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 どうも、夢幻夢想です。

 皆さんの間で話題になっている(話にも上っていないのでは…)
「パロられるもの」の第7段です。
 今回の講釈はシャルル・ペローの「過ぎし昔の物語ならびに教訓」からで、
「眠れる森の美女」、又の名を「眠り姫」のパロディをお届けします。

そのパロディー題名ですが、「眠れる森の美女」と「眠り姫」の中間をとって、
原題名そのものもパロディーにして「眠れる森の美姫(びき)」とし、
題名を「眠れる森の美姫られるもの」とさせて頂きました。

なお、グリム童話での題名は「いばら姫」で、
キスでお姫様が目覚めるという結末は同じです(内容は多少異なります)。

 ちなみに「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴」も、
シャルル・ペローの「過ぎし昔の物語ならびに教訓」からの作品です。
「サンドリヨン」はフランス語で、英語にすると「シンデレラ」となります。

なお、最初に言っておきますが、ギャグがほとんどありません。
どうも不調で、後半を除いてギャグがほとんどありません。
前半はどうも、姫が眠ることになった説明だけですね。
それでも読む、という方だけ、お読み下さい。

では、どうぞ。

















パロられるもの7 眠れる森の美姫られるもの





眠れる森の美姫られるもの

配役
   王様 … テオロ
   お妃様 … ソポク
   姫 … ハクオロ
   仙女1 … アルルゥ
   仙女2 … ウルトリィ
   仙女3 … ユズハ
   仙女4 … カミュ
   仙女5 … カルラ
   仙女6 … トウカ
   仙女7 … クーヤ
   年とった仙女 … ディー
   紡鐘竿で糸を紡ぐ老婆 … トゥスクル
   王子様 … エルルゥ
   エキストラ … その他の方々
   ナレーション … サクヤ




眠れる森の美姫られるもの-1-


 昔々、あるところに、王様とお妃様がいました。
王様とお妃様は子供が1人もいないことを、それはそれは深く悲しんでいました。
 2人は揃って各地の温泉に行きましたし、神様に願をかけたり、
霊地にお参りになったり、いろいろなお勤めをしたり、
あらゆる手段をつくしたのですが、一向に効き目が現れませんでした。
 それでもようやく、王妃様がお身ごもりになり、お姫様がお生まれになりました。
「ダハハハハハッ!よくやったぞ、カァちゃん!」
「ああ。やっとあたし達にも子供が出来たんだねぇ。」
そこで、お誕生をお祝いする洗礼の式が、にぎにぎしく行われることになりました。
 国中の仙女達(みんなで7人いました)が、小さな姫様の名付け親になって、
それぞれお姫様に祝福の言葉を捧げることになりました。
それはこの時代の仙女達の習慣で、
こうしておけば、お姫様はきっと立派に成長するはずでした。

 洗礼の式がすむと、集まった人達は王様の宮殿の戻りましたが、
そこでは仙女達の為の大宴会が開かれていました。
仙女達のそれぞれのテーブルに、豪華な食事の支度がしてあって、
大きな黄金の箱の中には、ダイヤモンドやルビーの飾りのついた、
純金のスプーンやナイフやフォークが入っていたのです。
 ところが、みんなが食事の席についていると、1人の年とった仙女が入って来ました。
 その年とった仙女は白い髪と羽を持った、どことなく不思議な感じのする男性でした。
仙女なのに男性なのか、と言う突っ込みは却下させて頂きます。
 この年とった仙女は招待されていなかったのですが、
それというのが、もう50年も前から塔の中に閉じこもりきりで、
世間では、もう死んでしまったのか、それとも魔法にかかって消えてしまったのか、
もしくは、また眠りについたのかと思われていたのです。
「この私を呼ばないとはな…。」
 年とった仙女は、それで自分が馬鹿にされたと思って、
何か厭味なことを口の中でぶつぶつ呟きました。
 その側にいた1人の仙女は、この言葉を聞いて、
年とった仙女が何か悪いことを言ったら、自分が一番最後に進み出て、
できるだけ悪いことからお姫様を守るような言葉を贈ろうと思ったのです。

