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夢幻夢想こと、むぅちんとげんちゃんです。
(幻夢です。)

とうとう初めてしまいました(無謀だな…)「パロられるもの」の長編である、
「大長編パロられるもの」です。

今回の講釈は「西遊記」のパロディ、
「西遊記られるもの」の第1段をお届けします。
(いつまで続くのやら…。)
今回は孫悟空が誕生してから、五行山に封じられるまでの話なのですが、
原作の内容量が多いため、ギャグをほとんど入れられませんでした。
(入れるともっと長くなるなるからな…。)
そのため、今回はあまり笑えません。ほとんど西遊記のままです。
(それでもよいという方だけお読み下さい。)
そして、スオンカスのネタを下さったKAGさんへ感謝を。
(本当にありがとうございました。)

では、どうぞ。















大長編パロられるもの 西遊記られるもの1





西遊記られるもの

配役
   孫悟空 … カルラ
   玉皇上帝 … クーヤ
   須菩提祖師(すぼだいそし) … ワーベ
   二郎真君(じろうしんくん) … エルルゥ
   釈迦牟尼如来 … スオンカス
   エキストラ … その他の方々
   ナレーション … サクヤ




西遊記られるもの-1-


 天と地がいつ、どうして作られたのか誰も知りません。
ですが、1日が24時間に分かれ、草木も眠る丑満時から、やがて鶏が鳴き、太陽が昇り、
明るい日中が来るように、天地にも混沌とした闇の時期があったに違いありません。
ただ、あたし達の1日で2時間にあたる部分が、天地の場合には
ちょうど5400年の歳月にあたるので、天地の歴史が午前4時になるまでに
およそ1万800年もの歳月を経過しなければなりませんでした。

 この物語はそうした天地の歴史の、いわば午前6時頃の出来事で、
その頃、東勝神洲の海のそとに傲来国という国がありました。
この国は周囲を海に囲まれていましたが、
大洋に面した側の海の中に見上げるばかりの雄大な山が聳え立っています。
 そのどっしりとした姿は麓を洗ぅ荒波をグッと押えつけるだけの貫禄があり、
苔むした崖や奇妙な形をした岩石が連なったところどころには、
目もさめるような鮮やかな色どりの草や花が、四季を通じて絶えたことはありませんでした。
まさに山の中の王者とも称すべき天下の絶景で、これが名にし負う、かの花果山なのです。

 この花果山の頂上に高さ三丈六尺五寸、周囲二丈四尺に及ぶ天下の奇石が1つ、
あたかも天を指さすように直立していました。
 何しろ遮るものとてない山の頂に、天地開闢以来さらされて来たので、
長い年月の間に遂に石の中に細胞を生じ、
或る日、石に亀裂が起こると、中から現われたのは1匹の猿でした。
「あふ〜、あんな狭いところにいると退屈でしたわ。」
 天然自然の大地の子であるその石猿は女性としてのふくよかさはあるものの、
余分な肉のないしなやかな身体をしていました。
 この石猿は生まれ落ちた途端から、
自分は他の動物達のように母胎から出て来たのではないという意識を持っていました。
 誰に教えられたわけでもないのに、この石猿が母胎を否定するところを見ると、
生まれながらによほどハッタリが強いのでしょう。
 母胎の意識がないため、肉親という意識もなく、ましてや仲間の意識もなく、
這うことを覚え、走ることを覚えてからも、相変らずたった1匹、
岩蔭に坐り込んで、天のどこやらを睨み続けていました。

 その眼付の鋭さはちょうど2本の放射線のように無限の虚空まで届きました。
「む?何事だ?」
 天を支配する玉皇上帝は何事かと驚き、早速、千里眼と順風耳の二将軍に調査を命じ…。
「構わぬ。サクヤが報せてくれればよい。」
 え?で、ですが、クーヤ様、ここは千里眼と順風耳の2人の将軍が…
「そんな面倒なことはしなくともよい。サクヤに頼むとしよう。」
 は、はい。判りました。
えっと、光は傲来国の花果山のあたりから発しています。
仔細に注意して見ると、何とそれは石猿の2つの眼から流れ出ているのでした。
「あら?」
 この時、石猿が、ちらッ、と眼を動かしました。
すぐ近くに赤く熟れた山桃の実を見つけたからのようです。
やがて手をのばして、桃をもぎとり、それから、ガツガツと桃をかじりました。
すると、不思議なことに、今まで輝いていた猿の眼から急に輝きが消え失せました。
「別に驚くに足らぬことだ。腹がへれば血眼になるのは世の常だからな。」
 それはそうですけど、あれは怖いですよう、クーヤ様ぁ〜。




