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 特別版を投稿させて頂く夢幻夢想です。

 皆さんの間で話題になっている(話にも上っていないのでは…)
「パロられるもの」の第1段「シンデレラれるもの」の別バージョンをお届けします。

 今回のお話の原作は、グリム童話から「灰かぶり」で、
そのパロディー「灰かぶられるもの」です。

この「灰かぶり」は、
シャルル・ペローの「過ぎし昔の物語ならびに教訓」に収録されている、
「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴」のシンデレラとは、
また違った話となります。
パロられるもの1「シンデレラれるもの」と読み比べてみるのも面白いかも知れません。

なお、ギャグがあまりありません。
はっきり言って、ギャグがほとんどありません。

それでも読む、という方だけお読み下さい。


では、どうぞ。
















パロられるもの1.1 灰かぶられるもの




灰かぶられるもの



配役
   王子様・シンデレラの父親(二役)… ハクオロ
   シンデレラ … ユズハ
   シンデレラのおばあさん … トゥスクル
   継母 … カルラ
   継姉1 … インカラ
   継姉2 … ササンテ
   白い鳩1 … オボロ
   白い鳩2ズ … ドリィ&グラァ
   青と銀の服を着た召使い … クロウ
   赤と金の服を着た召使い達 … ベナウィ
   エキストラ … 残りの方々
   ナレーション … サクヤ




灰かぶられるもの -1-


 昔、1人のお金持ちの男がいました。
男は長いこと、おばあさんと幸せに暮らしていました。
男は先立たれた妻との間に、娘が1人ありました。
やがて、おばあさんは病気になりました。
そして、死ぬほど病気が重くなると、おばあさんは娘を呼んで言いました。
「ワシのかわいい子、ワシはエルルゥを置いていかなければならぬ。
 じゃが、天国に行ったら、エルルゥのことを上から見ているよ。
 ワシのお墓の上に、小さな木を植えて、
 そして、何か欲しいものがあれば、その木を揺するがええ。
 エルルゥに困ったことがあれば、助けを送るとしよう。
 じゃから、ええ子にしておるんじゃよ…。」
 そう話すと、おばあさんは目を閉じ、死んでしまいました。
子供は泣いて、小さな木を1本、お墓の上に植えました。
 その木に水をやるのに水を運ぶ必要はありませんでした。
なぜなら、子供の涙で十分でしたから。

 雪がおばあさんのお墓に白いハンカチをかぶせ、太陽が再びそれをはがし、
お墓に植えた木が2度目に緑になった時、男は子供のお母さんとは別の女を妻にしました。
けれども継母には、最初の夫との間に娘が2人ありました。
継娘2人は顔は…やめておきましょう。心も高慢でうぬぼれが強く意地悪でした。
 結婚式がとり行われ、この3人が家にやってくると、
子供にとってつらい時が始まりました。
「ろくでもない役立たずが、居間で何をしてらっしゃいますの?」
と、継母は言いました。
「メシが食いたいにゃも。はやく作るにゃも。」
「とっとと台所へ行くにゃも。パンが食べたければ、まずその分働くにゃも。
 朕の女中になればいいにゃも。」
 それから継姉さん達は娘の洋服を取り上げ、古い灰色の上着を着せました。
「おみゃあには、これがお似合いにゃも。」
 と言って、2人の継姉さん達はその子をあざ笑い、台所へ連れて行きました。
そこでかわいそうな子供は骨の折れる仕事をしなければなりませんでした。
なお、ユズハの目は見えなかったのでは?という突っ込みは却下させて頂きます。

 日の出前に起き、水を運び、火を起こし、食事の支度をし、洗濯をしなければなりません。
その上継姉さん達は、ありとあらゆる心痛を与えたり、
あざけったり、灰の中にえんどう豆やレンズ豆を開けたりしたので、
子供は1日中座り込んで、豆を選り分けなければなりませんでした。
疲れても、晩、ベッドに入ることはできず、
暖炉の脇の灰の中に横にならなければなりませんでした。
 そして、そうやっていつも灰とほこりの中を這いずりまわり、
薄汚く見えたので、灰かぶりと呼ばれるようになりました。




