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今回は速めにSSを書き込む夢幻夢想です。

巷で大好評の(だから大不評の間違いじゃ…)「パロられるもの」の第3段です。
今回の講釈も「O・ヘンリ短編集」からで、
前作の「あとがきの類似品」で書いていたように「賢者の贈りもの」のパロディ、
「賢者の贈られるもの」をお届けします。

では、どうぞ。








パロられるもの3 賢者の贈られるもの






賢者の贈られるもの

配役
   夫 … カルラ
   妻 … トウカ
   店主 … チキナロ
   エキストラ … その他の方々
   ナレーション … サクヤ




賢者の贈られるもの-1-

 トウカは部屋でため息をついていました。その手には、彼女の財布の中身がありました。
1ドル87セント。それだけでした。しかも、そのうちの60セントは銅貨でした。
それさえも、乾物屋や八百屋や肉屋で買い物をする度に値切り、
そんなケチくささを避難する無言の声に顔から火の出るような思いをしながら、
1枚2枚と貯めた銅貨なのです。
その時のことをトウカは思い出します。

 肉屋で買い物をする時、肉屋の主人であるオボロがトウカに言います。
「何だ?毎回毎回、値切って。」
「す、すまない。だが、もう少し安くしてはもらえないだろうか?」
「まあ、いいけどな。それにしても、貧乏くさいというか、みすぼらしいと言うか。」
 ピクッ
「ジャガイモの皮むきも皮だけをきれいに剥いて、捨てるところをほとんどなくするんだろ?
 そのうち貧乏くささに磨きがかかって、残飯が全く出なくなったりしてな。」
 愉快そうにオボロはトウカを笑います。
ですが、周りの人達はなぜか2人から遠く離れて行きます。
それに気がつかず、オボロは更にトウカに喋りました。
「まさにエコロジーだよな。いっそのこと、俺達の残飯も出ないようにしてくれないか?」
 そこまでオボロが言った時、トウカは奇声をあげました。
「クケッ!!」
「あわびゅ!」
 トボロはトウカの幻の右をまともにくらいました。
「キッ…!!」
 トウカはオボロにウマ乗りになり、更に連打します。
オボロの顔面は、さながら鍛冶屋が鉄を鎚で打つごとく一発毎に変形していきます。
「キィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

 トウカは思い出した後、ふうっ、とため息をつき、もう一度財布の中身を数えなおします。
1ドル87セント。更にもう一度数えてもその金額は変わりません。

 ちなみに、あの後オボロはどうなったのか?というと、
顔はさながらササンテのように腫上がり、時々うなされているそうです。
 オボロの診察をした某エルルゥさん(薬師)は
「まるでアヴ・カムゥに往復で殴られたかのようでした。
 わたしも精進しないといけませんね。」
と、何やら燃えていました。
 あたしはエルルゥさんの論点がずれているような気がするのですけど、
でも、オボロさんの件は、話とは一切関係ないのでどうか忘れて下さい。
あたしも忘れます。

「明日はクリスマスというのに…。」
 トウカはそう呟くと、みすぼらしいベットに身を投げて、
わあわあ泣くより他、どうしようもありませんでした。
そうしているうちにトウカは、
人生は「むせび泣き」と「すすり泣き」と「微笑み」とで成り立っていて、
分けても「すすり泣く」ことが1番多いということがわかってきました。
 隣に住む某ハクオロ様(年齢不詳)から
「隣から時折聞こえてくるすすり泣く声。まるで呪詛のように聞こえる。」
と証言を得られる程にトウカは泣いていました。




賢者の贈られるもの-2-


 むせび泣いていたトウカは、次第にすすり泣きの段階に落ち着いてくると、
部屋の中を見渡しました。週8ドルの家具付きのアパートです。
 階下の玄関には手紙さえも入れられたことのない郵便受けと、
どんな人間が、例えアヴ・カムゥが押しても鳴りそうもないベルがありました。
またそこには、「カルラゥアツゥレイ」と書かれた名刺が貼り付けてありました。
 その名刺人物は凄腕の剣闘士で、週に30ドルも取っていた好況時には、
大好きなお酒を飲んでいてもびくともしなかったのですが、(本当でしょうか?)
収入が週20ドルに減った現在は、名刺の「カルラゥアツゥレイ」の1字1字がぼやけてしまい、
今は「カルラ」と読めるだけでした。