西遊記られるもの-2-


 一度、食べ物の味を覚えると、
石猿は、もはやじっとうずくまって天の一角ばかり睨んでいるわけには行かなくなりました。
「酒菜酒菜酒菜〜♪」
 食べ物を求めて、枝から枝、谷から谷へと渡り歩くことになりました。
 山の中には既に猿が群をなして棲息していました。
彼らは人間のように戸籍謄本を要求したり、
名門の出であるかどうかを問題にしたりしないので、
石の猿が紛れ込んで来ても異端者扱いにするようなことはありませんでした。

 或る夏の暑い日に、石猿は群猿の中に混じって松の木陰で遊んでいました。
やがて遊びにあきると、猿達は水を浴びるために谷間へ下りて行きました。
そこにはよく澄んだ谷川がしぶきを立てて流れています。
猿達はどこから流れるのかを確かめるため流れに沿って山をさかのぼります。
 やがて轟々と耳を覆うような響きが聞こえ、
眼前に巨大な滝が、山の遥か上から白い虹のように、
また雪が乱れとぶように、流れ落ちて来る様を見ます。
「凄い水だ!」
「素晴しい滝です。デリホウライ様。」
 口々に感嘆の声を発しているうちに、誰の口からともなく、
「この滝の中をくぐって、中がどうなっているか見てくる勇気のある者はいないか?
いれば、その者を我々の王としよう。」
「そうですな。その者こそは我々の王です。我々の世界では勇気が唯一絶対の掟ですから。」
 という叫び声が高くなってきました。
 しかし、この凄まじい水の勢いと鼓膜の破れるような激しい音を前にして、
誰一人として名乗り出る者はいませんでした。
「では、私が行きますわ。」
 見ると、それは今まで片隅にいた石猿でした。
「あ、姉上様。それは危険です。」
「そうですとも、カルラゥアツゥレイ様。デリホウライ様の言う通りです。」
「デリ、カトゥマウ。今の私は姉でもなければカルラゥアツゥレイでもありませんわよ。
 ただの石猿ですわ。」
 石猿はそう言うと跳躍の姿勢をとり、思慮するよりも先に瀑布の中へおどり込みました。
「…?変ですわね。激しい水の奔流を予期していたのですけど…。」
 そこには渦巻く波はなくて、そっと眼をあけると、すぐ前に橋が一本かけ渡されています。
橋は鉄板で出来ていて、渓の水はその下の岩にあたって逆流して流れ落ちていました。
 橋の上に立って見ると。向こうは人家らしく、庭には竹や梅や松が植えられ、
石の椅子や寝台が奥の方に覗いていました。
 左見右見しながら橋を渡ると、そこに石の碑が立っていて、
「花果山福地、水簾洞洞天」
と大書してありました。

 石猿はみんなの元に戻ると、水簾洞のことを話しました。
天然自然のとても素晴しい住居で、夜露に濡れて暮らすよりずっと快適でした。
広さは広いし、優に幾千百の老幼を収容するに足る広さです。
 猿達は大喜びで、安住の地に住むようになり、石猿に群猿は頭を伏せると、口々に、
「大王万歳!」
と唱えました。
 この日以来、石猿は帝位に登り、自ら号して美猴王(びこうおう)と称しました。
彼は配下の猿どもをその能力や年齢に応じてそれぞれ文武百官に任じ、位階勲等を与え、
朝は花果山に遊び、夕は水廉洞に帰って、鳥や獣を相手とせず、
独り、王者の歓楽にふけるようになりました。
「酒菜酒菜酒菜〜♪」
 最初、美猴王(びこうおう)は、帝王ほど素晴らしい職業はないと思い、
自分のこの地位に有頂天になっていました。
 ですから、自分は何とおめでたい者だろうかと気づくまでには、
およそ二、三百年もの歳月を経過しなければなりませんでした。