灰かぶられるもの -2-


 ある時のこと、王様が舞踏会を催しになり、
舞踏会はきらびやかに3日間続くことになりました。
そして、息子の王子がお妃を選ぶことになっていました。
その舞踏会に、2人の高慢な姉さん達も招かれました。
「灰かぶり。」
 継姉達は呼びつけました。
「髪を梳かすにゃも。靴にブラシをするにゃも。靴ひもを結ぶにゃも。
 朕達は舞踏会の王子様のところに行くにゃも。」
 灰かぶりは一生懸命に、できるだけきれいに姉さん達をおめかしさせました。
継姉1のヅラの手入れもさせられました。
 支度がすむと、継姉1は聞きました。
「灰かぶりも一緒に舞踏会に行きたいにゃもか?」
「ええ…、それはもう…。ですが…、どうやって行けばいいのでしょうか…。
 ユズハには…ドレスがありませんから…。」
「ドレスがなくて良かったにゃも。」
 その会話を聞いていた継姉2が言いました。
「おみゃあが舞踏会に行くと、ワシらが恥をかくにゃも。
 おみゃあがワシらの妹だなどと、他の人達に聞かれでもするとにゃも。
 おみゃあは台所にいるにゃも。
 ここに鉢いっぱいのレンズ豆があるにゃも。
 ワシらが帰って来るまでに、これを選り分けておくにゃも。
 悪いのが混ざらないように、よく気をつけるにゃもよ。
 さもないと痛い目にあうにゃも。」
 継母はそう言うと、姉さん達を送り出しました。灰かぶりは、立って2人を見送りました。
 そして、何も見えなくなると悲しい気持ちで台所に行き、
かまどの上にレンズ豆をあけました。豆は大きな山になりました。
「……ふう……。」
 と、灰かぶりはため息をつきました。
「これでは…真夜中まで選り分けていなければなりません…。眠ることもできませんし…。
まだまだいじめられるのでしょうか…。このことを…お母様がご存知でしたら…。」
灰かぶりが釜戸の前の灰の中にひざまずき、豆を選り分けようとした時、
白い鳩が2羽+1、窓から飛び込んで来て、釜戸の上の豆の横に降り立ちました。
鳩は小さな頭を上下に振りながら言いました。
「…着ぐるみ着て、俺達何やってるんだろうな…まあ、それはともかく、
 灰かぶり、レンズ豆を選り分けるのを手伝おうか?」
「「僕達も若様と一緒に手伝います。」」
「あ…どうか、よろしくお願いします、オボロ兄様、ドリィさん、グラァさん。」
 灰かぶりは答えました。

「悪い豆は腹の中へ。良い豆は鍋の中へ、っと。」
 そうして、こつ、こつ!と鳩達はついばみ、
(手づかみで食べていますけど、そういうことにしておいて下さい。)
悪い豆は食べてしまい、良い豆だけ残しました。

 そして15分後には、レンズ豆はすっかりきれいに選り分けられて、
1つだって悪いのは混じっていませんでした。
灰かぶりはその豆をざっと鍋に入れることができました。
ところが、それから鳩達は言いました。
「灰かぶり、姉さん達が兄者と踊るところが見たいなら、鳩舎に上がればいい。」
灰かぶりは、鳩達の後について行き、はしごの最後の段まで登りました。
するとお城の大広間が見え、姉さん達が王子と踊っているのが見えました。
そして何千ものろうそくがきらきら光り輝いていました。
灰かぶりはじっくり眺めると、鳩舎から降りました。
気持ちが沈んで、灰の中に横になると眠ってしまいました。




灰かぶられるもの -3-


 次の朝、2人の姉さん達は台所に入って来ると、
灰かぶりがレンズ豆をすっかりきれいに選り分けてあるのを見て、腹を立てました。
姉さん達は、灰かぶりを叱り飛ばしたかったのです。
そして、そうすることが出来ないので、継姉達は舞踏会の話を始めました。
「灰かぶり、とても楽しかったにゃも。
 踊りの時、王子様、世界一美しい王子様は、朕達をリードしたにゃも。
 朕達のどちらかがお妃になるにゃも。」
「それは…絶対にありえ…いえ…、何でも…。」
 灰かぶりは思わず本心を言いそうになりました。
「それは思わず言うであろう?」
 あたしもそう思います。
 そして、灰かぶりは別のことを言いました。
「ユズハは…ろうそくが輝いているのを見ました…。
 とても…華やかだったのでしょうね…。」
 その言葉に継姉1が反応しました。
「何なも!おみゃ〜、どうやって見たにゃも?」
「ユズハは…鳩舎の上に立っていましたから…。」
 これを聞くと、継姉1はすぐに鳩舎を取り壊させました。