 そうこうするうちに、仙女達がお姫様に、お祝いの言葉を述べ始めました。
 1番若い、ガチャタラを肩に乗せ、ムックルに乗った仙女1は、
「お姫様、世界で一番キレイになる。」
と言いました。
 その次の流れる蜂蜜のような金色の髪をし、白い羽を持った仙女2は、
「お姫様は、まるで天使のように賢くなられるでしょう。」
と言いました。
 3番目の黒い髪で、どこか儚げな仙女3は、
「お姫様は…万事につけて、とてもおしとやかな方になられるでしょう…。」
と言いました。
 4番目の、仙女2の妹で銀色の髪で黒い羽を持つ仙女4は、
「お姫様は、とってもダンスがうまくなるよ。」
と言いました。
 5番目の、しなやかな中にも力強さと美しさをあわせ持つ仙女5は、
「お姫様は、まるで鶯のように美しく歌をお歌いになりますわ。」
と言いました。
 6番目の、燐とした雰囲気のエヴェンクルガの仙女6は、
「お姫様は、どんな楽器でも申し分なくお弾きになるでしょう。」
と言いました。




眠れる森の美姫られるもの-2-


 さて、年とった仙女の番になると、怨みのために頭を振りながら、
「お姫様は、糸繰り車の紡鐘に手を突き刺されて死ぬことになるだろう。」
と言うのでありました。
 この恐ろしいお祝いの言葉に、そこにいる者はすべて震え上がり、
さめざめと涙を流さない者はいませんでした。
 と、その時、白い髪をし、ウサギのような耳をたらした仙女7が、
つい立ての後ろから出てきて、大きな声で次のように言いました。
「安心するがよい、王にお妃。姫は死にはせぬ。
確かに、余の力では、ディーの言ったことをすべて帳消しはできぬ。
姫は紡鐘で手を突き刺すことになるであろう。
だが、死ぬのではなく、ただ100年の間、深い深い眠りに落ちるだけである。
そうして100年が過ぎれば、1人の王子がやって来て、姫を眠りから覚ますであろう。」

 王様は、年とった仙人の予言した不幸を何とかして避けるために、すぐにおふれを出して、
「誰1人として紡鐘を用いて糸を紡いだり、家に紡鐘を置いたりすることは許さねえぞ!
もし、これに背いたら、きっついお灸をすえてやるからな!」
とお告げになりました。

 15年か16年が過ぎると、お姫様は仙女達の祝福の言葉通りになりました。
お姫様は角の生えたような白い仮面をつけていましたが、
どことなく人を惹きつけて止まない魅力を持ち、その髪は黒々としたキューティクルヘアで、
とても賢く、あらゆることをそつなくこなせる人物になっていました。
「ちょっと待て!何で私が女装して、姫をやらなくてはならないんだ?」
 なぜなら仙女達の祝福の言葉の条件を満たす人物はハクオロ様しかいませんから。
「だからといって、なぜ女装させる?それにキューティクルヘアって何だ?」
 いいじゃないですか。とってもお似合いですよ。
キューティクルヘアのことですけど、
ハクオロ様がエルルゥさんに髪の手入れをしてもらった時の言葉を参考にしました。
「ううっ…。みんなに笑われるのが目に見えるようだ…。」
 そんなことはありませんよ。
衣装あわせの時に皆さん、ハクオロ様のその姿をこっそり見ていたんですけど、
見ていた皆さんはうっとりと、恍惚とした表情をしていましたよ。
 もちろん…このあたしも…そうですけど…。
「サ、サクヤ?」
 ああ…ハクオロ様…いえ、ハクオロ姫様と呼ばせて頂きます…。
どうか、このあたしに、そのサラサラの髪の手入れをさせては頂けませんか…。
はあ…ハクオロ姫様ぁ…。
「ちょ、ちょっと待て、サクヤ!正気に戻れ!」
 どうか、一緒に写真を撮って頂けませんか…。1枚だけでも構いませんから…。
「わ、分かった!分かったから、ナレーションを続けろ!
 これが終わったらいくらでも一緒に写真を撮るから。」
 ハイ…。絶対に約束ですからね…ハクオロ姫様…。
「あ、ああ。や、約束だからな…。(はやまったかな…。)」