西遊記られるもの-3-


 時が経つにつれ、美猴王(びこうおう)は、
年とともに老いて死んで、閻魔の前に引き立てられて行くのが嫌になってきました。
そのことを告げると、群臣の内の1匹であるカトゥマウがこう言います。
「カルラゥアツゥレイ様が生死に気づかれたのは、
 悟りを開かれた何よりの証拠と承わりました。
 このカトゥマウが聞くところによりますと、
 この世の中で、閻魔の支配を受けないものが三種類あるそうでございます。
 それは仏と仙人と神の三者です。
 彼らは万物輪廻の圏外に身を避けて、
 生死興亡と無関係に永遠の長寿を享楽していると申します。」
「その者達はどこに住んでいますの?」
「人間の世の中の、古洞や仙山と呼ばれるところに住んでいるそうでございます」
「わかりましたわ。 私は明日にも早速この山を下りることにしますわ。
 たとえ世界の涯まで行こうとも、必ず彼らを尋ねあてて、
 不老長生の術を学びとり、そして閻魔大王と対等のつきあいが出来る仙人になりますわ。」
 本当に、この一言はタダの猿の口から出たものではありません。
身のほどを知らぬこの面魂こそは、やがて斉天大聖と仰がれる、
生死を超越した不滅の存在たらしめる、そもそもの原動力なのです。
 一旦決心をすると、すぐにも実行に移さずにはいられないのが、
このセッカチ猿の気性でありました。
 翌日になると、猿達は旅に出る彼らの王のために盛大な酒宴を開きました。
これが俗世の最後とばかりに美猴王(びこうおう)は痛飲して日の暮れるのを忘れました。

 さて、そのまた次の日、群臣に送られて海岸へ出た美猴王(びこうおう)は
松の枯木を集めて作った筏に飛び乗り、竹竿に満身の力をこめて筏を動かしました。
筏は砂浜を離れ、涯しない大海に向って滑り出して行くのでした。
 南贍部洲の境界へ入って行き、ゆらりゆらりと肩を動かして、村から町へ、
町から都市へと旅を続けて行くうちに、知らず知らず人間の言葉や礼儀作法を覚えました。
 数年流浪した挙げ句、
西牛貨州(さいごけしゅう)霊台方寸山斜月三星洞の
須菩提祖師(すぼだいそし)の噂を聞きつけ、その門戸を叩き、弟子入りを果たします。
そして「孫悟空」の名前を貰ったのでした。
その由来ですが、猿は「胡孫(どちらにも、けもの偏がつきます)」とも言いまして、
須菩提祖師が「孫」の、けもの偏をとって「孫」とすればいい、ということで決まりました。
名前の「悟空」ですが、修道者らしい良い名前、ということで須菩提祖師がつけました。