 そして灰かぶりはまた姉さん達の髪を梳かし、
おめかしさせなければならなくなりました。
すると、継姉2が言いました。
「灰かぶり、暗くなったら城に来て、せめて窓からでも見ればいいにゃも。」
「やめとくにゃも。」
 継姉1が言いました。
「そんなことをさせると、灰かぶりが怠け者になるにゃも。
 ここに袋いっぱいのそら豆があるにゃも。
 灰かぶり、これを良い豆と悪い豆に選り分けるにゃも。
 明日になってもきれいに選り分けていなかったら、
 この豆を灰の中にぶちまけてやるにゃも。
 全部選り分けるまでは、何も食べさせてやらんにゃも。」

 灰かぶりはしょんぼりと釜戸の上に座り、そら豆を開けました。
そこへ、またあの鳩達が飛び込んで来る、親しげに言いました。
「灰かぶり、そら豆を選り分けようか?」
「ハイ…どうか…よろしくお願いします…。」
「悪い豆は腹の中へ、良い豆は鍋の中へ、っと。」
 こつ、こつ!こつ、こつ!
まるで、手が12もあるような速さです。
ただ単に食い意地がはっているだけという説もありますが。
 全部片付けてしまうと、鳩達は言いました。
「「灰かぶり様、あなたも舞踏会に行って踊りたいですか?」」
 灰かぶりは悲しそうに答えました。
「このような服では…、舞踏会なんて行けませんから…。」
「なら、トゥスクル様の墓の木のところへ行って、
 木を揺すって、素敵なドレスをお願いしてみればいい。
 だが、真夜中までには戻ってこないといけないぞ。」

 そこで灰かぶりは表へ出て、小さな木を揺すり、言いました。
「小さな木さん…、ゆらゆら…、ゆさゆさ…、体を揺すって…、
 素敵なドレスを…落として下さい…。」
 灰かぶりがそう言い終えたか終えないうちに、
きらびやかな銀のドレスが灰かぶりの前にありました。
 それに、真珠、銀の飾り縫いのついた絹の靴下、銀の靴、
その他に必要なものが何もかもありました。
 灰かぶりは、それをみんな家に持って帰りました。
そして体を洗い、ドレスを着ると、灰かぶりは露に洗われたバラのように美しくなりました。
更に言うなら、その容姿はまるでミコトのようになりました。
 灰かぶりが玄関の前に出てみると、羽飾りをつけた黒馬6頭立ての馬車があり、
青と銀の服を着た召使いもいて、灰かぶりの手をとり、馬車に乗せました。
「じゃあ、行きますぜ!」
 そして駆け足で王様とお城へと向いました。




灰かぶられるもの -4-

 ハクオロ王子は、馬車が門の前に止まるのを見て、
「どこか儚げな、消えてしまいそうな娘が…では、なく、
 知らない姫がやって来た、だな。うむ。」
 と思いました。
そこで王子は自ら階段を降りて、灰かぶりを馬車から降ろし、
大広間へと連れて行きました。
そして何千ものろうそくの明かりに照らされると、
灰かぶりは誰もが驚くほど美しくなりました。
継姉さんたちもそこにいて、自分達よりも美しい者がいることに腹を立てました。
そんなことで腹を立てていたら、四六時中腹をたてなくてはならないでしょうね。
けれどもそれが、家で灰にまみれている灰かぶりだとは決して思いませんでした。
けれども王子は灰かぶりと踊り、お姫様にふさわしくもてなしました。
また、王子は心の中で思いました。
「花嫁を選ぶなら、この人以外には考えられないな。」
 長い長い間、灰と悲しみの中にいた灰かぶりは、今や華やかさと喜びの中にいました。
けれども真夜中になると、時計が12時を打つ前に、灰かぶりは立ち上がり、
お辞儀をして、どんなに王子が頼んでも、
「すみません…。もう…これ以上は…いられないのです…。」
 と言います。
 そこで王子は、灰かぶりを下まで送りました。
下では馬車が待っていて、やって来た時と同じように華やかに走り去りました。