 カルラとはトウカの夫で、黒い髪をし、しなやかな中にも強靭さを兼ね添えた体を持ち、
言葉遣いが丁寧な、とても美しい女性で、トウカがこの上なく愛する男性でした。
 文法が激しく間違っていますが、気にしないで下さい。
 そのカルラですが、その彼女、いえ、彼? で、ですけど、その、えっと…
と、とにかく、そのカルラが帰宅して、2階の自分達の部屋にたどり着くと、
いつも「カルラ殿!」と呼ばれて、妻のトウカに、ぎゅっと抱きしめられるのでした。
ビジュアルを想像すると、ちょ、ちょっとアレなので、想像しなくても構いませんよ。

 トウカは泣き止んで頬を手で叩き、窓辺に立って、
灰色の裏庭の垣根をムックルに乗ったアルルゥがガチャタラを肩に乗せて走って行くのを、
ぼんやりと眺めました。
明日はクリスマスだというのに、カルラに贈るプレゼントを買うお金が、
たった1ドル87セントしかないのです。
何ヶ月もの間、1セントだって無駄使いをしないように倹約してきて、この始末です。
 実はカルラがお酒を買うために、
こっそりとトウカのお金をちょろまかしていたのは秘密ですけど。
とにかく、支出は予算を上回ってしまいました。支出というものは、そういうものなのです。
まあ、カルラさんと生活していれば当然のような気はしますが…。
 トウカはカルラに何か素晴らしいプレゼントを買おう、と計画して、
幸せな時間を過ごしてきたのです。
「何か素晴らしい、めったにないような、立派なものを。」
 1人呟き、トウカは窓から部屋の中へと視線を移しました。
その時、部屋に置いてあった1体の人形が視界に入りました。





賢者の贈られるもの-3-


 ところで、カルラ、トウカ夫妻には、とても大切にしているものがありました。
1つは、カルラの棍棒です。
鋼で出来た、とびきり頑丈でトゲまで付いた素敵なやつです。
もう1つは、トウカの人形です。
それは武人を象った、木彫りの古びた人形です。
古びたといっても大切にされ、磨かれ鈍い光沢をはなっていました。
トウカは幼い頃からずっとその人形と一緒にいて、ずっと一緒に遊び、
今でもどうしても手放せない一品でした。
流石に人形遊びをする歳ではありませんが、
人形をたまに綺麗にしてあげると、トウカはとても心が和みます。
トウカのその人形に向ける眼差しはとても優しく、
人形を綺麗にする時には愛子を撫でているようなそんな目をするのでした。
 その人形をある男性に壊された時には酷く怒り、深く悲しんだこともありました。
直った人形を取り戻すため速荷を追いかけて行き、取り戻した翌日から、
ウマよりも速く、キママゥよりも身軽な、禍日神ヲイデゲェの話を聞いたこともありました。

 トウカはその人形を手早く布に包み込みますが、一瞬、ちょっとためらいます。
じっと立っているうちに、擦り切れた赤い敷物の上に、1滴、2滴、涙が滴り落ちました。
 トウカは身支度をととのえると、両の目にまだ光るものをためたまま、外に出かけました。

「いらっしゃいませです。ハイ。」
 あらゆる品を取り扱う商店にトウカはいました。
その店主は目が細く、名をチキナロと言いました。
「すまぬが店主、人形を買ってはもらえぬか?」
 トウカは店主に言います。
「もちろんでございます。
 その人形を見せていただけますか、ハイ。」
 トウカは大切にしていた人形を店主に見せました。
「ふむ。荒削りな人形でありますね。
 ですが、丹誠を尽くして作られておりますです、ハイ。
 それに、随分と可愛がられていたようですね。
 これは素晴らしい品です、ハイ。
 20ドルでいかがでしょう?」
 慣れた手つきで人形を持ち上げながら店主は言いました。
「分かった。店主、早くお金を戴けぬか?」
 こうしてトウカは、20ドルと引換に大切な人形を手放すことになりました。
「確かに、お預かりいたしましたです、ハイ。」
 店主の手に待つ人形を一瞬だけ見ると、
トウカは迷いを断ち切るように店主に向かって言いました。
「店主、実は頼みがあるのだが…。」
 トウカは武器を注文したのです。
それは、「絶対に折れず、曲がらず、刃こぼれしない刀」でした。