「では、今日から私は孫悟空と名乗らせていただきますわ。皆さん、どうぞ宜しく」
 孫悟空は愛想のよい会釈をして見せたのでした。

「サクヤ。皆さんとは誰のことだ?」
 これを見ている皆さんですよ、クーヤ様。




西遊記られるもの-4-


 須菩提祖師には30人あまりの弟子がありました。
去る者は追わず、来る者は拒まず、というのが老師の信条らしく、
孫悟空の眼から見ると、
「いかにもボンクラで気の利かない兄弟子達ばかりですわ。」
 ということでした。
 7年あまりは他の弟子とともに講義等聞いていたものの、
辛抱しきれなくなり(?)、悟空はストレートに直談判し、不老長生の術を授かります。
 それから3年の歳月が経った頃、七十二変化の修行が始まり、
苦心惨澹の末にどうやらそれが身につくようになりました。
 肋斗雲という一跳びで十万八千里を跳び越えることが出来る術も体得し
天地を逍遙して、悠々自在の生活を営むことが出来る身の上になりました。
 師匠からは
「術は人に見せびらかすようなものではない。」
 と固く言われていたのですが、悟空にそんな我慢が出来るはずもなく、
他の弟子の前で披露してしまいます。これが師匠の逆鱗に触れ、破門と相成ります。
 師匠である須菩提祖師は、悟空にこう言います。
「どんな目にあおうとお前の勝手だが、門弟だったことは絶対に言うな。」
 これに対して、悟空は、
「たとえ口が腐っても、お師匠さまの名前は口に出しません。
 人に聞かれたら、自分で習い覚えたのだと申しますわ。」
 と、誓って仙洞を後にしたのでした。
孫悟空は、心から尊敬する者に対しては絶対の信頼をもって仕える猿なのです。

 孫悟空は師匠から破門を宣告されましたが、
もともとそんなことでへこたれるようなしおらしい人物ではありませんでした。
天下を放浪すること10年、それにつづく仙術修行の10年、
併せて20年の歳月は決して無駄に流れ去った歳月ではありませんでした。
今では七十二変化を身につけた天下無双の大業師です。

 師匠の前を辞して洞門を出ると、孫悟空は身を構えて、
「えいッ。」
 と一声かけて、肋斗雲に飛び乗ります。
10年間見慣れた山々は一瞬にして視界から消え去り、
10年間かかって歩いてきた幾千万里の嶮しい道程はまばたく間に過ぎて行きます。
西洋大海、南贍部洲、東洋大海の上空を一挙に飛び越えて、
やがて眼下に現われてきたのは花果山水簾洞のほとりでした。




西遊記られるもの-5-


 故郷の水蓮洞に帰ると、悟空のサル王国は見るも無残な有様でした。
美猴王(びこうおう)が旅に出てから十数年は平和な日々が続いていましたが、
2年前のこと、突然、混世魔王と称する妖怪がどこからともなく現われて、
猿の王国へ挑戦して来たのです。
猿軍は全力をあげて死闘を試みたが、大敗に大敗を重ね、遂に洞を焼かれ、
無数の捕虜を出し、国全体が滅亡に瀕してしまったのです。
 早速悟空は王国を立て直します。
以前とは違い、神通力を思いのままに操る悟空は、周辺を支配します。

 或る日、孫悟空は混世魔王から奪い取った、
さっぱり使いものにならない刀の代わりが欲しくなりました。
水蓮洞の鉄橋の下の水は東海竜宮に通じていること、
東海竜王の所にはたくさんの宝物が眠っていることなどを家老のカトゥマウから聞き、
悟空は早速、東海の竜王のところへ赴き、東海竜王は悟空を自分の宮殿に招き入れます。
 そこで悟空は海底に眠っていた、
禹王が治水工事に使ったという「重量一万三千五百斤」と刻んであり、
「如意金箍棒」と銘が打ってある伸縮自在の鉄の棒を手に入れました。
 また、東海竜王は悟空に言われるままに、
南海竜王、北海竜王、西海竜王の三人の弟達まで呼んで、
履、鎧、兜をそれぞれ一品ずつ、甲冑一式を揃えて差し出します。
 悟空はそれらの品で完全武装をして、手に如意棒を持ちあげると、
「どうもお騒がせ致しましたわ。」
 と一言、居並ぶ群衆を尻眼に孫悟空は悠々と宮殿からひきあげて行きました。

 諸洞の主が猿王の大成功を祝して、次から次へとお祝いの品を届けてくる行列また行列。
むかしは諸物資豊富だったから、カクテル・パーティなどとケチなことはやりません。
山海の珍味が食卓を埋め、椰子のジュースに葡萄の美酒。
飲めよ、歌えよ、と夜を日につぐ大宴会となりました。