 灰かぶりは家に着くと、再びおばあさんのお墓の木のところに行きました。
「小さな木さん…、ゆらゆら…、ゆさゆさ…、体を揺すって…、
 ドレスを…もとに戻して下さい…。」
 すると木は、再びドレスを取り上げました。灰かぶりは、もとの灰の服を着ました。
そして家に戻ると、顔をほこりだらけにして、灰の中に横になりました。

 次の朝、姉さん達がやってきましたが、機嫌が悪い様子で口もききませんでした。
灰かぶりが言いました。
「姉様達…、昨夜は楽しかったのでしょうね…。」
「とんでもないにゃも!
 お姫様が1人やって来て、王子様はそのお姫様とばかり踊っていたにゃも。
 でも誰もそのお姫様を知らなくて、どこから来たのか、誰にも分からないにゃも。」
「その方…ひょっとして…、黒馬6頭立ての…立派な馬車に乗ってらした方ですか…?」
 と、灰かぶりは聞きました。
「おみゃ〜、どうして知ってるにゃも?」
「戸口に立っていたら…、その方が通り過ぎて行くのが見えたんです…。」
 そう言うと、継姉1が怖い顔で灰かぶりを見ました。
「これからは、仕事から離れるんじゃないにゃも。」

 灰かぶりは、3度目も2人の姉さん達におめかしをさせなければなりませんでした。
そしてご褒美に、姉さん達はえんどう豆を一鉢、灰かぶりにくれました。
それをきれいに選り分けろ、と言うのです。
「ずうずうしく仕事から離れるんじゃないにゃもよ!」
と、継姉1は後ろから怒鳴りさえしました。
 鳩達さえ来てくれたら、と灰かぶりは思いました。
そして心臓が少しどきどきしました。
すると鳩達が前の晩のようにやってきて、言いました。
「「灰かぶり様、えんどう豆を選り分けましょうか?」
「ハイ…どうか…、よろしくお願いします…。」
「「悪いお豆はおなかの中へ、良いお豆はお鍋の中へ。」」
 鳩達はまた、悪いお豆をついばんでよけ、間もなく片付けてしまいました。
鳩達は言いました。
「灰かぶり、小さな木を揺すってみればいい。
 もっときれいなドレスを落としてくれるはずだ。
 舞踏会に行ってくればいい。でも真夜中までには帰るように気をつけるんだぞ。」
 灰かぶりは小さな木のところへ行きました。
「小さな木さん…、ゆらゆら…、ゆさゆさ…、体を揺すって…、
 素敵なドレスを…落として下さい…。」
 すると、この前よりずっと華やかで、ずっときらびやかなドレスが落ちてきました。
なにもかも金と宝石でできていました。
金の飾り縫いのある靴下と金の靴もありました。
灰かぶりがそのドレスを着ると、真昼の太陽のようにきらきら輝きました。
玄関の前には6頭の白馬を引く馬車が止まっていました。
馬達は丈の高い白い羽飾りを頭につけていました。
そして召使い達は赤と金の服を着ていました。
「では、行きましょう。」
 灰かぶりがお城に着くと、王子がもう階段で待っていて、
灰かぶりを大広間に連れて行きました。
昨日、人々はこの姫の美しさに驚きましたが、今日はもっと驚きました。
 姉さん達は大広間の隅に立って、嫉妬のあまり青ざめていました。
もし姉さん達が、その姫が家で灰まみれになっている灰かぶりだと知っていたなら、
姉さん達は妬ましさのあまり死んでいたでしょう。