眠れる森の美姫られるもの-3-


 約束も取り付けたところで、話を続けます。
 王様も王妃様も別荘へ出かけ、お姫様が1人になったある日のことです。
若いお姫様は退屈だったのでお城の中を駆け回っているうち、
部屋から部屋へと階段を上って、とうとうお城の中で一番高い、
塔の上にまで来てしまったことがありました。
 塔の上には小さな屋根裏部屋があって、
そこには老婆が1人、紡鐘竿で糸を紡いでおりました。
 この老婆は、紡鐘で糸を紡いではいけないという、
王様のおふれが出ていることを耳にしていなかったのです。
「トゥスクルさん、そこで何をしているのですか?」
とハクオロ姫様が聞きました。
「糸を紡いでおるのじゃよ。美しいお嬢さん。」
 糸を紡いでいる老婆が、お姫様であるとは知らずに、そう答えました。
「おお、何と美しいのだろう!」
 お姫様は感動して言いました。
「どうすればいいのですか。ちょっと貸して頂けませんか?私にも出来るでしょうか?」
 ハクオロ姫様は、とても聡明で活発な方でしたけれども、少しばかりそそっかしく、
それに年とった仙女の予言であらかじめ決められていたことでしたから、
紡鐘を手にするや否や、たちまち手を突き刺されて、そのまま気を失って倒れてしまいました。
「こりゃまた、えらく豪快に突き刺したモンじゃの…。」
 おばあさんは優秀な薬師でしたので、
えらく勢いよく、脈打つように指から真っ赤な血を出すハクオロ姫様を診察します。
ですが、血を止めた後、ハクオロ姫様の顔に水をかけたり、手を叩いたり、
コルセットの紐を緩めたり(いいなあ、トゥスクル様…あたしもやりたいです…)、
遂には方薬した紫琥珀(ムィ・コゥーハ)の粉を飲ませたりもしましたが、
どうしてもハクオロ姫様の息を吹き返させることは出来ませんでした。
ちなみに、単に出血多量なんじゃないか、という意見は却下させて頂きます。

「アンちゃん!」
 やがて王様が、騒ぎを聞きつけて上がってきて、年おいた仙女の予言を思い出しました。
そして、年老いた仙女が予言したからには、こうなるのも仕方がなかったのだと思い、
ハクオロ姫様を宮殿の一番立派な部屋に連れて行かせ、
金糸と銀糸で刺繍をしたベッドの上に、ハクオロ姫様を寝かせました。
 ハクオロ姫様は、まるで天使のように美しいお顔でした。
気を失ってはおりましたけれども、顔色は今までと変わらず生き生きしていて、
頬は薔薇色、それに唇は珊瑚のようだったので、
死んだのではないということが分かるのでした。
「しっかし、アンちゃん、本当にきれいだな…。
こいつは、ひょっとするとカァちゃんより…ぐはぁっ!」
「何言ってるんだい、この宿六は!
 …と、言いたいけど、こいつは確かに、大したもんだねぇ。」
「な、なら殴らねぇでもらいたかったんだけどよ…。」

 ひと騒動があった後、王様は、
「いいか?目が覚める時が来るまで、アンちゃんをそっと眠らせとくんだぞ!」
と、お命じになりました。




眠れる森の美姫られるもの-4-

 ハクオロ姫様を100年の間眠らせることにして
ハクオロ姫様の生命を救った善良な仙女7は、お姫様の身に不幸な事件が起こった時、
たまたま、七里靴(ひとまたぎで、7里も歩ける靴)を履いた小人の注進によって、
すぐさま事件を知らされました。
「大変だ!兄者が、倒れたんだ!」
「「そうなんです。どうか、すぐに来て下さい!」」
「うむ。承知した。では、行くぞ。」
 仙女7は直ちに出発すると純白のアヴ・カムゥに乗り、凄まじい速さで宮殿に到着しました。
 なお、原作で仙女が乗ったのは、ドラゴンに引かれた火の四輪車です。

 仙女7には先の先まで見通す力がありましたから、やがてお姫様が目を覚ました時、
古いお城の中で1人ぼっちだったら、どんなに困るだろうかと考えました。
 そこで、仙女7は次のような処置を講じたのです。