 こうして軍国の基礎はますます固く、強兵尚武の風はいよいよ盛んになり、
大臣も今や元帥大将の兼職、すべて兵隊の位になおさねば、
世間の評価ができなくなってしまいました。
 そして、当の猿王はすっかり安心して、
毎日、雲に乗ったり、霧に乗ったり、世界をまたにもっばら外交攻勢をします。
他国のボスたちである遠くの化け物とも親交を深め、
牛魔王、蛟魔王、鵬魔王、獅駝王、彌(や)猴王、禺戒(ぐうかい)王といった、
6人の妖怪と義兄弟の契りを交わします。
なお、彌(や)と禺戒(ぐうかい)には、やっぱり全てけもの偏がつきます。
 今や万里の外も、さながらわが家の庭園で、おじぎをする間に三千里、
腰をひねる間に、八百里というスピード時代になりました。

 また、地獄からの迎えが来たときには、地獄まで行ってひと暴れし、
挙げ句に台帳から、自分はもとより、めぼしいサルの名前をみんな消してしまいました。

 孫悟空のこの暴挙によって、
猿の中には年をとってもなかなか死なない者が現われるようになりました。
猿の間に敬老思想がはびこるようになったのはこの時に始まります。
それ以前は、年齢に関係なくもっぱら実力が物をいう世界であったそうです。




西遊記られるもの-6-


 さて、ユスられて泣き寝入りをするのは人間世界の話で、天には天の道があります。
東海竜王は不平やるかたなく、遂に孫悟空を告訴する決意をし、
告訴状を起草すると、それを持って、玉皇上帝の起居する金闕雲宮へ出かけて行きます。
 彼はまず侍従長の邱弘済真人に面会を求め、これまでの経過を話し、
告訴状を手渡し、侍従長がそれを宮殿にとりつぎます。

 玉帝が御みずから告訴状を開いて見ると、それには孫悟空が東洋大海へ下りて
ユスリを働いた一部始終が事細かにしたためられていました。
如意棒を強要し、鎧兜を強奪し、挙句の果てに
「どうもお騒がせ致しましたわ。」
と言ったと書いてあるのを見て、玉帝は思わず失笑しました。
「面白いやつだの。」
 竜王が帰ると、今度は入れ違いに今度は葛仙翁天師が御殿に進み出て、
冥界を司る地蔵王菩薩から訴えがあることを玉皇上帝に報せました。
地蔵菩薩の告訴状を開いて見ると、またしても孫悟空の暴状でした。
「ますます興味深い。会ってみたいものだ。」

 こうして、孫悟空は天界へと昇りました。
天での悟空の仕事、それは弼馬温(ひつばおん)という天馬の世話係でした。
忙しい毎日が過ぎていきました。
 2週間ばかり経った頃のことです。
悟空はお酒を飲んでくつろいでいました。
「弼馬温という職は、下っ端中の下っ端ですけど、
 お酒が美味しいですからまあいいですわ。」
 樽で何杯目か判らないお酒を飲んでいると、ふと気になることがありました。
「そういえば…そろそろ仕込んでおいたお酒がいい感じになっている頃ですわね。」
 悟空は仕事もほっぽりだして、さっさと下界に戻りました。
すると、下界では既に十数年も経っていて、いい感じに熟成が進んでおり、
孫悟空は満足するのでした。
「これでしたら、しばらく弼馬温をするのも悪くはなかったですわね。」

 その後、孫悟空は「天に斉(ひと)しい大聖人」という意味で、
「斉天大聖」と名乗ることになります。

 慌てたのは天界の方です。
仕方ないのでさらなる譲歩に出て、
本人が名乗る「斉天大聖」の称号を正式に許可し、優雅な天の御殿をあてがいます。
悟空は大いばりで天界に戻ります。
 天界は、さらに暇そうにしている悟空を見ると、
王母娘娘(おうぼにゃんにゃん:西王母)の蟠桃園(ばんとうえん)を管理する役目を
言い渡しました。
こうして悟空は快適天界ライフを送り、我が身の怪しさも省みず、
天の神々仙人と友達づきあいするようになりました。
 悟空は庭をちゃんと管理するよう申し渡されますが、
桃を見て回っているウチに、どうしても食べたくなってしまい、
お付きをだまくらかすとこっそり木に登ります。
 1個だけのつもりでしたが食べ出したら、その比類ない味にどうにも止められず、
数日のウチにあらかた全部食べてしまったのでした。