 ところが王子は、この見知らぬ姫が誰なのか、
どこから来て、どこへ帰るのか、知りたかったので、
家来達を通りに立たせ、よく見張っているように命じました。
 そして灰かぶりがあまり速く走り去ることができないように、
階段にタールを塗らせました。
 灰かぶりは王子と踊りに踊って、
楽しさのあまり真夜中までに帰らなければならいことを忘れていました。
 突然、踊りの真っ最中に灰かぶりは鐘の音に気付きました。
そして鳩達の忠告を思い出し、驚いて急いで扉から出て、一生懸命階段を駆け下りました。
ところが、階段にはタールが塗ってあったため、金の靴の片方がくっついてしまいました。
けれども恐ろしさのあまり灰かぶりは、その靴を持って行こうとは思いませんでした。
灰かぶりが階段の最後の段まで来た時、鐘が12回鳴り終えました。
すると馬車も馬も消え、灰かぶりは自分の灰まみれの服を着て、暗い通りに立っていました。
 王子は灰かぶりの後を急いで追いました。
階段のところで金の靴を見つけ、はがして拾い上げました。
けれども王子が下まで来ると、なにもかも消えてなくなっていました。
見張りに立っていた家来達も、戻ってくると、何も見なかった、と言いました。

 灰かぶりは、それ以上ひどいことにならずにすんで良かった、と思いました。
そして家に帰ると、自分のほの暗い小さな石油ランプに火をつけ、
煙突の中に吊るし、灰の中の横になりました。
まもなく、2人の姉さん達も帰ってきて、
「灰かぶり、起きて明かりを持ってくるにゃも!」
と、大きな声で言いました。
灰かぶりはあくびをし、まるで起きたばかりのようなふりをしました。
けれども明かりを持っていくと、継姉1が話しているのが聞こえました。
「あのいまいましいお姫様は、誰だか分かったもんじゃないにゃも。
 くたばっちまえばいいにゃも。王子様は、あのお姫様としか踊らなかったにゃも。
 そしてお姫様がいなくなると、王子はもうその場にいる気がなくなって、
 舞踏会もおしまいになってしまったにゃも。」
「まるで、ろうそくがみんな、一度に吹き消されたようだったにゃも。」
と、継姉2が言いました。
 灰かぶりは、その見知らぬ姫が誰なのか知っていましたが、一言も言いませんでした。




灰かぶられるもの -5-


 あれこれと部下達が探しますが、手がかりは一向に掴めません。
王子は残された靴を手で玩びながら見ます。
「この靴が花嫁探しの手助けをしてくれるだろう。」
 そう王子が呟くと、傍らに立っていた人物が答えました。
「そして、廃棄物の処理も、ですわね。」

 王子は、この金の靴の合う者を妻にする、というおふれを出しました。
けれども誰が履いてもその靴はあまりに小さすぎました。
「誰もあわないというのは、不思議ではないか?」
 それは言わないで下さい。お話の「お約束」ですから。

 とうとう2人の姉さん達にも靴を試す順番がやってきました。
2人は喜びました。
なぜなら2人は小さな美しい足をしていた(自分達の激しい思い込みです)ので、
「王子様がやってきたら、きっとうまくいくにゃも。」
と思っていたのです。
「お聞きなさいな。」
 継母がこっそり言いました。
「ここにナイフがありますわ。
 もし靴がどうしてもきつかったら、足を少し切り落とせばいいですわ。
 少しは痛いでしょうけど、そんなこと構いませんわ。じきに良りますわ。
 そうすれば、あなた達どちらかが女王様になりますわ。」
 継母の言葉に2人の姉さん達は頷きます。
ですから、継母が、にやり、と笑ったのに気付きませんでした。
 そこで継姉1が自分の部屋へ行き、試しに靴を履いてみました。
かかとはおろか、つま先さえ入りません。
「当たり前であろう。」
 まったくです。
 そこで姉さんはナイフを取り、足を削ぎ落とし、無理やり足を靴の中に押し込みました。
そうやって継姉1は王子の前に出ました。
 継姉1の足が靴に納まっているのを見ると、王子は指をぱちん、と鳴らしました。
 すると、鳩達が何処からともなくやって来て、言いました。
「ふざけんな!靴に血がたまってるだろうが!靴が小さすぎだ!」
「「本当の花嫁はまだ家の中です、兄者様!」」」
 王子は頷き、指で首を掻っ切る仕草をします。
それに呼応して、鳩達が継姉1を切り刻みます。
「にゃも〜〜〜!」
 王子は偽の花嫁を土にかえしました。