 仙女7は、大きなお友達が喜びそうな魔法の杖で、
このお城の中の全てのもの(王様と王妃様だけは別です)に触りました。
大臣にも、護衛にも、家政婦達にも、侍女達にも、女中達にも、貴族達にも、役人達にも、
給仕頭にも、料理人にも、皿洗いにも、走り使いの少年にも、番兵にも、門番にも、
小姓にも、従僕にも、次々に触りました。
 それからまた、馬小屋にいる馬にも、馬丁にも、鶏小屋の番犬にも、
ハクオロ姫様のベッドの側にいる、ハクオロ姫様の愛用しているミコト抱き枕(お手製)にも、
残り香のするハクオロ姫様のベットに寝転がりたい誘惑に打ち勝ち、魔法の杖で触りました。

 仙女が杖で触ると、彼らは全て、たちまち眠りに落ちましたが、
それはハクオロ姫様が目を覚ました時に、彼らも一緒に目を覚まして、
すぐハクオロ姫様のために役に立つことができるように、という配慮からなのでした。
 シャコやキジをいっぱい突き刺した焼き串まで火にかかったままで、
その火と一緒に眠り込んでしまったのです。
 こうしたことは全て、一瞬のうちに行われました。
仙女が仕事をするのに手間はかかりません。
 さて、王様と王妃様は、目を覚まさない可愛いハクオロ姫様の姿を充分に堪能すると、
お城から出て行ってみんなに言いました。
「これから後、この城には絶対に近付くんじゃねえぞ!」
 みんなに、このようなおふれを出したのです。
しかし、こんなおふれを出す必要はなかったのです。
というのは、おびただしい数のアヴ・カムゥがやって来て、
あっという間にお城の囲いの周りに待機したからです。

 なお、原作では大木や棘のあるいばら等が互いに絡まりあって、
お城の囲いの周りにうっそうとしげりました。

 獣でも人間でも、そこを通り抜けるとこは不可能になりました。
そういうわけで、お城の外からは、もう塔のてっぺんしか見えなくなり、
それも、よほど遠くまで行かなければ見えないほどになりました。
 人々は、これも仙女7が得意の術(権力)を使って、
お姫様が眠っている間、物見高い連中を近寄らせないようにしたからに違いない、
と噂しあいました。





眠れる森の美姫られるもの-5-


 こうして100年経つと、
その頃は、眠り姫とは別の家の、別の王様が国を治めていましたが、その王様の王子様、
黒く長い髪をしたエルルゥ王子がこの地方に狩りに来て、
「あの大勢のアヴ・カムゥの中央に見える塔は何ですか?」
とみんなに尋ねました。
 聞かれた者は、それぞれ自分の耳にした噂話を語りました。
 ある者は、
「あそこは妖精の出没する古い城だって話ですぜ、姐さん。」
と答えました。
 また別の者は、
「あそこは国中の妖術使い達が夜中に集まる場所だ。クカカカカッ!」
と答えました。
 1番普通の意見では、
「あそこには人食い鬼が住んでいて、捕まえた子供を皆あそこへ連れて行き、
 気が向いた時に子供を食べるのだそうですが、
 あのアヴ・カムゥの大軍を通り抜けられるのは人食い鬼だけなので、
 誰も人食い鬼を追って行くことは出来ないそうです。
 まあ、あくまで噂ですが、用心するに越したことはありません。」
ということでした。

 王子様が、その話を信用してよいかどうか迷っていると、
1人のばっちそうな羽を持ち、ひげをはやした、ムントという年とった百姓が進み出て、
こんなことを言い出しました。
「王子様、私が50年以上も前に、父親から聞いた話によりますと、
あのお城には、この世で1番美しいお姫様がおられまして、100年間眠り続けた末に、
ある王子様に眠りを覚まされまして、
その王子様と結婚なさることになっているのだそうでございます。」
 この話を聞くと、エルルゥ王子は身の内が熱くなってくるのを覚えました。
エルルゥ王子は、ためらうことなく、
「わたしがこの素晴らしい冒険に決着をつけます!
 そして、ハクオロさんと…うふふふふふっ…。」
と思ったのです。
 恋と名誉心に励まされて、すぐにも真相を究明しようと決心したのでした。
どちらかというと恋に比重がかかっていると思いますが…。