西遊記られるもの-7-


 ある時、王母娘娘がその桃でパーティをすることと相成り、
仙女達が桃狩りにやってきますが、彼女らに出くわした悟空は「やばいですわ」と思い、
定身法でとりあえず庭から逃げますが、その途中出会った仙人に、
瑤池(ようち:王母娘娘の本拠地)でのパーティ会場のことを聞きます。
そもそも悟空は、身分違いもそっちのけで
自分が招待されていないことが面白くなかったので、
いっちょ荒らしてやりましょう、とばかり会場に行くと、
まだお給仕や召使いが準備していました。
 悟空は催眠虫を使って全員を眠らせると、
ずらっと並べられた食事やらお酒を洗いざらい食べてしまいました。

 その後、悟空は、千鳥足で間違って
兜率天宮(とそつてんきゅう)の太上老君の御殿にやって来てしまいます。
なお、太上老君とは、道教の始祖、老子の上仙した姿です。
 この御殿も、老君以下講義中で庭には誰もいません。
竈を覗くと、仙丹が転がっています。
それも全て頂いてしまうと、
俄に正気に戻った悟空は、三十六計逃げるにしかずと遁走します。

さて、悟空が逃げたあとの天界は大騒ぎです。
王母娘娘の仙桃は何千年の長寿を約束される代物、
さらに太上老君の九転金丹に至っては、不老不死になるというものでした。
さすがの天帝もこの泥棒ぶりには激怒し、
李天王、那咤(なたく)太子を始めとする天軍十万を使わすことを決定、
ここに天界vs悟空の壮絶なバトルが幕を開けたのでした。




西遊記られるもの-8-


 天軍十万は、悟空のサル王国に突入します。
悟空は迎え撃ち、九曜星、四天王、 二十八宿、更には李天王、
那咤(なたく)太子をも相手に一歩もひけをとりません。
しかし悟空配下の軍勢は、天軍を前にそういう訳にいかず、
サル以外の獣は捕らえられてしまいます。

 一方南海の観音菩薩は、王母娘娘パーティの為に瑤池へ来ていましたが、
会場で悟空騒動を聞いて天帝のもとへ赴き、詳細を知ると、
第一弟子である恵岸行者(木叉太子)を様子見にやらせます。
 太子は父の李天王に、観音菩薩の命令で来た旨を伝えると、悟空と一戦交えますが、
じきに太子の腕がしびれる始末。
自軍に逃げ帰ると、あまりの悟空の強さに感動を覚えるほどでした。

 木叉太子は天界に戻ると、観音菩薩や天帝に逐一報告します。
それを聞いて観音菩薩は、悟空討伐に、
名高い武人の顕聖二郎真君(じろうしんくん)を推挙します。
 なお、二郎真君は玉帝の甥にして、四海最強の武人です。
眉目秀麗にして、振舞いは雅やか。文句の付けようもない、『西遊記』最高の美男子です。
 三尖刀を取っては竜をも下し、術を振るえば虎も伏す、
その力を称えて人は呼びます、顕聖二郎真君と!
 灌江口に梅山六兄弟という義兄弟達と、ペットである哮天犬と住んでいます。
ちなみに、悟空と互角に渡り合った唯一の天将でもあります。
「判りました。わたし達で、カルラさん、いえ、孫悟空さんを止めて見せます。
 さあ、アルルゥ、ムックル、ガチャタラ、ベナウィさん、クロウさん、オボロさん、
 ドリィさん、グラァさん。行きましょう。」
 二郎真君は天帝の懇願を伺うと、すぐさま義兄弟の梅山六兄弟とともに花果山へ赴きました。

 戦況が気になった観音菩薩は、太上老君や王母娘娘、天帝を誘って下界へ降りていきます。
「あら、エルルゥの二郎真君、とっても凛々しくてよ…ッ!」
「カルラさんこそ、孫悟空がよく似合ってますよ…ッ!」
 二郎真君と六兄弟が、悟空を取り囲んで大乱闘を繰り広げているのを見て、
太上老君が、助太刀とばかりに金鋼琢を投げました。
輪っか状のそれはくるくる回りながら悟空の頭に当たり、
思わず悟空がよろめいたところ、二郎真君の犬(ムックル)が悟空にかぶりつき、
そこを捕らえて二郎真君は悟空の鎖骨に刀を指したので、
悟空の神通力は押さえられてしまいました。
「やりますわね、エルルゥ。」
「カルラさんこそ、いい戦いでしたよ。」