賢者の贈られるもの-4-


 カルラが棍棒を使っているのは、
大抵の刀では、カルラの、鎖を引き千切る程の剛腕に耐えきれず、
ポキポキと小枝のように折れてしまうからでした。
ですから、トウカはカルラが使っても大丈夫な武器を注文したのでした。
「承知いたしましたです、ハイ。
 では、こちらなどいかがでしょうか。」
 注文が終わると、店主は手を叩いて合図しました。
すると、店の奥から5人もの屈強な男が何かを抱えて来ました。
「大将、これ、重いっスよ。」
「黙って運びなさい、クロウ。」
「ダァッハッハッハッ!この程度で弱音を吐いちゃいけねえぜ!」
「クカカカッ!その通り!」
「姉上様の武器のためならこの程度…。」
 ドンッ
 それは無反りの切刃造で、鋒(きっさき)のない、まるでナタのような形の刀でした。
驚くことに普通の刀を幾つも重ねたような身の厚さをしていました。
「これは、すごいな…。」
「ご注文の通りにしますと、その重量はかなりのものになりまして、
 持ち運びには屈強な男が5人がかりという代物になってしまい、
 更に切れ味はナマクラ同然でございますが…。
 カルラ様なら、小枝を振るように扱えるので、大丈夫でしょう、ハイ。」
「そうだな。では、家まで運んで頂けるか?」
「かしこまりましたです、ハイ。もちろん送料込みで20ドルです。
 ご利用、ありがとうございましたです、ハイ。」
 こうして、トウカはカルラへのプレゼントを手に入れることが出来たのでした。

 なお、これは誰へのプレゼントであり、
それがどんな人物なのかを店主がどうして知っているのか、
という突っ込みは却下させていただきます。
「大宇宙の意思」が教えた、とだけ言っておきましょう。

 トウカとカルラ、2人の住むアパートへ行く最中、
カルラの武器を運ぶ5人がえらく苦しそうにしていますが、
まあ、これも送料の内ですから気にしないで下さい。
ちなみに、その内の1人が
「姉上様のために、姉上様のために…。」
と、頑張っていました。
 仕事熱心で良い店員さんです。

 家に着くと、トウカはプレゼントの武器にリボンをつけて、
食事の支度をしました。
 運んで来た5人のうちの1人が、
「姉上様はどこだ?姉上様に会わせてくれ!」
 と、のたまわりましたが、本編でも会っていないのでその意見は却下しました。
「嫌だ!俺は姉上様に会うんだ!姉上様!姉上さ…。」
 5人の屈強な店員さん達は、仲良く(力ずくで)、一緒に(無理矢理)、
にこやか(泣きながら)、かつ朗らかに(引きずられて)、店に帰って行きました。
 これぞ商売人の鑑です。商売人はこうありたいものですね。




賢者の贈られるもの-5-


 食事の用意が出来、いつもカルラが入ってくるドアの近くのテーブルの端に
トウカは腰掛けます。
やがて、下の階段の1段目を踏むカルラの足音が聞こえ、そして、ドアが開きました。
「帰りましたわ。」
 カルラが帰って来ました。
「お帰り、カルラ殿。」
 トウカはテーブルから離れるとカルラの側に近寄り、部屋の中へ入れます。
カルラは部屋をきょろきょろと見渡し、トウカに言いました。
「あら?おかしいですわね。あなたの大切にしている人形はどこにいきましたの?」
 カルラの言葉に、トウカは叫ぶように言いました。
「カルラ殿!すまぬ!
 某は、カルラ殿にプレゼントもせずにクリスマスを過ごすことなど出来なかったのだ!
 それで、某の人形を売ってしまったのだ。
 いや、そんなことはどうでも良い!
 カルラ殿、クリスマスおめでとう、と申して下さい。
 そして、この日を楽しいものと致しましょう。
 カルラ殿はまだ、某がどんな素晴らしい贈り物を買ってきたのか、ご存じないであろう?」
 トウカの言葉に、カルラは言います。
「あなた、大切にしていた人形を売りましたのね。」
「いかにも。売りました。ですが、某はカルラ殿のために特別な武器を買ってきたのです。
 どうか、見ては頂けませんか。」
 そう言って、トウカはリボン付きの武器を置いてあるところまで、
カルラの背中を押しながら一緒に移動しました。
「これが、そうですの?」
 ヒョイ
 カルラは武器を掴むと、まるで小枝のように振り回します。
「ふふっ、気に入りましたわ。ありがとう。これ、貰いますわね。」
「は、はい。」
 トウカは感動しました。なぜならカルラが微笑んでくれたからです。
カルラは武器を元の場所に置くと、今度は懐に手を入れました。
「では、次は私の番ですわね。掌を上にして下さいな。」
「えっ?」
 驚くトウカに、カルラは懐から出したものをトウカの掌にのせました。
それは、リボンでラッピングされた布の包みでした。
「開けてみてくれます?」
 言われた通り、トウカは布を取り去りました。
「!こ、これ、は…。」
 トウカはとても驚きました。
それもそのはず、その包みの中身は、
何と、今日トウカが売ったはずの武人の人形だったからです。