 継母は継姉2に言いました。
「あなたが靴を試してごらんなさい。
 もし小さすぎるようでしたら、爪先の方を切った方がよろしいですわ。」
 そこで継姉2は靴を持って自分の部屋へ行きました。
それを見送る継母の口が愉快そうに歪んでいることも知らずに。
足が大きすぎると、継姉2は歯を食いしばって爪先を大きく切り取り、
大急ぎで足を靴に押し込みました。
「執念だな。」
 怖いですね。
 そうやって継姉2が進み出ると、王子は再び指をぱちん、とならしました。
すると、再び鳩達がどこからともなくなってきて、言いました。
「いいかげんにしろ!靴に血がたまってるだろうが!靴が小さすぎるんだよ!」
「「本当の花嫁はまだ家の中です、兄者様!」」
 王子は頷くと、再び首をかっきる仕草をしました。
鳩達は継姉2を容赦なく切り刻みます。
「にゃ、にゃも〜〜〜〜〜!」

 王子は継姉2も土にかえすと、継母のところへ行き、言いました。
「さて、カルラ。廃棄物の処理は完了したぞ。」
「ご苦労様ですわ。見事な手際、惚れ惚れするほどでしたわ。」
 継母は満足そうな表情をします。
そう、継母は最初から継姉2人を消すつもりだったのです。
王子様ともあろうお方を欺くのは、死罪に値します。
それで、継姉2人に足を切り落とさせてまで、靴を履かせたのです。
「役とはいえ、あの醜いものの母親役はうんざりでしたから、胸がすっとしましたわ。
 それにしても、入りもしない靴を懸命に履こうとするのは愉快でしたわね。
 さて、あるじ様。あるじ様の花嫁はこの中ですわ。
 さあ、灰かぶり、出てきてらっしゃい。」
 継母は灰かぶりを呼びました。
灰かぶりは、王子が来ていると聞くと、大急ぎで顔と手をきれいにさっぱりと洗いました。
灰かぶりが居間に入り、お辞儀をすると、王子は灰かぶりに金の靴を渡して言いました。
「さあ、灰かぶり。これを返そう。これは君の靴だろう?」
 王子の言葉に、灰かぶりは驚きました。
「あの…、どうして…ユズハだと…?」
「灰かぶり。なぜ、継母が夜、いなかったと思っているのかな?」
「え…?」
「カルラは、私の部下だ。そのカルラが報告してくれたんだよ。
 私のお気に入りになりそうな子がいると。本当は私は君のことを知っていたんだ。
 さあ、試してみるといい。この靴が合えば、君は私の妻になる。」
 王子は優しい笑顔で灰かぶりに言いました。
そこで、灰かぶりは左足の重い靴を脱ぎ、金の靴の上に左足をのせ、
ほんの少し押し込みました。
すると靴は、灰かぶりの足にぴったりと合いました。
 そして灰かぶりが体を起こすと、王子は灰かぶりの顔を見つめて言いました。
「これが本当の花嫁です。」
 継母は、満足そうな灰かぶりと王子を見ながら笑顔で頷きました。
王子は灰かぶりと継母を連れて行き、馬車に乗せました。
そして、馬車が門を通るとき、鳩達は言いました。
「見ろ、お前達。靴に血がたまっていない。靴が小さすぎない。
 本当の花嫁を、兄者が連れて帰る!ユズハ…良かったな…。」



と、いうわけで今日はここまで。
続きは次回の講釈で〜。


♪おれは自由に〜生きるそんご〜くうだよ 気楽なもんだよ〜…♪











あとがきの類似品


この「いばら姫られるもの」は、前書きにもありましたように、
「パロられるもの」の第1段「シンデレラれるもの」の別バージョンのお話です。
今回、投稿用ということで特別編として書き上げました。

 他にも特別編は2つあり、
2つとも、パロられるもの7 「眠れる森の美姫られるもの」の別バージョンである、

  パロられるもの7.71 「いばら姫られるもの」
と、
  パロられるもの7.72 「太陽と月とターリアられるもの」があります。



パロられるもの7.71 「いばら姫られるもの」は夢渡さんと天舞夜月さんの「夢見ヶ丘公園」
アドレス: 
http://www5d.biglobe.ne.jp/%7Eyumeoka/
に、

パロられるもの7.72 「太陽と月とターリアられるもの」は、雪上舞う猫さんのHP
アドレス: 
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/6037/

にそれぞれ投稿してあります。

よろしければ、そちらの方もご覧下さい。


では、この辺で。





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