「何やら漢の世界という感じだの…。」
 本当は漢ではないと思いますが、確かにそうですね…。




西遊記られるもの-9-


 こうして引っ捕らえられた悟空は、すぐさま処刑台に連れて行かれますが、
仙桃、仙丹を食べた悟空の強靱な体には、傷ひとつ付けることが出来ません。
そこで、太上老君の八卦炉に悟空を入れて燻すことにしました。
 この炉はその名も示す通り八つの方位よりできています。
その中の巽という方位は風にあたるのだから、風が吹けば火は追われる理屈だと思って、
悟空はその方向に身をよせますと、火は燃えて来ませんが、
そのかわり煙が目の中に入って来て、とても目を開けてはいられません。
ちょっとでも目をあけると、たちまち涙がにじみ出てくるのです。
「燻製の気分ですわね…。自分で燻製になっても酒菜にはなりませんわね…。」

「まだ余裕ではないか…。」
 そうですね…。

 四十九日後、太上老君が炉を開けてみようとした途端、八卦炉はがらがらと崩れ、
中から怒り心頭に達すといった有様の悟空が、
如意棒をぶんぶん振り回しながら飛び出したのです。
 さあ、こうなったら上も下もあるものか。天も地もあるものか。
「自信がある者はどこからでも来なさい。勇気のある者はかかって来なさい。」
 孫悟空は文字通り鬼に金棒、天界を縦横無尽に暴れ出しました。
その凶暴ぷりに九曜星はあわてて戸をしめてしまい、
四天王はどこへ逃げたのか影も形も見えません。
 あまりの騒々しさ、恐ろしさに、諸神は皆逃げ隠れるばかり。
天帝のおわす霊霄殿の前で、王霊官、さらには雷公36人が一斉に取りかかりますが、
悟空は三面六臂に変化すると、1本の如意棒を3本にして回しながら飛び舞います。
誰も近寄ることすら出来ません。

 天帝は、とうとう西方の霊鷲山雷音寺の釈迦牟尼如来のところへ使者をやり、
妖猿を退治してほしいと要請します。
「フフ…。やっと私の出番…。カルラ…。やっと私のものになる…。」
 釈迦如来はどうも、カルラ、いえ、孫悟空フェチのようです。
 如来は直ちに駆けつけ、暴れる悟空の前に立ちはだかりました。
仙術、不老不死、ひと飛び十万八千里を自慢する悟空に、如来は言います。
「では私と賭けをしてみよう。
 もしお前がその肋斗雲とやらに乗って、
 私のこの右の掌からとび出すことができたら、あなたの勝ちにしよう。
 その場合には私から玉帝におすすめして西方へ遷都していただき、
 天位はお前に譲らせましょう。
 その代り、もしあなたが私の掌からぬけ出すことができなかったら、
 私のものになりなさい。」
 と個人の欲望丸出しで持ちかけます。
「よろしいですわ。ですけど、その代り約束は守るでしょうね。」
「大丈夫、紛束は守るさ。」
 笑いながら如来は右の手を開きます。
その大きさは蓮の葉ぐらいの大きさもあろうかというものでした。
孫悟空は如意棒をしまうと、ヒラリと飛び上がって如来の掌の上に乗ります。
その時、如来が恍惚とした表情をしたのですが、気にしないことにしましょう。
「用意はいいかしら?」
「ああ、いいとも…。私の手の上にカルラが…。ンフフフフフフフフフフ…。」
 と如来は答えました。
「では、行きますわよ。」
 声と共に如来の掌をとび出した悟空は、
肋斗雲に乗り光のような早さであっと思う間に影も形も見えなくなってしいました。
如来は悟空がまっしぐらにとんで行くのを
じっと眺めていましたが、別に妨害するでもなく、行くに任せています。
「フフ…カルラ。あなたは私の手の中にある…。」




