
オボロは悲しそうな顔になります。
そして、オボロは強く願いました。どうか、あの葉が落ちないように、と。
その日も過ぎ、夕暮れになっても、
あのひとりぽっちのツタの葉は、壁の上のツルにしがみついていました。
夜になり、再び雨風が吹き荒れても、その葉はそこにいました。
ユズハは寝たまま、長い間じっと葉っぱを見つめていました。
それから、オボロに呼びかけます。
「オボロ兄様。ユズハは悪い子でした。
ユズハがどんなに悪い子だったかを知らせるために、
あの最後の一葉はあそこにいてくれたのですね。」
最後の一葉られるもの-4-
午後になると、エルルゥがやって来ました。
エルルゥが帰る時、オボロは口実を作って廊下に出ました。
「見込みは、5分5分です。
看病がよければ、オボロさんが勝ちます。
ところで、わたしはこれからお隣の患者さんを診てきます。
ドリィさんとグラァさんというお2人で、やっぱり肺炎なんです。
でも、何だかやけに元気なんですよね。
では、明日、また来ますね。」
それを聞いたオボロは、隣の双子のことが心配になりました。
じつは、今まで隣のドリィとグラァにはオボロとユズハもとても助けられたのです。
エルルゥが帰る頃を見計らって、オボロはドリィとグラァのところに行きました。
「「あっ!若様!」」
オボロの姿を見るなり、ドリィとグラァの2人は飛んで来ました。
病人だとはとても思えません。
「大丈夫か?2人とも?」
「「ハイッ、問題ありません!」」
「そうか。それは良かった。しかし、何だって肺炎なんて?」
「「え、そ、それは…。」」
オボロはドリィとグラァの部屋を見渡しました。
すると、そこには何枚かのツタの葉のラフスケッチと、
葉の色の緑色を出したパレットを見つけました。
「これは…!まさか、お前ら…。」
「「………。」」
ドリィとグラァは何も言いませんでしたが、その沈黙が全てを物語っていました。
そう、壁のツタの葉っぱは、ドリィとグラァが描いた絵だったのです。
それも、本物と見紛うほどの、素晴らしい、生きる気力を与える絵でした。
「そうだったのか…。お前達…。」
「「若様?」」
オボロはドリィとグラァを強く抱きしめました。
「ありがとう…。ありがとう、お前達…。」
「「若様…。」」
オボロとドリィとグラァは、強く、強く、抱き締め合いました。
「お前達。何か礼は欲しくないか?」
「「えっ?お、お礼だなんて、そんな…。」」
「遠慮するな。何だっていいぞ。」
「「そ、それでしたら…。」」
最後の一葉られるもの-5-
ドリィとグラァの願いは、オボロと一緒に酒盛りをしたい、というものでした。
「さ、若様。どうぞ。」
「おう。」
「流石若様。ささ、僕のもどうぞ。」
「いい飲みっぷりです。さあ、若様。」
こうして夜はふけていくのでした…。
翌日、ユズハの診察をしたエルルゥはオボロに言いました。
「もう、大丈夫です。オボロさん、あなたの勝ちです。あとは栄養の摂取だけです。」
そして、その午後、オボロは上機嫌でユズハにリンゴを剥いていました。
「オボロ兄様、機嫌よさそう…。」
「ん?ああ。もちろんだとも。」
「クスッ。オボロ兄様が機嫌がいいと、ユズハも何だか嬉しいです。
そういえば、オボロ兄様、夕べは遅くまで帰ってきませんでしたけど、
どうしたんですか?」
「ああ。実は隣のドリィとグラァと一緒に酒を飲んでたんだよ。」
「そうだったんですか。」
「だが、あの2人、どんどんと俺に酒をすすめるもんだから、つい飲みすぎてしまってな。
途中から記憶がないんだが、朝起きたらみんな裸で倒れてたんだ。」
「まあ。クスクス。」
のどかな風景。
ですが、その風景を、窓の外で何者かが見ているのを誰も気付いていませんでした。
しかも、その何者かは、やけに潤んだ目で、顔を赤らめて見ていました。
「「若様…。」」
ユズハの最後の一葉は散ることなく、最高の結果を迎える出来ました。
ですが、オボロの大切な何かは散ってしまったのかもしれませんね…。
ぽっ。
と、いうわけで今日はここまで。
続きは次回の講釈で〜。
♪おれは自由に〜生きるそんご〜くうだよ 気楽なもんだよ〜…♪
あとがきの類似品
どうも、夢幻夢想です。
「パロられるもの2」、お届けします。
今回の話になるまで、いろいろありました。
話の候補、実はもう2つありました。
それは、以下の2つです。
賢者の贈られるもの
配役
夫 … カルラ
妻 … トウカ
店主 … チキナロ
エキストラ … その他の方々
ナレーション … サクヤ
よみがえられる改心(もの)
配役
金庫破りの男 … ハクオロ
刑務所の所長 … クロウ
探偵 … ベナウィ
銀行の娘 … ウルト
老銀行家 … オンカミヤムカイの皇ワーベ
既婚の姉 … カミュ
姉の上の娘 … エルルゥ
姉の下の娘 … アルルゥ
エキストラ … その他の方々
ナレーション … サクヤ
というものでした。
いずれにしてもO・ヘンリですね。
もし、評判が良ければ、上のうち、
どれかが「パロられるもの3」でお目見えするかもしれません。
まあ、予定は未定ですけど。
では、この辺で。
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