 エルルゥ王子がアヴ・カムゥの大軍へと向って歩いて行き、
そこを通り抜けようとした時、数体のアヴ・カムゥが道を塞ぎました。
「?変ね?じゃあ、こっちからなら…。」
 別のところから行こうとしましたが、やはりアヴ・カムゥに道を塞がれてしまいます。
「ど、どういう事です?確か、わたしが進めばひとりでに道を開くんじゃなかったの?」
 エルルゥ王子がアヴ・カムゥの大軍にそう言った時、
アヴ・カムゥの大軍の中から赤いアヴ・カムゥが出てきて、エルルゥ王子の前に立ちます。
「ちょっと!コレ、どういうことなんですか?
 わたしは通れるんじゃなかったんですか?」
 エルルゥ王子の言葉に、その赤いアヴ・カムゥが嫌味な声で答えます。
『どういうこと?ここを通れるだって?フフフ、アハハハハハ!
 いいかい?この件に関してはね、すべて僕に任せられているんだ。
 僕の言葉は聖上の言葉なんだよ。わかるかい?僕はすべてを任されたんだ。
 だから、何をしようと僕の勝手だ。』
 あくまで自分のことしか考えていないのが分かる、嫌味な声でした。




眠れる森の美姫られるもの-6-

 赤いアヴ・カムゥの答えに、エルルゥ王子は困った顔をして言います。
「…つまり、仙女7さんの言うことなんて知ったことではない、と。」
『何だ、意外と頭がいいんだねえ。
 もっとも、頭に栄養がまわっていても、胸には栄養がいってないみたいだけど。』
 その言葉にエルルゥ王子のこめかみが引きつります。
「……今、何て言いました………?」
『何だ?耳にまで栄養がいってないのかい?
 そのまな板胸には栄養がいってないって言ったのさ。ヒャハハハハッ!』

 ぷちん

 何かが切れたような音がして、その瞬間、その辺りの空気が変わりました。
『………エッ?』
「そうですか…よく聞こえませんでした…。もう1回、言ってくれますか…?」
 ザッ
 エルルゥ王子が1歩踏み出しました。それだけで地面が揺れている様に感じました。
『ヒッ…!』
 エルルゥの迫力に、赤いアヴ・カムゥは1歩下がります。
この時、この場に居たもの達は共通のものを感じていました。
それは原初の記憶とも言うべきもの、つまり「恐怖」でした。
逃げなければと思ってはいるのですが、体がいうことをききません。
 そんな気持ちに反して、恐怖はゆっくりと、しかし確実にやって来ています。
「もう1度、聞かせてくれませんか…?」
 赤いアヴ・カムゥは震える体を何とか動かし、逃げようとしました。
でも、逃げようとしたその先には、
エルルゥ王子が人間業とは思えない速度で回り込んでいました。
『ヒ…ヒィィィィィィィィィィィィィ!!来るな、来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 い、嫌だ!し、死にたくないーーーーーーーーーっ!
 た、たすけてぇ!ママ、ママァーーーーーー!!!』
 体から出るありとあらゆるモノを出しながら、命乞いをする赤いアヴ・カムゥ。
ですが、そんな叫びなど無視して、エルルゥ王子は近付き…。


  大惨劇



 この光景の一部始終を見ていた蒼いアヴ・カムゥは、
『…この世のどんなものよりも恐ろしいものを見た…。
 ……自分は、あの光景を……生涯忘れることは出来ぬだろう……。』
と、言葉少なに語ったそうです。

 もはや元が何だかさっぱり分からないガラクタの山を抜けて、
エルルゥ王子がお城へと歩き始めました。
すると、アヴ・カムゥはひとりでに道を開いて、エルルゥ王子を通してくれるのでした。

 中国に「殺一?百(シャーイージンパイ)」という言葉があります。
1人を無残に殺して、100人の敵に警告するという意味です。
それと同じ効果をもたらしたわけですね。

 エルルゥ王子は難なくアヴ・カムゥの大群を通過して、どんどん歩いて行きました。
分け入る広い並木道のはずれに、やがてお城が見え出しました。
そのお城に向って歩いて行くと、驚いたことに、
エルルゥ王子が通るとアヴ・カムゥが最敬礼をした後、
通ってきた道をふさいでしまうので、誰1人として、
エルルゥ王子の後をついていくことができなかったのです。
 若くて恋情(と怒り)に燃えているエルルゥ王子は、いつもこんな風に勇敢なものです。