西遊記られるもの-10-


 およそ何百万里ぐらい飛んだでしょうか。
悟空は、ふと、行く手に五本の大石柱が立っているのに気がつきました。
「ふうん。五本の大石柱ですわね。証拠を残しておきましょう。」
 孫悟空はそれを見て、微笑すると、髪の毛を1本抜きとってプッと息をかけながら、
「変りなさいな!」
 と叫ぶとたちまち1本の筆が現われました。
 それを手に握ると五本ある柱の真中の柱に、
そこへ「斉天大聖到此一游(ここにひとたびいたる)」と大書しました。
それから髪の毛をおさめると、
「あら、何だかこの柱の下が気になって仕方がありませんわ。」
 と、わざとらしく言って、急降下を始めました。
すると、今度は1本の柱が立っているのを見つけました。
「あら。今度は1本なんですのね。これ1本なら、証拠として持って帰れそうですわね。
 よし、記念に斬ってあげますわ。」
 カルラは、にやりと笑うと如意棒を巨大な刀に変化させ、振り下ろします。

  悲鳴


  惨劇



「あら。今のは何の悲鳴なのか、私にはさっぱり判りませんわ?」
 いかにもわざとらしく判らないという感じで、
孫悟空は鼻歌を歌いながら釈迦如来の所へ帰ることにしました。
もちろん、斬り取った柱には目もくれませんでした。

「確信犯だの…。」
 はい…。すごく痛そうです…。

 孫悟空は威勢よく戻って行くと、
如来は俯せになり、頭を地面につけたまま腰を高く上げ、両手は股間の辺りにやっていました。

 この後のことは詳しくは書きません。ただ、言える事は1つだけです。
スオンカス君、スオンカスちゃんになってしまいました。

「このままだとお話が進みませんわね。仕方がありませんわ。」
 如来を乗せた、ドップラー効果を残して赤いサイレンを鳴らしながら
信号ノンストップで走って行く赤十字マークの白い車をしみじみと見送ると、
孫悟空は西天門外まで行き、木、火、土、金、水をこねて、
5つの連山からなる五行山をつくり、自らの身体の上に乗せ、
 おん(口+奄)、嘛(まー)、に(口+尼)、叭(ぱど)、めー(口+迷)、吽(うん)
と書いた紙を山の頂上へ張り付けました。
 紙を貼り付けると、山はしっかりと大地に根を下ろし、
下敷きの悟空は漸く息ができて、手を動かすくらいのことしかできなくなってしまいました。
「さて、お酒と酒菜も用意しましたし、これからじっくりと500年待つことにしましょう。
 酒菜酒菜酒菜〜♪」

 本来なら、天の監視が付いて、獄中の悟空の食事は銅汁と鉄団子のみなのですが……。
「楽しんでいるようだの…。」

 と、ともあれ、こうして悟空の引き起こした一連の「天宮荒らし」騒動も収まり、
そして、500年の月日が流れるまで孫悟空はこのままなのでした。




と、いうわけで今日はここまで。
続きは次回の講釈で〜。


♪おれは自由に〜生きるそんご〜くうだよ 気楽なもんだよ〜…♪













あとがきの類似品

夢幻夢想です。
(幻夢です。)

今回は、ほとんど説明ばかりになってしまいました。
(下手にギャグを入れると余計に長くなるからな。)
これでも結構削ったんですけどね…。まあ、次回以降を楽しみにして下さい。
(西遊記の真骨頂は、三蔵一行の天竺への旅だからな。)
なので、次回からギャグが多くなると思います。
(ただ、今回は様子見の話なので、次回からの本編までに、また時間がかかると思います。)
つまり、まだ再開はしてません。今回の話は、いわば読みきりのようなものです。
(「西遊記られるもの2」からが真の本編だからな。)
と、いうことで、今回の話は、再開するまでのつなぎということで、ご容赦下さい。
(再開は、もう少し待って下さい。)

では、この辺で。夢幻夢想でした。
(この辺で。幻夢でした。)





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