賢者の贈られるもの-6-

「カ、カルラ殿、これは…。」
 驚きを隠せないトウカに、カルラはいたずらが成功した子供のように微笑みます。
「今日、偶然その人形を見つけましたの。
 たまたま入った店で、たまたまあなたのお人形を見つけたのですわ。
 本当に偶然ですのよ。」
「で、ですが、この人形の代金は…?」
「安心なさいな。
 私の、あの鋼で出来た、とびきり頑丈でトゲまで付いた素敵なやつを売っただけですわ。」
「カ、カルラ殿…。そ、某の為に…、大切な棍棒を…。」
「いえ。あれは本当に気に入らなかったから売っただけですわ。
 お酒を買ったその残りで、ついでにあのお人形を買っただけですのよ。」
 カルラはトウカに微笑みました。その微笑みは、本当に、心からの笑顔でした。
「カルラ…殿…。」
「さて、辛気臭いのはここまでですわ。
 じゃあ、夕食にしましょうか。
 酒菜酒菜酒菜〜♪」
「はっ!かしこまりました、カルラ殿!」
 2人の賢者の、最高のクリスマスの夜はこうして始まったのでした。



 その頃…。
「…チキナロ、一体どうしたのです。」
 5人がかりの武器を配達してきた店員1のベナウィが、店主のチキナロに話し掛けます。
「え、ええ、そ、それがですね、ハイ。
 いきなり棍棒を持った方がやって来て、
 『あなたが今買った人形、この棍棒と交換して下さいませんこと?』
 と言ってきまして、その棍棒を鑑定して、交換するにはお金が足りませんです、
 と言って返しましたら、呻(うな)りをあげて飛んで帰って来たのです、ハイ。」
 ベナウィがチキナロの後ろにある棚を見ると確かに、
鋼で出来た、とびきり頑丈でトゲまで付いた素敵な棍棒が深々と刺さっていました。
「?変ですね。あの棍棒の鋼、良質の良い鋼ではないのですか?
 あれなら20ドルはするのでは?」
「ハイ。そうなのですが、
 実はあの人形はとても人気が高く、わたくしめも欲しかった品だったのです。
 あの人形は20ドルではなく、安くても500ドルはする品だったのです。
 それなのに、20ドルなどと嘘を申してしまった上に、
 二束三文の、重すぎて使えなかった超重量級の斬馬刀を売ってしまったのです、ハイ。
 ですが、わたくしめもそのことをとても心苦しく思っておりましたので、
 この度のことは、とてもよい機会でした。
 やはり、商売は信用第一ですね。
 改めて、そのことを痛感いたしましたです、ハイ。」

 やはり、何事も信用第一、誠実さが大切ですね。




と、いうわけで今日はここまで。
続きは次回の講釈で〜。


♪おれは自由に〜生きるそんご〜くうだよ 気楽なもんだよ〜…♪










あとがきの類似品

夢幻夢想です。が…。
すみません。今回は不調でした。本当にお目汚しですね。
やはり、男性役に女性をあてるのは間違いだったでしょうか?
と、いうか、全体的に見て、無理があるような…。

なお、次回の予定は全くの未定です。

では、この辺で。






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