眠れる森の美姫られるもの-7-


 やがてお城の前の広い庭に入り、エルルゥ王子は大理石を敷き詰めた広い中庭を通り、
階段を上って、番兵達の部屋に入りました。
番兵たちはきちんと整列し、火縄銃を肩にかついだまま、ぐうぐういびきをかいていました。
王子様は、更にたくさんの部屋を通り抜けましたが、そこでも貴族や貴婦人達が、
立ったまま、あるいは腰掛けてみんなぐっすり眠っていました。

 それからエルルゥ王子は、黄金色に輝く部屋に入って行きました。
その部屋には、四方のとばりのすっかり開かれたベッドがありました。
「あそこにハクオロさんがいるんですね!」
 エルルゥは尻尾を千切れんばかりに振って、ベットに向かいます。
そのベッドの上を見て、エルルゥは恍惚の表情をします。
 そこには、現在のエルルゥから見るとおばあさんの着ているような、
とても古い服を着たハクオロ姫様が寝ていました。
ですが、そんな旧式な服装でも、ハクオロ姫様にはやっぱり美しかったのです。
「ああ…ハクオロさん…何てきれいなんでしょう…。
 今、わたしが、そ、その、く、口付けをして、目覚めさせますからね♪」
 飛び上がらんばかりにスキップしてハクオロ姫様のかたわらまで来たエルルゥ王子でしたが、
そこまで来ると、奇妙なことに気付きました。
ハクオロ姫様が寝ている脇の方が、不自然に膨らんでいたのです。
「な、何?これ?」
 エルルゥ王子が掛け布団をはぐると、何とそこには仙女7が添い寝していました。
「ハクオロ…そなたはあたたかいな…。
 余は…このぬくもりを手放したくはない…。
 そうだ!こうなったら、余がそなたに口付けして目覚めさせれば…。」
 仙女7はそう言うと、ハクオロ姫様に顔を近付けて行きます。
「ちょ、ちょっと待って下さい!その役目は…。」
 あまりのことにエルルゥが大きな声を出し、言おうとした時です。
「「「「「「待ったー!」」」」」」
 いきなり部屋のドアが開き、6人の仙女達が入ってきました。
「お姉ちゃん、1人締め、よくない。」
「そうですわ。それに、あるじ様を目覚めさせるのは私ですわ。」
「な、何を言っているんですか!これは、王子であるわたしの役目なんですっ!」
「違うよ、エル姉様!それはカミュの役目なの!」
「こうなったら、決着をつけなくてはならないようですね。」
「あら、ウルト。それはいい考えですわね。」
『よかろう。余のアヴ・カムゥの本当の力、見せてやろう。』
「ハクオロさんは、渡しません!」
 7人の仙女とエルルゥ王子は、
ハクオロ姫様を目覚めさせる権利をめぐって戦闘態勢に入りました。
常人なら裸足で逃げ出す程のあまりにも激しい気迫が部屋を満たします。


 激しい戦いが繰り広げられる中、ハクオロ姫様は夢の中で思っていました。

( 誰でもいいから、早く目覚めさせてくれ…。
  …というより、この中で寝ていたら永遠に眠ることになるかもしれんな…。)

 じゃあ、あたしがハクオロ姫様を目覚めさせますね。
ちゅっ♪
「あっ…。」
「「「「「「「「あっーーーーーーーーーーーーっ!(女性群の悲鳴)」」」」」」」」

ふふっ♪

と、いうわけで今日はここまで♪
続きは次回の講釈で〜♪


♪おれは自由に〜生きるそんご〜くうだよ 気楽なもんだよ〜…♪













あとがきの類似品

夢幻夢想です。
今回の本当の主役は誰でしょう♪
と、いうお話になりました。

何だか今回はギャグが少なかったですね。
ギャグは一部に集約されてしまったような…(汗)。
今回、不調ですね。

なお、原作ではキスで目覚めた後にもまだ騒動が起こるのですが、省略させて頂きました。

次回はやっぱり未定です。


では、この辺で。





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